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[低温研の知の結晶] 低温科学研究所の歴史に迫る!

人口190万人を超える大都市でありながら、ひと冬で累計約5メートルも雪が降る札幌。人口100万人以上の都市において世界一の降雪量を誇るこの街は、雪や氷の研究においても世界のフロンティアをひた走ります。その最前線に立つ研究機関が、札幌キャンパスの北側に位置する「低温科学研究所」(低温研)です。

低温研の雪氷新領域部門 相転移ダイナミクス分野では、雪や氷の結晶の表面を光学顕微鏡などを用いて観察し、結晶がどのように成長しているのかを研究しています。そこには、15年以上にわたって「世界一」と謳われる数々の高度な観測装置が集結していました。
相転移ダイナミクス分野の教授である佐﨑元さんにインタビューで伺い、その内容をもとに [低温研の知の結晶] と題してシリーズ化してお送りします。今回はこのシリーズに先立ち、低温研の今と昔に迫ります。

低温研の今

低温研は3つの研究部門と環オホーツク観測研究センターで構成され、研究対象は寒冷圏全体を網羅しています。寒冷圏には、海洋や河川、氷河、高山地帯から宇宙まで含まれます。さらに、寒冷圏に生息する生物や寒冷圏に存在する雪氷を対象とした研究も盛んです。研究スタイルも多種多様で、計測機器を用いて実験室の中で行う研究と、寒冷圏に出向き現地にある貴重なサンプルの採取・観察・分析を行うフィールド研究が半分ずつだといいます。低温科学研究所では、高校の理科における物理・化学・生物・地学のすべての分野にわたって活発な研究が行われています。

また、研究環境も非常に整備されています。南極の氷の掘削など、研究で使うための道具や装置をすべて手作りする必要があるため、技術的なサポートが充実しています。低温研では、金属加工やガラス加工だけでなく、電気・電子回路、コンピュータプログラム、テレコミュニケーションなどの多種多様な専門技術を持つ技術職員の方々が働いており、あらゆる実験装置を研究所内で独自に開発できる点も、低温研の大きな強みの一つだと佐﨑さんは話します。

低温科学研究所の組織図、低温研HPより

中谷宇吉郎が遺した雪氷学、結晶成長学と氷河学

札幌キャンパスの中央食堂横にある「人工雪誕生の地」碑を見たことがあるでしょうか?

この石碑がある場所を研究拠点としていた中谷宇吉郎(なかや・うきちろう)教授は、雪の結晶の形がなぜ多種多様であるのかを解明するために、1933年から人工的な雪の結晶の作成を目指して試行錯誤を始めます。それから3年、1936年に世界で初めて人工的な雪の結晶の生成に成功します。その後も中谷教授は研究を続け、様々な雪の結晶の形が、温度と水蒸気量によって決まっていることを明らかにし、「中谷ダイアグラム」として公表しました3, 4。

この業績をきっかけに、1941年に「低温における科学的現象の学理および応用を研究する」ことを目的として低温科学研究所が設立されます。しかし、当時は第二次世界大戦の最中であり、中谷教授はシベリアへ攻撃する航空機の翼が凍らないようにするための研究や、戦闘機が安全に離着陸できるように滑走路に発生する霧を追い払う研究など、基礎研究の側面から軍事研究を進めました。そのため、戦争が終わると軍事研究に関わったことについて批判を浴び、低温研を追われることになります5。

中谷教授の応用を見据えながらも物理現象の理解に重きを置く姿勢は、学問を大いに推し進めることになったといえるでしょう。

左:低温科学研究所と人工雪誕生の地の位置、札幌キャンパス地図を改変、右上:「人工雪誕生の地」碑の写真、筆者撮影、右下:中谷ダイアグラム 、Furukawa & Wettlaufer (2007) より

低温研設立のきっかけとなった「中谷ダイアグラム」をはじめとする研究は、「雪氷学」および「結晶成長学」と呼ばれる学問の先駆的な成果となりました。このうち「結晶成長学」については、後に着任した小林禎作助手(後に教授)によって、研究が進められます。現在では雪氷新領域部門の相転移ダイナミクス分野でさらに詳しい研究がなされています。

一方、中谷教授は1953年に、雪の結晶成長の研究に代わり、氷の結晶の機械的特性に関する研究を始めます。当時、そのような氷の結晶の性質を調べるためには大きな氷の結晶が必要で、そこで中谷教授は氷河に着目しました。そこからスタートした「氷河学」は、現在は雪氷新領域部門の氷河氷床・雪氷古環境分野の研究室によってさらに詳しい研究がなされています。
※機械的特性とは、物体に力を加えたときに、どのように変形したり壊れたりするかを表す性質のことです。

1941年の設立から85年を迎えた低温科学研究所は、雪氷研究の世界的拠点として発展を続けています。

次回以降の[低温研の知の結晶]シリーズでは、佐﨑さんの専門である結晶成長学の最前線に迫ります。乞うご期待!

参考文献:

  1. 北海道大学低温科学研究所,  https://www2.lowtem.hokudai.ac.jp/ (最終閲覧日: 2026年2月14日)
  2. 北海道大学低温科学研究所 相転移ダイナミクス分野, 「雪や氷の結晶成長の基礎」https://www2.lowtem.hokudai.ac.jp/ptdice/basis.html (最終閲覧日: 2026年2月14日)
  3. Y. Furukawa and J.S. Wettlaufer, Physics Today, 70-71, Dec. 2007.
  4. U. Nakaya, Snow Crystals, Harvard Univ, Press, 1954.
  5. 黒岩大助, 「北大における雪氷学」, 『北大百年史』通説 (1982年), https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/30045/ (最終閲覧日: 2026年2月14日)

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