2017年1月31日、北海道大学グローバルファシリティセンター(以下、GFC)が主催する、第4回オープンファシリティシンポジウムが、北海道大学学術交流会館にて開催されました。オープンファシリティ(先端機器・設備の共用化)の現在と未来について、多様な関係者による報告や議論を行うシンポジウムです。
当日は、午前の部と午後の部に分けての、丸一日のプログラムとなり、参加者も全国各地、海外からも含め169名もの人々が集まりました。今回はその第1部の内容を紹介します。
はじめに、網塚浩さん(グローバルファシリティセンター センター長)より開会の辞として、本日の会の趣旨が述べられました。
続いて、渡辺その子さん(文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課課長)による、『新たな共用システムの導入と今後の研究開発基盤政策について』と題した基調講演です。
文部科学省では、オープンファシリティを国全体の科学技術政策の中にしっかり位置づけ、推進体制の構築に取り組んでいます。オープンファシリティは、単に機器の共有をしたら良いというものではなく、大学のマネジメント改革でもあります。北大の取り組みは、自分たちのやりたいこと、ありたい姿が明確で、大学のポリシーに沿ったシステムが構築されている、一番あるべき姿だと思っていると、渡邊さんは強調しました。
今後の課題は、機材と人材の維持です。特に北大の規模の組織では、人材面が重要です。現在3年は技術者の人件費が確保されていますが、その後、その人のキャリアパスが構築されていくためには、大学内での議論とともに、文科省の支援も必要になっていきます。大学と文科省がしっかりと話をして、事業の発展に繋げていっていただきたいと、最後にメッセージを送りました。
次に、『北海道大学における新たな共用システム-導入支援プログラム採択4拠点の整備状況』と題し、GFCが統括としてサポートをしている、文部科学省「先端研究基盤共用促進事業 (新たな共用システム導入支援プログラム)」に採択された4拠点の紹介です。
はじめに、上原広充さん(グローバルファシリティセンター 次世代共用化プロジェクト連携室 URA)から全体の説明があり、そこから個別ユニットの解説がありました。各ユニットの詳細は、こちらをご参照ください。
1.『ファーマサイエンス共用ユニット』(以下、PSOU)
前仲勝実さん(薬学研究院教授)による紹介です。PSOUは、薬学部、創薬科学研究センターがメイン。創薬の上流から臨床までの連携を創り、産学融合ライフイノベーションセンターで産学連携やベンチャーの立ち上げなども行っています。また日本学術振興会の「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」にも採択され、オックスフォード大学と連携して、人材交流も進めています。
2.『ソフトマター機器共用ユニット』(以下、SMOU)
出村誠さん(先端生命科学研究院教授)による紹介です。ソフトマター研究は多様な学問が融合して、新たな学際領域科学を創造しつつあります。SMOUを通じて最先端機器を共用化することで、複合領域研究のスタートアップ支援、産学連携の強化に活用できるよう組織化を進めています。
3.『先端物性共用ユニット』(以下、APPOU)
河本充司さん(理学研究院教授)による紹介です。測定対象が限定される汎用測定でなく、広範囲な測定対象となる先端物性測定の機器の共用です。また、資源等の問題で自分たちでは維持できない他大学の機材、使用頻度が低く眠っている学内の機材などの移設・管理も行っています。
4.『マテリアル分析・構造解析共用ユニット』(以下、MASAOU)
石政勉さん(工学研究院教授)による紹介です。MASAOUの大きな特徴としてはバーチャルな組織を作るというところにあります。現在、機器の高度化、専門家により専門外の人にわかりづらくなっているのですが、バーチャルな組織によってコーディネータを広く配置し、利用しやすくしています。さらに北大は大きいので、一箇所に集約させず、分散しているものを管理することで、地理的にもアクセスしやすくしています。
第1部の最後には、会場の参加者との質疑応答があり、各拠点とGFCとの関わりやサポートの枠組みなど、具体的な運営についての質問が出てきました。それらに対し、様々な立場からの考えや実践が述べられていきました。
第2部は海外からの招待講演、パネルディスカッションなどがありました。一日を通じて、北大のみならず日本のオープンファシリティの可能性を垣間見ることができました。