札幌から北へ車をとばして約3時間。名寄にあるFSC森林圏ステーション北管理部は、天塩・中川・雨龍の三つの研究林を統括する施設だ。ここに講義・研修室とコワーキングルーム、そして宿泊施設を備えた新棟が3月16日に竣工した。会議室などのあった旧庁舎の一部と、隣接していた短期・長期宿泊棟を一体化させたものだ。本格運用は本日、4月25日から。今回の[FSC的フィールド風景]では一足先に宿泊者第一号として、まさに「チェックイン」してきた様子をお伝えしていく。FSCとはField Science Center for Northern Biosphere, Hokkaido University、北方生物圏フィールド科学センターの略称である。
【林忠⼀・北⽅⽣物圏フィールド科学センター/いいね!Hokudai特派員】
新棟は鉄筋コンクリート総2階建てで、外観はコンクリート打ちっぱなしのシンプルなデザインだ。事務所で受付を済ませ、鍵を受け取り宿泊費用を支払う。宿泊費用は学内職員の業務なので実費の寝具クリーニング代700円(1回1週間までの滞在当たり)とその他雑費 50円(1泊当たり)。今回は1泊なので750円を支払う。学外の方であればこのほかに施設利用料として1泊あたり夏は320円( 6月1日~9月30日)冬は410円(10月1日~5月31日)がかかる。ただし、施設利用は教育・研究目的に限り、観光等では利用できないので注意。
まずは1階を見てみよう。1階には講義・研修室とコワーキングルームがある。講義・研修室は現在30人分の椅子とテーブルが用意されていて、ゼミからサイエンスカフェまで想定していて、今後人流が戻るにつれ大人数での利用が期待されている。天井に4口コンセントが各テーブル上に配置されていて、通路の邪魔にならないように各テーブルに給電ができる。またこのコンセントの位置がテーブルの整列に良い塩梅となっている。
コワーキングスペースでは3人分のデスクがあり、木目調のパーティションはホワイトボード仕様になっ
ている。また1台ではあるが24インチのモニターが用意されており、デュアルモニターとして使える。
特筆すべきはミーティング用の家具と床材で、雨龍研究林で伐採されたシラカンバ材が使われている。シラカンバは伐採跡地などのササ類を掻き起こすことで、人手をかけずに自然のプロセスで再生させることが可能で、成長も早いため短いサイクルで収穫できる。これからの北海道林業の新しい手法と注目され、木材のほか、樹皮や樹液などの利用価値も高い。雨龍研究林ではこのシラカンバや近縁のダケカンバに目を向け、今までにも野球のバットやギターなど新しい利用に対しても積極的に関わっている象徴的な樹木だ。
2階は宿泊施設及びシャワールーム、トイレ、食堂がある。二段ベッドの2人部屋が7室と和室が1室。二段ベッドも研究林の木材が使われている。デスクも2台置かれていて快適な研究ライフが送れる。
風呂は浴槽を設けずシャワールームが3室。シャンプーやボディソープが常備されている。トイレは完全個室が4室でオールジェンダートイレとなっている。食堂はとても明るく、特に朝方朝日の差し込む時はモデルルームかと思えるほど綺麗で快適だ。現在はコロナのため飲食は自室で摂らなければならないが、テーブルは最大10人分用意されている。早く顔を合わせて楽しい夕餉の時間が来ることを望むばかりだ。キッチンは電磁コンロを始め、電子レンジ、炊飯器、オーブン、電気ポットなど設備は充実しているので自炊には何ら不便は無い。
フィールドは利用して貰ってなんぼの世界。特に地方にはこうした宿泊施設が必須だ。しかしどこもかしこも老朽化で更新が待ち望まれている。またコロナ禍で1室の利用人数の制限があり、4人とか8人といった昔ながらの大部屋も再考されることになるだろう。その意味で今回の北管理部の新棟は今後の宿泊施設のひとつの方向性を示しているのではないだろうか。