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[低温研の知の結晶 No.1] 結晶表面の分子層をみる世界最高峰の計測機器を大公開!

【吉川颯真│2025年度CoSTEP受講生】

[低温研の知の結晶]シリーズでは、北海道大学札幌キャンパスに位置する低温科学研究所の佐﨑元さん(相転移ダイナミクス分野 教授)へのインタビューと研究室訪問の様子を3回に分けて紹介していきます。

シリーズ第1回の今回は、低温研の実験設備の一部を特別に大公開!佐﨑さんと取材班による低温研ツアーの様子をお届けします。

インタビューに応える佐﨑元さん

「分子1個分」の高さの違いを見分ける光学顕微鏡

佐﨑さんが案内してくれたのは、佐﨑さんが教授を務める相転移ダイナミクス分野が保有する光学顕微鏡の設備です。中学校の理科の授業で使う顕微鏡も、光学顕微鏡の一つです。

結晶の成長メカニズムを観察するために、なぜ光学顕微鏡の開発に取り組んだのでしょうか?

結晶というのは、必ず層状に、1段1段成長していきます。表面には結晶を構成する分子1個分に相当する高さの段差(ステップ)があり、そのステップに分子が取り込まれることで結晶は成長して大きくなっていきます。この成長メカニズムを明らかにするには、ステップの挙動を直接観察しないといけません。私が開発した光学顕微鏡では、水分子1個分、約0.4ナノメートルの高さのステップを観察できます。光学顕微鏡は、水平方向(結晶表面に平行な方向)の分解能(異なる2点を見分けることができる2点間の最小間隔)は物理的な限界があるけれど、高さ方向(表面に垂直な方向)の段差を見分ける上では物理的な制限がないんです。つまり、結晶表面のステップが見える保証はなかったけれど見えない理屈もなかったということです。そこで、オリンパスと共同で開発したのがこの顕微鏡です。

高校生向けの出前授業に行った時に、高校生たちは理科の時間に使ったことがあるから「最新技術ならそれくらいできて当然」という反応をします。でも、これはどのくらいの技術かというと「月から地球の表面に置いた10円玉4枚の高さを識別する」レベルの技術なんです。

この光学顕微鏡で、次は何を明らかにしていきたいですか?

実は、この顕微鏡は今も貪欲に開発を続けています。雪の結晶、すなわち気体と固体の界面の結晶のステップの挙動は見ることができているのですが、氷の結晶、融液と固体の界面をちゃんと分子レベルで見ることに成功した人はまだ世界に一人もいません。それなら世界で最初に見るのは僕しかいないだろうということで、開発しています。

氷の結晶の成長過程を観察する上で、どのような技術的困難が立ちはだかるのでしょうか?

大きく2つあります。まず一つは、氷と水の屈折率が非常に近い値であることです。屈折率の値が近いと境界面で光がほとんど反射されず、像の質が落ちてしまい、どこまでが氷の結晶なのか区別することが難しくなります。もう一つは、結晶の成長速度の違いです。水との境界面で成長する氷の結晶では、結晶表面に大量の水分子がすぐに供給されるので、空気中の水分子を取り込んで成長する雪の結晶と比べて成長速度が1000倍から10万倍速くなります。水や氷の温度を0.01℃単位でコントロールしても、少しの温度の乱れで結晶が爆発的に成長してしまって、結晶のステップを捉えることができなくなります。

光学顕微鏡の強みと今後の展望を語る佐﨑さん

佐﨑さんは、市販の装置を使った研究について、次のように語ります。
「市販の装置でできる研究は、どこかで誰かがもうやっている。装置そのものを発明できたときに、初めて誰も見たことのない現象が見えてくる」
相転移ダイナミクス分野では、装置開発と基礎研究が切り離せないものとして進められています。佐﨑さんは「応用を目指しているわけではない。本当の基礎の基礎で、新しい物理現象を見つけたい」と話します。

今回お届けした低温研ツアーでは、雪や氷のミクロな世界を解き明かすための、佐﨑さんのこだわりが詰まった世界最高峰の光学顕微鏡を見せていただきました。

次回の[低温研の知の結晶 No.2]では、いよいよこの最先端機器によって明らかになった「雪と氷の結晶成長のミステリー」の核心に迫ります。空から降る雪の形はどうやって決まるのか? そして、氷の表面に隠された驚きの真実とは? 次回もぜひお楽しみに!

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2026.04.08

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