いよいよマイナス50℃の部屋に向かいます。でもそのままの格好では当然入れてもらえません。見学者も訪れる超低温室なので、貸出用の防寒具が揃っています。重量感のあるダウンジャケット、手袋、膝までの長靴を借りて準備完了。
まずは、冷気を逃さないためのビニールカーテンをあけ、マイナス20℃の部屋へ。とたんに空気がひやっとします。ここは、超低温室から出してきたサンプルをカット、スライスなど加工する場所です。1時間いても平気で作業を続けられる斎藤さんは、実は日本一寒い町、陸別町の出身です。
いざマイナス50℃の超低温室へ。大型冷凍庫のドアかとみまごう超分厚いドアをガチャリと開けると、体験したことのない冷気に包まれます。鼻で息を吸い込むと鼻腔が、そして口呼吸しようとすると、喉の奥が凍りつくような感覚となり、思わずせき込んでしまいます。防寒着のフードをしっかりかぶり、手袋で口元を押さえつつ進みました。
目の前にある白い鉄製の階段も、サンプルを置いてある棚さえもビリビリっと凍りついているようです。
階段を下りると、掘削用ドリルと、ドームふじで採れたアイスコアのサンプルが展示してありました。このサンプルは保存用ではなく、オーダーがあればスライスされ研究用に使われるそうです。よく見ると、数字が書き込まれていて、地面に近い部分で採れたものから順番に展示してあります。浅い所から、いちばん深い場所で採れた3000mと書かれたサンプルに進むにつれて、氷の透明度が上がって行くようです。
すぐ隣には、スライスされた氷片がライトを浴びて輝いていて、宝石のようにも見えてきます。
2Fに上がると、段ボールに入った各年代のサンプルがずらっと置かれていました。1つ1つラベルが貼られ、いつ採れたものが分かるようになっています。一番古いコアは、96年に採取されたものだといいます。
「南極の氷採取は日本だけでなく諸外国でも行われて研究されていますが、マイナス50℃の冷凍庫で状態の良いサンプルが管理されているのは、ここ日本の北大だけなんですよ。」斎藤さんが愛情を持って管理しているおかげかもしれませんね。
最後にまた南極に行ってみたいか尋ねてみると、「もちろん。機会があればまた行ってみたいです。」南極への想いが伝わり、現地には寒さを上回る強い魅力があるのだと感じました。