フィンランドの教育を研究している池田文人さん(高等教育推進機構 准教授)はムーミン通でもあります。前回に引き続き、本場フィンランドや日本で集めたムーミンコレクションをご紹介します。また、池田さんの担当する人気講義「ムーミンの国へようこそ!」に込めた思いも伺いました。
(前回のおさらい、池田さんのムーミンコレクション。フィンランドのグッズもありますが、最近は日本製も増えてきたそうです)
講義「ムーミンの国へようこそ!」
2001年にフィンランドを初めて訪れて以来、フィンランド教育とその根本について日本に広めたいと考えていた池田さん。2007年に「ムーミンの国へようこそ!」という学部1,2年生向けの講義を始めました。現在はムーミン物語を交流分析という心理学の手法を使って読み解いていきます。また、ムーミンだけではなくトーベ・ヤンソンの小説や、フィンランドの叙事詩「カレワラ」なども取り上げます。
(“Moomin professor”の異名を持つ池田さん。後ろにあるムーミンワールドのポスターは、この名をつけたフィンランドの友人からのプレゼントです)
この講義は開講から8年目を迎え、現在では約100人が参加してします。「私としては、ムーミン物語を読み解いていくことを通じて、ムーミンたちが個を確立していくのと同じように、学生たちにも個の確立をめざしてほしい、という思いでやっています。」
ちょっと困っていることは、講義タイトルから、とても優しい内容を想像してやってくる学生が多いことだとか。でも、単なる座学ではなくグループワーク等も盛り込んだ授業は学生に人気です。開講して2年目には、受講生から手作りのムーミン消しゴムはんこセットをプレゼントしてもらったそうです。
(学生さん手作りのムーミン消しゴムはんこ。まさにオンリーワンのグッズです)
かわいいだけじゃない、ミイ
様々なグッズを見渡していると、ちょっと特徴があることに気がつきました。ミイのグッズが多いのです。池田さんが好きなキャラクターは「ミイ」なのでした。
(フィンランド製のミイの人形。物語中では誰より小さなミイですが、コレクションの中では大きくて目立っていました)
時に迷走するムーミン一家とは対照的ともいえる、ミイの一貫した強さや言葉がお気に入りの理由。「ムーミン物語で面白いのは、ミイやスナフキンといった名前を持つキャラクターと、ムーミンやスノークといった種族名で呼ばれるキャラクターの2種類がいることです。実はこの両者は性格が大きく異なっています。ミイもミムラという種族なのですが、ある程度初めから、個として確立しているんです。」
(ミイとスナフキンが異父姉弟なのは有名なお話。さらにミイの兄弟は20人以上。さすがにキーホルダーに入る人数には限界がありますね。)
(旅人スナフキン。フィンランド航空の機体との2ショット。)
「そして、ミイやスナフキンと関わって変わっていくのは、名前のないムーミン一家やスノーク、フィリフヨンカなんですね。だから名前のついているミイたちは物語上すごく重要なんです。」でミイやスナフキンの人気の秘密は、かわいいビジュアルだけじゃなく、こんなところにも理由があるのかもしれません。
(真剣なまなざしでムーミンについて話す池田さん。それだけ奥が深いのです。)
(ARABIAの食器。真っ赤なワンピースがトレードマークのミイが、珍しく水玉のスカートをはいています。)
広がれ! ムーミンからのメッセージ
今年2014年度から道内七つの国立大学で教養授業を相互に配信し、共有する取組が始まります。実は、池田さんの講義はそのひとつに選ばれています。池田さんの授業とムーミンの物語、ますます広がりを見せそうです。
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池田さんの講義「ムーミンの国へようこそ!」2010年度版の動画が一般に公開されています。
北海道大学の講義やイベントの映像等が見られるウェブサイト「オープンコースウェア」にてご覧ください。
北海道大学オープンコースウェア
人間と文化 「ムーミンの国へようこそ!」(2010年度・全14回)
池田文人