大野栄三さん(北海道大学大学院教育学研究院教授)の専門は教育方法学。中高校生向けの理科・科学教育手法についての研究や、実験教材、読み物教材などの具体化に取り組んできました。
出身は京都の壬生。壬生寺の近くで育ち、子供の頃は新撰組隊士を慕うファンの道案内をしたこともあるそうです。博士課程を修了後、シャープ株式会社に入社。その後、大学教員に転身されたという経歴をお持ちです。1995年に北海道大学に着任し、早17年が経過。初めて迎えた冬にシャボン玉を吹く実験をしてみようと思いつき、凍って飛んでいく様子に感動したというエピソードを紹介してくれました。「真冬にシャボン玉を飛ばそうという発想が地元の方たちにはなかったようで、大変驚かれました。」当時を振り返って笑顔になる大野さんに、取材陣もつられて笑顔。その場の空気をふんわりと和らげてくれる先生です。
大野さんは北海道の理科教師たちと、教材や実験の開発に取り組むサークル「Wisdom96」にも携わってきました。栃内さんとの出会いもこのサークルだったそうです。大学の中だけにとどまらず地域のネットワークを大切にしながら、科学教育の進展のための活動を続けられてきたんですね。
左:こだわりの授業アイテム、カードを発見 右:肉食動物と草食動物の顔を正面から撮影したポスター。目の位置がどのようにちがうのかに着目しています(制作:Wisdom96)
ご自身の授業法についてもお聞きしてみました。大野さんはパワーポイントで作成した授業の内容を、カードサイズの厚紙に印刷し、毎回の授業に携帯しているそうです。学生からの質問はその場でカードにメモし、次回の授業に生かします。また、思いがけないパソコントラブルにも役立つとか。さらに研究室には、移動式の黒板が置かれていました。「実は黒板が好きなんです。ホワイトボードのマジックは大抵インク切れしているから、常に数本持ち歩いていましたが置き忘れたり不便(笑)。でも、黒板のチョークなら、かけらでも役に立ちますよね」。教育のプロはデジタルとアナログの両方の良さを使いこなしていました。
大野さんが目指す教育についてお聞きしてみました。
「子ども一人ひとりを大切にし、その子が持つ能力を最大限に生かしてあげること。これから人口減少社会を迎えるわけですから、一人ひとりの資質が大事なんです。」
最後はお友だちの紹介です。次回のランナーは理学研究院教授の鈴木久男さんです。クリッカーを使った面白い授業を展開されているそうです。お楽しみに!