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#207 世界に向け、北大で地域をデザインする(1)~町を豊かに、人を幸せに~

キツイと噂の工学部の建築都市コース。朝まで図面とにらめっこ? 徹夜で先輩のお手伝い? 先生が怖い? 建築には興味があるけど、研究室の雰囲気ってどんな感じ? そんな疑問をもつ高校生、北大学部1年のあなた。北の大地で地域と世界にむきあう北海道大学の都市地域デザイン学研究室をのぞいてみませんか? 私たち北大学部1年生が瀬戸口剛さん(工学研究院 建築都市空間デザイン部門 教授)にインタビューしてきました。

【上貞西輝/法学部1年・田子葉月/総合理系1年・橋本悠樹/総合理系1年】

(取材にむかう私たち。場所は札幌キャンパスにある工学部の共用実験棟)
(瀬戸口さん)

瀬戸口さんが研究する上で大切にしていることを教えてください。

私の研究室には理念が三つあるのですよ。一つ目は最先端の研究、つまり世界一の研究や日本一の研究であることをモットーにしています。私は、建物や都市に雪がどのように積もるか、というシミュレーションの研究をしています。この研究をしているのは日本では北海道だけです。世界に目を向けてもロシア、フィンランド、スウェーデンでやってますが、特に都市レベルで風雪のシミュレーション研究をしているところは少ない。だから私たちのやっている研究は日本一、世界一の研究だと思っています。

(札幌市中心部の風雪シミュレーション実験。風洞内に模型を設置し、雪に模した細かい粒を降らせることで、建物が都市の積雪にどのように影響するかを検証)〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉
世界一の研究、すごいですね。他にはどんなことを大切にしているんですか?

二つ目の理念は、地域に貢献する。北海道大学の私たちの研究室がやらなければいけないことをやるのです。夕張市の人口が極端に減って、2007年に財政破綻しましたよね? そしてそれが大きな社会問題になった。その再生の取り組みを夕張市と一緒にやっています。北海道の大きな課題ですからね。具体的に何をしたかというと、その地域の風習を考えて住宅を改修して人に住んでもらっています。

(夕張市真谷地地区にある集合住宅。市や住民との対話を重ね、14棟あるうち6棟の住民が別の6等に移転することで集約化しました)〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉

それから日本では災害の問題もありますよね。災害には津波、噴火、地震、干ばつ、台風があるのですが、そのうち日本は四つもあるのです。非常に地震も多くて、世界の中でも稀な災害危険国なのです。地震などの災害から都市をどうやって守ればいいかという研究もやっています。「やりたい研究」じゃなくて、「本当にやらなければいけない研究」をみんなでやるのです。

(瀬戸口研の学生さんも参加していただき、車座になってインタビューを進めました。奥では別の学生さんたちが各々作業をしています)
地域に根ざした研究をしているんですね。

地域のことを一生懸命やるのだけれど、同時に世界的な活動もする。三つ目の理念は世界的に貢献していくことです。この時に何を基準とするかというと、我われは北海道大学だから「北」を向く、「北」を相手にする。風雪のシミュレーション研究も、人口減少の問題も、災害の問題も、北海道にこだわって研究している。そうすると他ではやっていないから自動的に世界一になるし、海外の災害危険国でも役に立つ。ずっとそれを続けてきているし、ずっとこれからも続けていく。

(「研究は僕だけじゃなくて、ここにいる学生も一緒にやっている」と付け加える瀬戸口さん。研究室の姿勢がうかがえます)
具体的なお仕事についてうかがいたいとおもいます。以前、稚内駅に行ったことがあって、デザインに魅力を感じました。あのようなデザインはどうやって思いつくのですか?

おー!行ったことある? いい質問だね。デザインというのは思いつきじゃないのですよ。デザインというのは能力がある人がある時、パッと思いつくものだと思っているでしょう。全然違う。デザインは「理詰め」でやるのです。非常に論理的なのです。

(瀬戸口さんがデザインし、2013年に完成した稚内駅の複合施設KITAcolor(キタカラ))〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉

稚内駅を例にあげてみよう。日本の普通の駅は、改札は必ず線路の横にあるけれど、稚内駅は日本で一番北の駅でしょう? 頭端駅といって行き止まりの駅だから、線路ののびる方向の前に改札を作ることができる。せっかくの最北端の駅なのだから北向きに降りられるようにしたかった。デザインの最初はこういった「想い」から始まるのです。

ただ、改札を北向きにしようとすると問題が生じる。一つは、改札は町のある方向に向けるという慣習に反すること。役所の人たちは従来からの慣習があるから、町がある線路の横、西側に駅をつくって欲しいと考えるけど、話し合って説得した。もう一つの問題は気候条件が厳しいのに北向きにして大丈夫なのか、ということ。稚内は冬に1日36回、北から吹雪が吹く。こういう気象条件のなかでお客さんが安全に北向きの改札から出られるのかが問題だった。これは駅の入り口のドアがちゃんと開くのかなど、繰り返しシミュレーションして解決した。

(稚内駅(赤い建物)の風雪シミュレーション実験の様子。写真左側が北。白い部分が吹き溜まり)〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉
(稚内駅。左側にみえているのが北に向いた改札口。写真奥に向かって線路が南に伸びています)〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉

稚内駅の場合、最北端駅だから北に改札を作りたいという想いがあれば、問題が生まれてもそれらを一つ一つ「理詰め」と「実現するための技術」で解決していけばいいのですよ。

「想い」が大事とのことですが、都市を新しくデザインする際に守りたいもの、大切にしたいものはなんですか?

その都市の文化や風習ですね。新しく建物を作る時も、生活風習が残っている人々のコミュニティを継承するようにデザインしています。例えば、夕張の再建にあたって、住宅を改修する時に、昔の炭鉱住宅はお風呂がない団地が結構多かったので、「皆さんのお家にお風呂つけますよ」となったら、皆喜んで新しい住宅に移ってくると思っていた。

(夕張市での対話集会の様子。地域住民の声を丁寧にひろいあげることが地域デザインでは必須)〈写真提供:北海道大学都市地域デザイン学研究室〉

そしたら「嫌だ」って言われたのですよ。なぜかわからなかった。「なんでそんなこと言うのだろう」って思ったよね。そしたら「前のような共同浴場がいい」って言うのです。そこに住んでた人はおじいちゃんおばあちゃんの一人暮らしが多くてね、週に3回、共同浴場に来て人と会って話すのが楽しみだったらしい。だから「共同浴場を守ってくれ」って言われた。

地域、町それぞれに文化があるのですね。瀬戸口さんにとって理想の都市は?

札幌ですね。緑と生活都市が共生しているから。他にはこんな都市ないと思います。共生という意味では北大が最たる例ですね。北大の建物が排出する二酸化炭素の量と、各地にある北大の研究林が吸収する二酸化炭素の量は同じなのです。我われはゼロエミッションで非常にエコに生活している。こんな大学は他には無い。だから、君たちは「世界の中で一番良い」大学に来ていると思う。北大プライドを大切にして、もっと北大に誇りをもって!!


さぁ、明日掲載の後半はいよいよ研究室の学生さんへのインタビューです。瀬戸口さんが退席した後、研究室の雰囲気と瀬戸口さんについて本音で語っていただきました!

《後編に続く》

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2023.09.05

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