国際連盟の事務次長を務め、『武士道』を著した新渡戸稲造先生。北海道大学の前身である札幌農学校の出身です。新渡戸先生が国際舞台で活躍した頃から100年近くが経つ現代でも、たくさんの北大生が世界に羽ばたいています。今回は、北海道大学国際本部が中心となって実施している「短期留学スペシャルプログラム」を紹介します。前編では、このプログラム立ち上げの経緯や、そこに込められた思いを、担当する教職員の方々に取材しました。
後編では、「いいね!Hokudai」取材班が実際に台北医学大学への短期留学プログラムに同行した記事をお届けしています。合わせてお読みください。
【金澤 幸生・CoSTEP本科生/社会人】
世界に羽ばたき広がる視野
北海道大学が行う留学事業はいくつかあります。今回紹介する「短期留学スペシャルプログラム」は主に学部2年生以降の学生を対象としており、今年2016年度で3年目を迎えました。今まで200名を超える北大生が参加しています。短期留学の期間は約2週間で、海外における歴史と文化を理解し、より本格的な留学への導入となるような内容となっています。また、現地の大学で専門分野の基礎や関連する分野など幅広い内容の講義を英語で受講することや、現地の学生との交流も盛り込まれており、国際的な視野を養えることが特徴です。こうした様々な活動を通じ、学生たちは自分の目で海外を見ることになります。日本で暮らすだけでは分からない海外に実際に行くことで、ステレオタイプなものの見方から一歩進んだ視野を身につけることができるようになるのです。
Global healthに関する国際シンポジウムに参加(2014年度短期留学スペシャルプログラム))
詳しいお話を「短期留学スペシャルプログラム」(台北医学大学)の中心である玉城英彦さん(国際本部グローバル教育推進センター 特任教授)、台北医学大学で引率を担当する佐藤夕紀さん(薬学研究院 助教)、プログラムのスタッフである大山一恵さん(国際本部 国際教務課)に伺いました。
グローバルに競争できる人間となるために必要なこと
「短期留学スペシャルプログラム」は、担当する教員がカリキュラムを考えます。玉城さんが留学先でのカリキュラムを作るにあたって大切にしているのは、リベラルアーツ(広い教養)を身につけることです。普段、学部や大学院で学ぶような専門分野の個別の知識ではなく、リベラルアーツを学ぶことで、分野全体について、この学問はどんな目的でどういったことを研究しているのか、という大きなくくりで総論を話せるようになることを重要視しています。「日本の大学は、各論は強いが総論に弱い。グローバルに競争できる人間となるために、リベラルアーツが大事なんです」と玉城さんは説きます。
(プログラムの立ち上げから中心的役割を担ってきた玉城英彦さん。1985年から世界保健機関(WHO)ジュネーブ本部に勤務、
世界エイズ戦略に初期から携わる。2000年より北海道大学)
また、参加する学生の希望を聞いてカリキュラムを考えるのも特色です。今回の台北医学大学へのプログラムに参加する学生は全員医療系(医歯薬保健)であるとのことで、実際の医療現場なども回るスケジュールを検討しているとのことでした。台北医学大学での引率を担当される佐藤さんは、ご自身の専門である薬学を例に挙げ、「学部低学年の頃は、薬学の基礎となる化学などの授業が多いが、そんな学部時代に薬学に限らず医療全般に触れることができる」と、この短期留学のメリットを語ってくれました。
(台北医学大学への引率を楽しみにしているという佐藤夕紀さん)
北大生よ、「あんパン」であれ
玉城さんは、プログラムに参加する学生向けの事前授業で必ずされるお話があるそうです。その名も、「あんパンセオリー」。「あんパンは、外はパン。中身はあんこ。たとえ海外にいって外見がパンのように西洋かぶれしても、中身はおいしいあんこのように日本産であれ」という、玉城先生オリジナルの言葉です。国際社会においても、海外の価値観だけに染まることなく、日本人魂を発揮して活躍できるような人になってほしいという、国際連合で長年にわたりご活躍された先生ならではのメッセージでした。
果たして、台北医学大学に羽ばたく北大生は「あんパン」のようになれるのでしょうか。次回、台北医学大学への短期留学プログラム密着取材は、9月下旬に掲載予定です。お楽しみに!