スラブ・ユーラシア研究センターは、日本で北海道大学にしかない「スラブ・ユーラシア」を冠した研究センターです。今回は、北大祭の展示にお伺いしてきました。


今回展示をご紹介してくださったのは、スラブ・ユーラシア研究センターで研究員をされている廣田千恵子(ひろたちえこ)さんです。文化人類学がご専門の廣田さんが担当されていたのはカザフ刺繍(ししゅう)の展示でした。
カザフ刺繍は、中国・モンゴル・トルコなど世界各地に暮らしている遊牧民族の一集団の「カザフ」で作られる刺繍です。モンゴルで作られた壁掛けの実物が展示されており、大きなものでは一畳分にもなる色鮮やかで美しい刺繍でした。会場では実際に刺繍を体験できるコーナーも用意されており、廣田さんが実演される手さばきの速さに、見学者のみなさんも驚いていました。「現地の方はもっと作業が速く、展示している大きなものでも2、3か月で完成させてしまうんです」と現地で撮影した動画と共にその速さを教えてくださいました。
廣田さんに、刺繍の色について伺うと、「作る人がセンスで決めているけれど、赤を使ったものが多いです」その理由について考えられるのは、寒い地域なので部屋の中を少しでも明るくするためということもあり得るけれど、かつては手に入る糸が赤か白くらいしかなかったために赤いものが一般的に定着しただけかもしれないと教えてくれました。
「刺繍の色づかいというシンプルなことでさえ、はっきりとした答えがなく、その背景にはさまざまな要因があり、そこが研究のおもしろいところでもある」と文化人類学という学問の奥深さを語ってくださいました。

会場を見渡すと、刺繍以外にも多彩な展示が並んでいました。スラブ・ユーラシア地域の絵本や茶器、キリル文字の解説、地図クイズ、民族衣装など、この研究センターには「スラブ・ユーラシア」というキーワードのもとにさまざまな分野の研究が集まっていることがわかります。分野の垣根を越えて研究について話し合うことができるので「この研究センターは素晴らしい環境です」と話してくださいました。
ロシア・中央ユーラシア・東欧まで広がる広大な「スラブ・ユーラシア」地域。この地域をキーワードにさまざまな専門分野の研究者が集まるセンターは、その名にふさわしい多様で幅広い研究が行われているようです。


