「悠久」という意味をもつ、平取町二風谷にある納骨堂「サスイシリ」。ここにはアイヌの方々の遺骨34体が納められています。遺骨は、明治期から1950年代にかけて平取町で「研究」のためとして墓所から掘り返されたり、1990年代に遺跡調査で発掘され、その後返還されたものです。適切とは言い難い方法で入手されたものも少なくありません。
このうち、北大が平取町内で発掘、あるいは寄贈・寄託をうけ、学内で保管していたのは半数の17体です。北大の研究者は1933年10月20日に平取で1体、26日に荷負で2体、28日に貫気別で6体を発掘しました。戦後も「研究」は続き、1952年11月27日に長知内で3体、1953年12月に平取で1体を発掘しました。その他にも北大は発掘時期が不明な遺骨を3体(平取2(うち1体は寄贈)、二風谷1)、1953年7月に発掘者不明で発掘され役場より寄託を受けた1体(長知内)を保持していました1, 2)。
遺骨はながく杜撰な管理下におかれていましたが、1984年以降、北大医学部の脇にたつアイヌ納骨堂に保管されていました。そして平取のアイヌの方々の訴えや、文部科学省による返還ガイドラインの整備により、ようやく2020年10月に地域返還されたのです。しかし、これで終わりではありません。
現在、12月14日まで学内教職員向けの「アイヌ民族との共生に向けた研修」がオンデマンド講義として配信されています。また、2023年から本格開講される学部1年生必修授業「北大での学び」の1回分では、アイヌのコタンだった札幌キャンパスの歴史や、民族多様性について学ぶ内容になっています。
過去を直視し、学問はどうあるべきかを自らに問い続けることが北大の責任です。碑文と解説板はそのことを強く訴えています。
【川本思心・北海道大学理学研究院/CoSTEP】
修正:北大が保管していた17体の経緯について一部誤りがあったため修正しました(2023年1月17日)
参考資料
アイヌ遺骨問題に関してはこちらの記事もご覧ください
- 【チェックイン】#123 アイヌを識る(3)~北大イチャルパでの祈り~(2019年3月19日)