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[因藤壽と北大]002 – 電子科学研究所へ行こう!~北キャンパス編~

高校卒業後、戦前~戦後にかけて研究所技手として北大で勤務した稚内出身の画家・因藤壽(いんどう・ひさし、1925-2009)。
因藤が北大で過ごした時間をヒントに現在の北大を探検していくのが、ミニシリーズ[因藤壽と北大]です。

***

 

前回の記事では因藤が北大で過ごした空間を再訪すべく、かつて因藤が勤務した超短波研究所/応用電気研究所の跡地に立つ、北大電子科学研究所(旧・応用電気研究所)の中央キャンパス総合研究棟を訪れました。
📄[因藤壽と北大]001 – 電子科学研究所へ行こう!~中央キャンパス総合研究棟2号館編~

 

電子科学研究所は、前身の超短波研究所および応用電気研究所時代から65年近く中央キャンパスに置かれていたのが、2003年の創成科学研究棟新築と2008年の総合研究棟5号館新築のタイミングで、北キャンパスに多くの機能を移すことになりました。*1

 

というわけで今回は、21世紀に新設された電子研の風景をチェック!
戦時中にその一端を担った因藤はおそらく目にすることのなかった、研究所の未来の姿を見に行きましょう。

 

***

 

 

看板の矢印がほぼすべて同じ方向を指していることに気づいて先行き不安になりつつも、
「電子科学研究所」の文字を発見!

少し歩くと……

 

 

出た!こちらが北キャンパスの電子科学研究所です。
写真中央からほんの少し左側にある街灯の裏の自動車と、建物のサイズを比べてみてください。
新しい電子研の堂々たるスケール感たるや。

 

 

中央キャンパスの電子研と同じく、向かいの道路に街路樹が並んでいます。

 

 

こちらはいくつかある玄関のうちの一つ。
標識に近づいてみると……

 

 

「電子科学研究所」の文字。
電気をさらりと受け流しそうな黒い石材ブロックの構成がクールです。

 

***

 

このあと、実際にこの建物の中に入れていただき、
前回の記事でご紹介した電子研広報担当の中野谷一(なかのたに・はじめ)先生の研究室にお邪魔しました。

2026年4月に広報担当になったばかりという先生ですが、
「研究所の歴史についての問い合わせはきっとくる、と聞いてはいたんですけどね。こんなにすぐに来るとは!」とはにかみつつもあたたかく迎えてくださり、
因藤の勤務時期に研究所があった位置や因藤のかつての研究について、見識豊かにお話ししてくださいました。
(★この時のお話の内容について、詳しくは📄[因藤壽と北大]001 – 電子科学研究所へ行こう!~中央キャンパス総合研究棟2号館編~ をチェック!)

 

その後、建物内に併設されている図書室にもご案内いただきました。
電子研の研究に関する本から歴史に関する本まで、コンパクトにまとめた小さなライブラリーです。

図書室では、因藤の名を含む人事録を収録した『応用電気研究所五十年史』(1994)や、
元職員として因藤が回顧録「超短波研究室~応用電気研究所 その戦中戦後の思い出から」を寄稿した『北海道大学応用電気研究所50年小史』(1992)などの資料を閲覧することができました。

 

特に印象的だったのが、1992年の研究所小史におさめられた因藤の寄稿文です。
因藤は寄稿文冒頭で、自らの科学者時代を戦争の影響から切り離せないものと明記しながら、
研究所小史に寄稿するモチベーションをこのように書いています。

〔…〕当時のそれ〔研究所が戦争の影響下にあったこと〕を明らかにする事は色々な形で口が濁され憚られている事があり、時にはそれが相互納得の、人の世の一つの智恵とみられる事もあろうが、その在りし事、生き来たりし事を、素直に、虚心に、そして厳しくも又慎しみと寛き心の中に、その在りの儘のものに相対し、其処に真実真理の何かを見、問う事、それこそ一つの人間の在るべき本道であり、それは又それぞれが携ってきた科学というものの根底の在り方であった筈である。その姿勢を忘れずペンをとりたい。*2
(下線筆者)

この箇所は、科学実践と人間性が固く結びついて培われた、因藤独自の倫理観がよくわかる一節といえるでしょう。

その後の具体的な記述からは、科学者およびアカデミアが戦争という規則に従って機能する戦時中の日常が垣間見えました。そこで書かれる因藤ら若い研究所員の日常は、戦争に規則づけられてはいながらも、現代の研究者にとってもなじみ深く感じる――いうなれば「地味」で「よくある」——研究生活です。
だからこそ、これが現代の若い研究者たちに読まれるときには、研究者の「日常」を形成するさまざまな社会的レイヤーの見えづらさにしみじみ気づかせてくれることでしょう。

 

***

 

因藤壽を手がかりに現代の北大を冒険していく本シリーズ。

今後も各所へ足を延ばし、アイディアを広げていこうと思っていますので、どうぞお楽しみに!

 


*1……「Since1992 電子科学研究所 Research Institute for Electronic Science」、北海道大学電子科学研究所ウェブサイトより https://www.es.hokudai.ac.jp/about/history/

*2……因藤壽「超短波研究室~応用電気研究所 その戦中戦後の思い出から」、『北海道大学応用電気研究所50年小史』、北海道大学電子科学研究所、1992、p. 63

 

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2026.08.20

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