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#110 希土類錯体で私たちの世界を照らす ~世界一の発光体を目指して~

蛍光灯、スマホのディスプレイ、太陽光発電など私たちの身の回りには『光』を使った技術があふれ、大きな注目を集めています。その中の一つが『希土類錯体(きどるいさくたい)』です。『希土類錯体』は赤色や緑色などの鮮やかな発光を示すことが知られており、世界中でさかんに研究されています。そして、私は「世界一光る」希土類錯体をつくることを目標に日々研究しています。

【熊谷まりな・総合化学院修士1年】

(ライトを当てると鮮やかに光りだす!)
希土類錯体って何?おいしいの?

希土類錯体とは、『希土類元素』と『有機分子』を組み合わせた分子のことです。『希土類元素』といわれても「何それ?」という人が多いと思うので、まずは「希土類元素とは何か」から紹介していきます。

希土類元素は、下図のオレンジ色で示した元素たちの総称です。聞きなれない人も多いかと思いますが、希(まれ)な土、つまり『レアアース』というとピンとくるのではないでしょうか?これらは他の元素とは違った特別な性質を持ち、ネオジウム(Nd)は磁石として使われたり、イットリウム(Y)は蛍光灯に使われたりしています。レアアースは人体や環境にとって安全で、『レア』の名前を持ちながらもその埋蔵量は金や銀などの貴金属よりも実は多いのです。

(希土類元素は周期表のはみ出し者)

レアアースの持つ性質の中で注目されているのがその鮮やかな『発光』で、それぞれの元素は決まった発光色を示します。このような特徴を持つ元素は他にほとんどなく、レアアースのすごいところといえます。そして、発光をさらに強くするために考えられたのが『希土類錯体』です。錯体は、金属(ここではレアアース)と有機分子を組み合わせた化合物のことです。希土類錯体の中でも、私はユウロピウム(Eu)を使った赤色に光る錯体を研究しています。

(希土類錯体を混ぜた光るプラスチック)
希土類錯体は完璧な発光体!といいたいところだけど…

実は、レアアースが『レア』と呼ばれる理由は掘ってきた岩石から一種類だけを取り出すのが難しいことにあります。レアアース同士は性質がとても似ているため、精製に手間とコストがかかってしまうのです。そのためにレアアースはやや高価で、これが希土類錯体の問題点となっています。

そこで、従来に比べて少ない量でより強く光る希土類錯体をつくることができればコストが削減でき、理想的な発光体ができるのではないかと私は考えました。そこから、「より強く光る、何なら世界一光る希土類錯体をつくろう!」と思ったのがこの研究を始めたきっかけです。

夢ナビ「レアアースの採掘、利用の3つの課題」)
もっと光る希土類錯体がつくりたい!--ヒントはそのメカニズムにあり

発光という現象は、物質が外部からエネルギーを受け取り(吸収)、それをまた外部へ放出する際に起こります。私が使っているユウロピウム(Eu)錯体を例として、希土類錯体におけるそのメカニズムを下の図に示します。希土類錯体ではエネルギーを吸収する役割を有機分子が、光を放出する役割をレアアースが担っています。そのため、強く光る希土類錯体をつくるには①有機分子の光を吸収する能力を大きくすること、②有機分子からレアアースへ効率的にエネルギーを移動させることが重要なのです。

(有機分子はエネルギーを集めるアンテナ)
じゃあ、実際にどんなことをやっているの?研究のやりがいは?

私は、光を吸収する能力の大きな有機分子とEuを組み合わせようと日々研究しています。より強く光りそうな組み合わせを考える→合成→実際にそれがどれくらい光るか測定→得られた結果の解析→…というサイクルを繰り返しながら新しい希土類錯体を設計していきます。

やりがいを感じるのは、やっぱり合成した錯体が光ってくれたときですね。私の研究は「発光」という、結果が目に見えてわかるものなので合成できたときの嬉しさがとても大きいです。もしかしたら自分のつくった錯体がスマホのディスプレイや部屋の照明に使われるかも…なんて考えたらわくわくしてきますよね!白衣を着てずっと実験室にこもってなんか地味…という「暗い」イメージを持たれがちな化学ですが、私たちの街を、そして世界の未来を照らしていく可能性を持っている「明るい」分野なのです。

(実験室の中には無限の可能性が広がっている!)

 

この記事は、熊谷まりなさん(総合化学院修士1年)が、大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅠ」の履修を通して制作した作品です。

熊谷まりなさんの所属研究室はこちら
総合化学院 総合化学専攻 物質化学コース 先端物質化学講座
先端材料化学研究室(長谷川靖哉教授)

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2018.08.06

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