農場長の山田敏彦さん(フィールド科学センター 教授)に、農場の概要についてうかがいます。
農場の広さは、どのくらいですか
北大農場には、地図にある第一農場、第二農場のほか、札幌から60キロメートルほどの余市町にある「余市果樹園」が含まれます。
第一農場、第二農場あわせて、58ヘクタール(0.58平方キロメートル)あります。札幌キャンパスの面積が180ヘクタールほどですから、約1/3を占めていることになります。余市果樹園は、5.7ヘクタールです。
農学部のある大学はみな農場をもっていて、北大より広い農場をもつ大学もあります。でも、学生がふだん授業を受ける教室の近くに、これだけの規模の農場をもっているのは、北大だけです。バスで1時間以上かけて農場に行く、という大学も少なくありません。
なお、ポプラ並木やその東にある花木園(かぼくえん)は、大学の本部が管理しています。
農場って、農学部のものですよね
いえ、違います。
まず「北大農場」というのは通称で、「生物生産研究農場」が正式な名前です。北海道大学の北方生物圏フィールド科学センターの一組織です。センターは、学部などから独立した「共同利用施設」で、北大のすべての学部や大学院などに、さらには他の大学の人たちにも利用の機会を提供しています。
授業では、農学部や大学院環境科学院の学生たちがよく使います。たとえば農学部の農業実習では、水田を使って、田植え、除草、稲刈りなどを体験します。また全学教育科目の実習もいくつか開講しています。
(まもなく刈り取られるイネ。ブルーのネットは、スズメよけです。)
研究では、農学系の先生が、バレイショの栽培、イネの遺伝育種、農業ロボットの開発などに利用しています。また理学系の先生の実験用にバレイショ品種などを提供する、といったこともしています。変わったところでは、北大にある「子どもの園保育園」が、園児たちにトウモロコシを植えて収穫までを体験させるのに使っています。
どんな作物や動物を育てているのですか
農場には、専任の教員5名のほか、技術職員が20名います。
技術職員は、作物グループのほか、園芸グループ・機械班+余市グループ、畜産グループに分かれて、農場施設の維持管理を担当しています。たとえば畜産グループでは、鶏や豚、牛、めん羊を飼育し、飼料作物を栽培する圃場も担当しています。
(トラクターなど農業用機械もあります)
札幌の農場で栽培している作物は、イネや、コムギ、スイートコーン、バレイショ、エダマメなどのほか、アスパラガスやトマトなどの野菜、桑、そしてリンゴやナシ、ハスカップなどの果樹です。余市果樹園では、リンゴを中心に、ナシ、ブドウ、ハスカップ、オウトウなどを栽培しています。
※ ※ ※ 数日後 ※ ※ ※
農場で、農学部2年生を対象にした「夏季収穫実習」と、全国の大学の学生を対象とした「農場実習」が行なわれていました。北海道で開発されたノーザンルビーというバレイショの収穫作業です。
梅原俊一さん(農学部2年生、写真では座席に座る2人の右側)に感想を聞いてみました。「日本の農業がどういうものなのか理解しようと思って、この授業に参加しました。作物の栽培では、適切な時期に適切な方法で手入れするのが大切だということや、農作業の一つ一つに先輩たちの経験が詰まっているんだということを、身をもって体験することができました。仲間と一緒に農業やることの楽しさも、実感しました。将来は、これまでにない新しい農業にチャレンジしてみたいと思っています。」
学生たちにとって、種芋を植えるところから育ててきただけに、歓びもひとしおのようです。