【柴垣光希│2025年度CoSTEP受講生】
大学院生はそもそもの母数が少ないため、日常生活の中で大学院のことを知る機会はあまりないかと思います。本記事は、「大学院生の生活を覗いてみよう!」という趣旨のもと行われた、大学院生へのインタビュー記事の後編です。
前編では、こちらの質問についての回答を紹介しました。
【前編】
≪大学院生とは?≫
ーどんな1日を過ごしているか?学部生と何が違う?
ーどんな研究をしている?
ー研究生活ってどう?何が楽しい?
今回は後編として、こちらの質問についての回答をご紹介します。
【後編】
≪大学院生とは?≫
ーなぜ今の進路を選んだ?(学部選びや、大学院進学のきっかけなど)
ーお金はどうしてる?将来の進路の予定は?
ー気分転換は?休日何してる?
≪大学院生から、後輩へのメッセージ≫
ー学部生のうちにやっておいた方がよかったこと、やっておいてよかったことは?
回答した大学院生
・植田康太郎(理学院 自然史科学専攻 科学コミュニケーション講座・修士2年)
・近藤智仁(理学院 宇宙理学専攻 低温ナノ物質科学グループ・修士1年)
・後藤純平(文学院 人間科学専攻 地域科学研究室・修士1年)
・吉川颯真 (理学院 宇宙理学専攻 惑星宇宙グループ・修士2年)
(筆者)
・柴垣光希(生命科学院 ソフトマター専攻 蛋白質科学研究室・博士3年)
回答者の学年およびインタビューの回答内容は、2026年3月時点の情報です。
なぜ今の進路を選んだ?(学部選びや、大学院進学のきっかけなど)
(植田・M2)
高校までは天文学を専攻する予定でしたが、大学進学後、より理論寄りの研究がしたいと思い、物理学科に進学しました。大学進学時から博士課程までは行きたいと考えていたのと、同期の過半数が大学院に進学したので、とくに迷うことなく進学しました。進学後、あまり自分は研究には向いていないなと思い博士課程への進学は断念しました。卒業後は、学術書の編集職を希望しているので、一番関係がありそうな科学技術コミュニケーション分野へ進学しました。
(近藤・M1)
小学生のころから物理が好きで、研究者になりたいと思っており、高校生の時点で修士や博士への進学を心に決めていました。物理学科に進学し、当初は宇宙や素粒子の理論を研究したいと思っていましたが、研究室配属の際、本当に自分は一生机に座って数式と向き合い続ける人生を送りたいのかとふと冷静になり、成績との兼ね合いもあって物性の実験系の研究室を選択。大学院生からは、もともと興味があった宇宙に関する実験ができる今の研究室に移りました。
(後藤・M1)
高校生のころから農村地域の暮らしや社会問題に関心があり、北大では文学部で学ぶことができると知り、総合文系から文学部に移行して今の研究室に入りました(注1)。学部3年のときに自由な研究テーマを設定して調査に行く課題が提示され、実際にアポイントメントをとってインタビューに行き、自分の知らない経験や価値観を持つ人と話をすることの面白みを感じるようになりました。もっと時間をかけて人の話を聞き、研究という形で世に出したいという思いから進学を決め、今に至ります。
(吉川・M2)
高校時代は数学と物理が好きでした。興味のある学部・学科はいくつかあり、先輩の声も聞いてみましたがなかなか決められず。最終的には「学問自体の幅が広いから分属されてからも楽しいことを探せるんじゃないか」という楽観的な理由で「理学部地球惑星科学科」を選びました。結果的に、今の研究内容にどっぷりハマって博士まで進むことに決めたので、この進路選択は正解だったと思っています!
(柴垣・D3)
昔から化学や生物が好きで、生体物質の機能メカニズム解明みたいなことがやりたい、と漠然と思っていました。学部3年の時に進学するか就職をするか悩んで、いったん就活をしていた中で、「やっぱりもっと研究がしたいし、やるならとことん追求したい」と思ったので、博士まで進むことにしました。
お金はどうしてる?将来の進路の予定は?
(植田・M2)
JASSOからの奨学金と、有償インターンやアルバイトで稼いだお金などを駆使しながら生活しています。経済状況はあまりよくないので、学費免除制度を活用させていただいています。修士課程修了後は、就職を予定しているため、現在、就活真っ最中です。現在、学術書の編集職を中心にエントリーしています。
(近藤・M1)
もともと研究者を目指していることを家族と共有しており、修士までの学費は工面してもらいました。もう少し真面目に奨学金を探せばよかったと若干後悔しています。博士からは北大の給付型奨学金や学振等の獲得を目指しています。
(後藤・M1)
親からの仕送りとアルバイトを掛け持ちして工面しています。研究をしながらアルバイトをするのは多忙ではありますが、大量の文献やインタビューデータと向き合う中での気分転換となっており、研究とは別のコミュニティとしても貴重だと感じています。修士課程修了後は就職の予定で、まさに今就活中というところです。
(柴垣・D3)
僕は実家からの仕送りが無かったので、学部から修士の間は日本学生支援機構(JASSO)や民間財団の奨学金を積極的に活用して、学費や生活費に充てていました。加えて、恵迪寮(注2)に住んで家賃を浮かせていましたね。いろいろハチャメチャな寮ですが、楽しかったし良い思い出です。博士になってからは、北大のフェローシップ制度や学振(日本学術振興会特別研究員制度、注3)などを活用しています。北海道は家賃相場が安いので、東京などに比べると一人暮らしの金銭的ハードルが低くて助かっています。
卒業後は、製薬会社の研究職として働く予定です。博士の就活スケジュールは学部や修士のそれとは少し違いがありますが、北大は博士人材専用の就職支援部門がありサポート体制が手厚いので、就活は比較的進めやすかったと感じています。
気分転換は?休日何してる?
(植田・M2)
何かを読むのが好きなので、社会学や哲学など他分野の本を読むことが多いです。ただ、他分野の本も自分の研究につながることもあるので、明確に分けているわけではないです。あとは、YouTubeでお笑いなどを見ることですかね。
(近藤・M1)
基本的には家でゲームをしたり、本を読んだり、Youtubeを見たりしています。友達と通話していることも多いです。最近はもっぱら格闘ゲームやノベルゲームをやっていますね。

(後藤・M1)
ふらっと散歩に出かけたり、レンタカーを借りてドライブに行ったりすることが多いです。曜日に関係なく研究やアルバイトに勤しんでいるために、もはやいつが休日なのかよくわからなくなっていますが、何も考えずに動き回るのはいい気分転換になりますね。
(吉川・M2)
頭を使った後の気分転換はやっぱり運動です!趣味のランニングやサイクリングを楽しんでいます!プロ野球観戦も好きで、年に何度かエスコンフィールド北海道まで試合を観に行くこともあります!

(柴垣・D3)
カフェに行ったり、美味しいグルメを探したりするのが好きです。音楽も好きで、札幌付近はライブハウスなんかも多いので、よくバンドやアイドルのライブに行ったりしています(最近のマイブームは、札幌のアイドル「タイトル未定」です)。他にも、あまり頻繁にではないですがドライブやウインタースポーツなんかも楽しんでいます。北海道の大自然を存分に楽しめるのは、北大生の醍醐味ですね。
「大学院生から、後輩へのメッセージ」
学部生のうちにやっておいた方がよかったこと、やっておいてよかったことは?
(植田・M2)
やっておいた方が良かったことは、授業で良い成績を取ることでしょうか。単位を落としたり、単位があっても最低評価だったりすることが多かったです。その結果、留年しましたし、研究室配属も第3希望の研究室でした(まったく興味ない分野というわけではなかったですが)。やっておいてよかったことは、多ジャンルの本を読んでいたことです。現在の専門が、哲学、社会学、科学史など様々な学問を駆使する学際的なところなので、どのような分野の学問、研究が存在するかを把握できました。
(近藤・M1)
やっておいた方がよかったことは、研究室の情報収集ですかね。大学院での生活は研究室にかなり依存します。ぼうっとしていると、あっという間に研究室を選ぶ時期になるので、早めに情報収集をすると良いと思います。合わなければ、大学院進学のタイミングで研究室を変えるのも手です。大学院から学生を受け入れている研究室もあります。自分の場合は偶然研究室見学の情報が回ってこなかったら、今の研究室は見つけられていなかったと思います。
(後藤・M1)
自分の所属やそれまでの経験にとらわれることなく、幅広く講義をとってみたり、サークルに飛び込んでみたりすることがおすすめです。大学院に進んで研究を中心とした生活をするようになると、自分の専攻や関心にのめり込んでいって、他の学問分野に足を踏み入れるような余裕は乏しくなります。しかしながら、他の学問分野の考え方を援用したり、融合させることで新たに得られる知見も多く、思いがけないところで結びつくこともあると日々痛感しています。学部生の間により幅広く学問分野を齧ってみていればよかったかもなと感じているところです。
(吉川・M2)
コロナ禍で入学したのもあって、あまり大学で新しい人や価値観に出会う機会を自分から作りにいかないといけない状況で、それができなかったことをすごく後悔しています。高校から大学2年ごろまで、やりたいことが特にないまま過ごしてきてしまったのですが、私みたいなタイプはとにかく色々な人に出会って、新しい価値観に触れていくことが大事だと思います。サークルのような縦のつながりや学科の友達のような横のつながりはどのような進路に進むにせよ自分の可能性を広げるために不可欠だと、コロナ明けに入学してきた後輩を見て強く思っています。
(柴垣・D3)
学部生の時は、成績もある程度維持出来るように気を付けつつ、サークルやアルバイトなどに打ち込んでいました。コロナ禍で一気にやることが無くなり、暇になった時間を勉強や研究に充てているうちに、研究が楽しくなってのめりこんでいきました。
もっとやっておけば良かったことは英語ですかね。学部生の間は、将来的に自分が英語を多用する実感がなかったですが、研究室に配属されて以降、留学生と共同プロジェクトを進めたりする中で格段に使用量が増えました。実際に話すことでかなり成長できたと感じているので、学部生の間から国際交流コミュニティとかで実践的に英会話の経験を積んでいたら、もっと上達できていたかも。
おわりに
大学院生の生活について、少しイメージを掴んでいただけたでしょうか。5人とも、それぞれ自分なりのモチベーションやスタイルで研究をしていましたね。
研究生活のスタイルは千差万別であり、決まった正解はありません。むしろ「自分の型」自体を探していくのも、研究の一部なのかもしれません。
過去には、北大の院生と交流できるイベントが開催されたこともあります。
札幌駅から大通駅にかけての地下歩行空間にて行われた「サイエンスフェスタ2025」では、北大の博士学生が通りすがりの市民の方に研究発表をするブースが設けられていました。
【イベント概要】
2025年 北大サイエンスフェスタ 概要 | 北大 サイエンスフェスタ/北海道大学大学院大学院教育推進機構
【研究紹介ポスター・動画】
こちらのページでは、発表されたポスターの一覧と紹介動画が公開されています。
研究成果でSDGsに貢献する発表会 2025 | 研究紹介ポスター・動画 | 北海道大学 共創教育センター
もし次回このようなイベントを見かけた際には、ぜひお立ち寄りください。
興味を惹かれる研究が見つかるかもしれません。
(注1)
北大の総合文系および総合理系では、入学時に学部・学科を決定せず、1年目終了時に進学先の学部・学科を選択することができます。
(注2)恵迪寮(けいてきりょう)
北大の学生寮。家賃光熱費など込みで、月額約15,000円で生活できます。明治時代から続く伝統的な自治寮です1。
(注3)学振(日本学術振興会特別研究員制度)
日本学術振興会(JSPS)が実施する、特に優れた若手研究者(博士課程学生など)に向けた支援制度。採択されると、生活費や研究費を受給できます。
参考文献
- 北海道大学恵迪寮, 「北の大地の学生寮」, https://keiteki-ryo.com/, (最終閲覧日: 2026年2月17日)
- 北海道大学大学院 大学院教育推進機構, 「2025年サイエンスフェスタ 概要」, https://hokudai-sciencefesta.com/2025sf/, (最終閲覧日: 2026年2月24日)
- 北海道大学 共創教育センター, 「研究成果でSDGsに貢献する発表会 2025」,https://cce.grad.hokudai.ac.jp/posters/2025-2, (最終閲覧日: 2026年2月24日)