山田邦雅さんからのバトンは、瀬名波栄潤さん(文学研究科准教授)に繋がりました。瀬名波さんは長年、大学院生に向けたティーチング・アシスタント(TA)研修の開発と実際の指導を担当していて、数年前から山田さんにも参加してもらっています。
さて、瀬名波さんの研究室は、北大の歴史的建造物の一つ、古河講堂にあります。100年以上の時を経て、深い色合いになった手すりの階段を上り研究室に入ると「非常に尊敬する人物」というキング牧師(Martin Luther King Jr.)と、ジミー・カーター氏(第39代アメリカ大統領)の写真と本が、レインボーカラーの布の上に、まるで「聖なる場所」のように置かれています。
瀬名波さんは、2002年にカーター氏がノーベル平和賞を受賞した際のサイン入りの記念本を大切にしています。 「アメリカで見つけた時の値札には$9999、そしてポケットにはわずか5ドル。交渉の末、5ドルで購入できましたが、後にあの値札は ”pricelessですよ” というメッセージだったことに気がつきました。そこで、本の適正価格30ドルで購入することにし、すぐに残りの代金を日本から現金書留で送ったんです。」律儀な日本人らしい行動ですね。
趣のある部屋4カ所にある上下スライド式の窓には秘密があります。「夏用の網戸をつけてもらおうとしたら、なんと4カ所ともすべてサイズが異なっていました。現在では考えにくいですよね。でも当時の建具のまま大切に使いたかったので4つとも特注品の網戸にしました。」
デスクに目を移すと、瀬名波さんのこだわりアイテム“赤鉛筆”が何本も立ててあります。 「赤鉛筆のほうが濃く書いたり薄く書いたりすることで、気持ちが伝わると思うんです。なんか人間的な感じがするでしょ。」笑いながら、赤字でいっぱいのテキストを見せてくれました。
もうひとつ授業に欠かせないのは、紙パックの麦茶、1L入り。「喉が痛くならないように、酸化防止剤が入っていないものを選んでいます。」赤鉛筆と麦茶。授業の様子が目に浮かんできますね。
最後に『I have a dream』ならぬ瀬名波さんから学生に向けた「メッセージ」を教えてもらいました。”Think Globally, act locally and change yourself”「変革は自分の心を動かさないと何も変わらない。学生には気づきの心を持ってほしいですね。」