南雅文さんからのバトンは、薬学研究院講師の南保明日香さんに渡りました。
子どものころから生物好きで、薬剤師だった両親の影響もあり理系の道に進みます。獣医や農学にも興味を持っていましたが、学部生の時に受けた薬学研究院の長澤滋治(現北大名誉教授)先生の免疫学の授業が面白くて、「分かっていないことを明らかにする研究者」にあこがれを抱き、薬学の研究者の道に進みます。直接の指導教官だった西村仁先生(現・摂南大学)の「基礎をしっかり、あとは自由に」というスタイルが肌に合っていたそうで、「それが現在の研究者としての基礎かな」。その後、博士課程で、1年間獣医学部で学んだのですが、結局薬学研究院に戻った南保さんを迎えてくれたのは、当時薬学研究院長だった長澤滋治先生。「母なる河にシャケが戻ってきた」と他の教員に説明し、広い心で再度受け入れてくれたそうです。
ウィスコンシン大学に5年間留学したことも、南保さんにとって大きな転機となりました。研究者の間で「素晴らしい人格者」として有名だったBill Sugden(ビル・サグデン)教授のもとで学びました。3年ほど、それまで研究していたEpstein-Barrウィルス、(Kissing Diseaseという唾液を介して感染する病気やがんを引き起こすウイルス)を研究していましたが、残り2年は、同大にもラボを持つ河岡義裕先生(東京大学医科学研究所)から新しい研究対象、「エボラウイルス」を勧められます。
「エボラウイルス」とは、エボラ出血熱を引き起こし、その致死率は90%にも達することがあるというものです。
(左)Kissing Diseaseのぬいぐるみ。(右)エボラウィルス(茶)と、それに攻撃されている羊
2つのウイルスの特徴を南保さんは、こんな風に表現してくれました。「Epstein-Barrウイルスは、感染してからじわじわと細胞をがん化させていくウイルスなので、”おとなしい” ウィルスで、エボラウイルスは、一気に増えて人を殺す”やんちゃな”ウイルスかな」。さらに扱うウィルスによって研究者の気質も異なるとか。両方を研究している南保さんは、”おとなしくてやんちゃな”顔を持っているのかもしれません。
2008年に現職に就いてからは、人材育成にも力を入れています。授業では、一方的な講義ではなく、プレゼンテーションやディスカッションを取り入れるなどの工夫をしています。学生の評判も良いそうで、平成23年度はエクセレントティーチャーズ、平成24年度には北大教育総長賞を受賞しました。
これからの学生に期待するのは、「自分の頭で考えて、独自の研究スタイルを見つけること」。これは、南保さん自身が、数々の恩師から学んできたことで、特に、サグデン教授のように「伸ばすところは伸ばす、必要なら方向修正をする」教育をしたいと考えています。
学内に発足した「若手研究者の会」では、昨年度幹事も務め、積極的にネットワークを広げています。いずれは「女性研究者のお手本になれるような存在になりたい」という夢を持ち、時には飲み会でコミュニケーションを図っています。ビールは苦手なので最初から日本酒を注文するという話に、かなりの酒豪とお見受けしました。どこから切りとっても魅力あふれる女性であることは間違いありません。
次のバトンは、若手研究者の会、現幹事でもある、梶田美穂子さん(遺伝子制御研究所助教)に渡ります。