バトンは、高瀬舞さん(触媒化学センター)から中坂佑太さん(工学研究院)に渡りました。
中坂さんの研究分野は、化学工学です。社会で実用化される製品の基礎研究をしています。研究の対象は、触媒や吸着剤として使われる「ゼオライト」という材料物質です。身近な製品だと、例えば粉せっけん。硬水だと泡立ちにくいのですが、ゼオライトが、水中のカルシウムなどを取り込んでナトリウムを出す、というイオン交換の働きをすることで、泡立ちをよくします。また、材料中に無数の穴があいているので、吸着作用があり、除湿機などにも利用されています。現在は、このゼオライトで膜を作り水とアルコールを分離する、という研究をしています。
(手にしているのは、ゼオライトの分子模型とビンに入ったゼオライト。白い粉末状のものが入っています。)
後ろの実験装置は、ハンドメイド。実験室の隅には工具もおかれています。既製の装置をあまり買わない理由は、「実際に組み立てることで、装置の中身をしっかり理解しながら実験ができて、改良したいときやトラブルが起こったときにすぐに対応できる」から。実は、修士2年までこういった装置には触れていなかったとか。でも「やらせてください」と頼み、積極的に装置の制作や実験に関わったそうです。その前向きな姿勢には、「親父の影響もあるかな。兼業農家の父は、機械工作が大好きで、自家用車からトラクターまで自分でメンテナンスしているんですよ」。子供のころからその姿を見てきたので、工作にはなんら抵抗は感じなかったそうです。
(実験室の学生さんたちと。n左から、平田さん(修士2年)、中坂さん、谷口さん(博士課程1年))
富山県出身で、北大に入学した当初は「4年で出ようと思っていた」のが、気づけは13年も経過していました。理由を尋ねると、「化学工学の面白さを教えてくれた、増田隆夫先生(教授)や多湖輝興先生(准教授)との出会いかな」。今は自分が教員となり、学生の指導にあたっています。
実験室にいた学生さんに“中坂先生”の印象を聞くと「優しくて、丁寧に教えてくれる先生」「親しみやすくて、何でも話せる先生」という答えが返ってきました。学生とラインでおしゃべりをしたり、自宅に招待して、宅飲みをしたりと、まるで“兄貴”のような存在です。
(5cmほどの白い筒(アルミナフィルター)に巻きつくように、ゼオライトの結晶が積み重なり、薄いゼオライト膜ができています(平田さん作)。同じ白色のため、写真では見えにくいですが、この量を作るのに約1週間かかるので、失敗した時のショックは大きいとのこと。)
最近研究が忙しくて帰宅が遅い日もあったため、息子から「いってらっしゃい、また来てね」と送り出されてすっかりヘコんでしまったという中坂さん。2015年札幌で開催されるZMPC国際シンポジウム(http://www.zmpc.org)に向けて、ますます忙しくなるそうですが、育児にも研究にも応援エールを送りたくなるイクメン先生でした。
次のバトンは、中坂さんと同期で、飲み仲間でもある、芳田嘉志さん(工学研究院 博士研究員)に渡ります。