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#189 新しい酪農の在り方を考える

北海道を代表する産業でもある酪農業ですが、環境への負荷が高いことが問題になっています。また世界情勢のあおりを受け、化学肥料や飼料の値段が高騰し、酪農業は経営的にも苦しい状況に陥っています。環境にも、そして経営的面からも持続可能な酪農の仕組みとは? 研究者と酪農家が一緒に考えるカンファレンス「次世代の北海道スタイル・酪農業を考える」が、酪農が盛んな道東の中標津町で開催されました。

(司会を務める、農学院の内田義崇さん、オンライン配信も行われた)
みんなで考える、未来の酪農

NoMapsは北海道を舞台に未来のテクノロジーやクリエイティブな発想を話し合う交流イベントです。2022年度は札幌だけでなく、NoMaps釧路・根室として道東地域でも開催されました。そのカンファレンスの一つが中標津町で開催された、「次世代の北海道スタイル・酪農業を考える」です。

北海道大学の内田義崇さん(農学研究院 准教授)がモデレーターを務め、中標津町で活躍する酪農家である山本照二さん(株式会社養老牛山本牧場 代表)、竹下耕介さん(有限会社竹下牧場 代表取締役)、酪農業を支える道の職員である長山由起夫さん(北海道農政部食の安全推進局食品政策課 主幹)をパネラーに、官民学の観点から未来の酪農について語り合いました。

(左からパネリストの山本照二さん、竹下耕介さん、長山由起夫さん)
実は多様性がある!日本の酪農業

日本は世界的に見ても、多様な形態で酪農ができる稀有な国だそうです。その背景には、元々国土が狭く山岳地が多いというハンデがあり、気候や環境も多様なため、画一的な酪農のシステムを取り入れにくいという事情がありました。ただ、その分、酪農家自身が自分の酪農スタイルで経営できるという自由もあります。

パネリストの一人、山本さんはもともと東京出身ですが、北海道の自然に惹かれて、2002年より中標津町で酪農業を始めました。山本さんが営む山本牧場では穀物飼料を与えず、牧草だけで乳牛を育て、グラスフェッドミルクと呼ばれる牛乳を生産しています。穀物飼料を生産し、輸送するという過程が省かれるため、CO2の排出が抑えられ、結果的に環境負荷が軽減された酪農になっています。

(山本牧場で育まれた養老牛の放牧牛乳は濃厚なグラスフェッドミルク)

もう一人のパネリスト、竹下さんは牧場のほかに、ゲストハウス「ushiyado」やチーズ工房を開設し、牧場で作られたミルクを消費者とともに楽しむという活動も行っています。今年からコワーキングスペースを作り、来年は太陽光と蓄電池で電気を賄う新しいライフスタイルを提案する宿泊施設を開館予定です。酪農を体験してもらう機会を様々なアプローチから作っています。

北海道農政部で有機農業事業を担当する長山さんは、国も持続可能な食料システムの支援を推進しており、北海道で始まっている環境に配慮した酪農、高品質高付加価値を付けた食料の生産への期待は高まっていると語ります。

酪農の未来を消費者とともに作っていく

挑戦的で独自な酪農業が展開されている一方、消費者の私たちにとって酪農の現状はまだまだ遠い世界の出来事と思われがちではないでしょうか。

カンファレンスの終盤では、それぞれのパネリストから、消費者の私たちへのメッセージが投げかけられました。

中標津町では牧草を主体にした酪農が盛んにおこなわれています。中標津町の風土だからこその味が、この地の乳製品にはあると長山さんは語ります。

(中標津空港では牛のオブジェがお出迎え)

人間が食べないものを動物が食べて、それを人間が食べる、酪農業はある意味持続可能な産業です。環境負荷の問題にも目を向けつつ、この循環する仕組みを維持するためにも、もっと私たち消費者と生産者の距離を縮める必要があると、竹下さんは語ります。実際にゲストハウスに宿泊したお客さんからは、特別な体験ではなく、酪農家の普段のライフスタイルを経験したいといった声があがったそうです。食料を生産するという生活自体、私たちの未来を考えていく際には重要なテーマです。産業として、ライフスタイルとして、その意義を今一度社会で考える必要があるでしょう。

そのためにはもっと語り合う機会を設けることが重要だと、山本さんは指摘します。東京の調布市に山本牧場の直営店をオープンさせた山本さん。都会の消費者に酪農の魅力発信するコミュニティづくりに挑戦しています。単なる商品ではなく、その商品が生産される過程も消費者に共有していくことが、消費者側の意識や行動を変えるきっかけになるかもしれません。


今回のカンファレンスを受け、内田さんをゲストに迎えた消費者向けのサイエンスカフェが開催されます。第127回サイエンス・カフェ札幌「土を作るミルクー環境再生型農業のための生産と消費ー」では、環境への負担を軽くする環境再生型農業を紹介し、消費者の選択の重要性についても触れる予定です。当日は、ユートピアアグリカルチャーが生産しているグラスフェッドミルクを味わう会も開催。ぜひ北海道の未来を、おいしくしていく活動の話、聞いてみませんか。

「土を作るミルクー環境再生型農業のための生産と消費ー」
  • 日時:2022年12月16(金)18:30-20:00(開場:18:00)
  • 場所:札幌文化芸術交流センターSCARTS 1Fスカーツコート
    〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西1丁目
  • ゲスト:内田義崇さん/北海道大学大学院農学研究院 准教授
  • 聞き手:福浦友香/北海道大学CoSTEP
  • 参加:事前申し込み不要・先着50名
    YouTube Liveでも参加できます
  • 主催:北海道大学 大学院教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP・コーステップ)
  • 協力:地域エネルギーによるカーボンニュートラルな食料生産コミュニティの形成拠点
    北海道大学ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点
    株式会社ユートピアアグリカルチャー
    NoMaps釧路・根室
  • 詳細はこちら

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2022.12.08

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