「ありがとう、から始めましょう。」
動物医療センター(動物病院)の病院長・滝口満喜さんは、動物慰霊式のさいごにこう呼びかけました。
獣医学部で本日10/7、動物慰霊式がとりおこなわれました。動物愛護週間に合わせて、毎年この季節に開催されます。教職員や学生だけでなく、動物病院で治療を受けていたペットの飼い主さんたちが共に参列する慰霊式は、日本では珍しいそうです。
獣医学研究科長の稲葉睦さんは、
「科学研究のために奪った命と、治療の甲斐なく救えなかった命を、獣医学医療の発展に必ず生かします。」
と誓って、祭壇に深々と頭を下げられました。
参列者の献花のあと、滝口院長は飼い主さんたちにむけて、
「あの時もっとこうしてあげればよかった、と自責の念をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。ですがそれでは彼らは喜びません。彼らがくれた素晴らしい日々に感謝しましょう。今日はたくさん泣いてください。でもまた、ありがとう、から始めましょう。」
ご自身がお父様を亡くされたばかりだという滝口院長の言葉は、参列者の心に静かに響きました。
「命の重みを知り大事にする心は、動物が好きな人だけで盛り上がっても育まれません。どうかみなさん、1人でいいから動物が苦手な人と友達になってください。そして動物との暮らしがいかにすばらしいものか、伝えてください。そうして少しずつ、命の重みを多くの人と共有できる社会をつくっていきましょう。札幌市が人と動物の共存社会のロールモデルとなるように、我々がまず、動きましょう。」
稲葉研究科長と滝口院長の心のこもったお話に、飼い主さんも動物の命に携わる学生や先生方も、みな深く頷いていました。
教職員や学生にむけては、
「大学病院である以上、高度な医療を提供するのは当然のことです。それだけではなく、飼い主さんの心に寄り添う獣医師でありたい。学生や研修医がそのような心を育むことのできる教育をめざしましょう。」
動物医療だけでなく、この現代社会を支える科学は、多くの動物の命を犠牲にして発展しています。この秋のひと時だけでも、彼らのみじかい一生に思いを馳せてみるのも、よいでしょう。
(動物病院の裏にひっそりとたたうむ「畜魂碑」)