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#194 苦味の常識を覆す(2)~本当に悪いもの? 自分の”興味”を追求した人生~

前半では、加藤英介さん(農学研究院 准教授)の苦味研究について見てきました。苦味は口だけで感じるという認識は実は少し違っていましたね。後半では、加藤さんがこれまでどのような道を歩んで今に至ったのかを聞いていきます。また、苦味と糖尿病、肥満との関係についても探っていきます。この記事を読み終わったころには、苦味を違う視点から捉えられているでしょう。

【安藤正太・総合理系1年/櫻井明澄美・経済学部1年/瀧田楓・総合理系1年】

高校生の時にはどういった将来・キャリアを考えていましたか?

高校の時には正直何も考えていませんでした。ただ化学や物理が好きで、特に化学が好きだったので、理工学部の化学科を志望しました。なので、その時点では将来何がやりたいとか特に考えてなくて、もう単純に化学が好きだから、そこに行こうと考えていました。と言うと、多分総合理系とかで入った学生さんには怒られるかな(笑)

影響を受けたのは大学生時代の先生だそうですね

そうですね。僕が今やっている研究は食品化学なんですけど、僕のルーツは天然物化学なんですよね。天然物化学は、いろいろな生物が持っている化合物に注目して、その化合物がどんな働きを持っているのかを探っていく学問です。慶應義塾大学に入って学年が進んで研究室を選ぶときに、天然物化学が専門の上田実先生がいた。そのお話がすごく面白くて。それがきっかけと言えます。その研究室では植物の動きを研究していました。植物の動きって何かっていうと…マメ科植物の就眠運動です。

就眠運動…?

マメ科の植物のうちいくつかは夜になると葉っぱを閉じるんですよ。それを就眠運動というのですが、上田先生に初めて教えてもらって、そんな動きがあるんだ!とすごく興味を持った。それでその研究室に入って、そのうちに天然物化学という、植物内にあるいろいろな化合物の働きを調べていくことに興味を持ちました。

(博士号を取得してポスドク時代の加藤さん)〈写真提供:加藤英介さん〉
食べ物の研究をはじめたのは北大に来てからなんですね

これも怒られるかもしれないけど、実は、最初に北大に来たときですね…食べ物自体にはそれほど興味がなかったんですよ。ただし、食べ物の成分について研究している研究室だったので、そこには興味を持っていた。つまり、食の研究に興味を持ったというよりは、最初は植物の成分に興味を持って、植物繋がりで食べられる植物の成分に興味を持って、食の研究に入ったというわけです。

やっぱりやっているうちにどんどん興味が出てくるもので、今は食べ物の健康機能がどうやって発揮されているかに非常に興味を持ってます。人によっては、小さい頃からこれに興味があってその道をどんどん進むという人もいて、そういう人はすごいなと思いますけど、僕はだいぶその辺適当です(笑)。

(日本農芸化学会に参加されたときの様子。加藤さんは2018年に農芸化学奨励賞を受賞!)〈写真提供:加藤英介さん〉
加藤さんが苦味受容体に注目した理由はなんですか?

実は、研究のきっかけに苦味受容体は全然関係ないんですよ。もともとやっていた研究は、食べ物や薬用植物の成分で、脂肪細胞に与えると脂肪の蓄積を抑制したり、分解を促進したりする成分を探索するというものです。その研究をしていたところ、トンカットアリという東南アジアの薬用植物の苦い成分が脂肪細胞に作用してその分解を促進するという働きを見つけて、更にその後、アタンシという別の植物の苦い成分でも同じような働きを見つけました。そうすると、苦みには何か重要な存在意義があるのかなって疑問を持ちますよね。

確かにそうですね

それで色々調べてみると、苦い成分が脂肪細胞、肥満に効くという報告が結構あったんです。そうすると苦味だから、苦味受容体じゃんっていう話になって、そこから苦味受容体の研究を始めました。

当時は苦味受容体なんて知らなかったので、苦味だから口の中にしかないのかなって思って調べてみると、口の中以外の苦味受容体に関する研究がポツポツありました。じゃあ脂肪細胞でもあるんじゃないのかというのが、脂肪細胞の苦味受容体を研究しようと思ったきっかけです。実は当時すでにヒトの脂肪組織にも苦味受容体があるのは知られていましたが、その機能は全く調べられてなかったので、じゃあ自分でやろうと思って研究を始めました。

なるほど、肥満の研究から派生して苦味受容体の研究を始められたんですね

ただ、これ実は、結構苦労したんですよ。もともとやっていた植物の成分の研究っていうのは、有機化学の研究なんですよ。一方で、苦味受容体の研究は、遺伝子とか、分子生物学とかの分野の研究なんですよね。全然違う分野だったので、最初は研究方法を一から調べるところから始めました(笑)

糖尿病の研究もされていますが、苦味受容体や肥満との関係は?

苦味受容体と糖尿病の関係は、恐らく肥満を介しているんじゃないのかなと思っています。今のところ苦味受容体と糖尿病を直接結びつける報告はないんです。ただ、肥満は糖尿病誘発のリスクを高めるので、そこから繋げられるだろうとは思ってます。

楽しみですね。肥満を研究しようと思ったきっかけはなんですか?

糖尿病は生活習慣病で肥満は健康問題で生活習慣病につながるから、そこから派生してはじめたのがきっかけですね。もちろん自分でも太りたくないですし、最近特にちょっとおなか周りがやばいんだけど(笑)。やっぱ自分が興味あることをやるのが一番いいんですよね。苦味受容体もやっぱり食べ物なので美味しいもの食べたいなってとこから始めたりしました。

では、食や苦味の研究でどのような思いを大事にしていますか?

美味しいもの食べると確かに幸せなんですけど、食べ過ぎると駄目ですよね。だけど、食べたいですよね。矛盾ですよね。これを同じ食べ物で何とかしたいな、という思いがあって…。

皆さんは緑茶飲んだり、チョコレート食べたりしたときに、まずいと思わないですよね。でもあれも苦いもの入ってるんですよ。苦いものは毒っていう一般認識があって、みんな嫌いなはずなのに、カカオやお茶は嫌いじゃない。そうすると、苦いものって本当は毒なだけじゃないのかなっていう考えが浮かんでくる。

もし人間に好きな苦味があるならそれを使ってあげれば苦くても美味しいものを作れますし、さらにその好きな苦味が体の中で結構良い効果を持ってるとしたら美味しいものを食べながら、健康にもいいっていうことになるかもしれない。こんな発想で、実は、苦味受容体の研究をやっているんです。

ありがとうございます。では最後に、北大1年生に向けて一言いただければと思います

学科選びや学部選びですごく迷うと思うんですけど、正直に言うと意外とどこ選んでも変わらないかもしれません。やっぱり今、総合入試だと成績が良くないと好きなところに行けないから勉強ばっかりやってる人もいるけど、そこであんまりこだわらなくても、入ってやってみると面白いことはたくさんあります。僕もやり始めてから面白くなったっていうことばっかりなので。

つまり何事にも挑戦してみればいいっていうことですね!

はい、多分、いい言葉で言うとそんな感じです(笑)。

わかりました。ありがとうございました!
(加藤先生、インタビューに応じていただきありがとうございました!)

 

この記事は、安藤正太さん(総合理系1年)、櫻井明澄美さん(経済学部1年)、瀧田楓さん(総合理系 1 年)が、一般教育演習「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

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2022.09.02

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