調査室のお仕事は、発掘から調査報告まで多くが繊細な手作業です。今まさに発掘中の遺跡にお邪魔し、その一端をご紹介します。
【神田あかり・CoSTEP本科生/理学院修士1年】
土の色に目をこらす:発掘作業
建設工事のあるところ、埋蔵文化財調査室の仕事あり。現在は農学部の裏手、温室の建設予定地において発掘作業がおこなわれています。1000年ほど前の村の遺跡で、これまでに竪穴式住居の跡3か所の他、約1000点の遺物が見つかりました。
(奥の方は発掘が終わり、クレーンも入っての建設工事が始まっています)
竪穴式住居の中には後代の土がたまり、周囲と土の質が変わっています。この違いを頼りに、柱やかまどの跡を含めた住居全体を丁寧に掘り出していきます。
発掘の影響を最小限に抑えるため、たどり着いた当時の床面に立つ時はお風呂用マットを敷くのが鉄則。出た遺物はその位置一つ一つを正確に記録していきます。
あますことなく記録する:拓本、接合、実測、仕分け
遺跡から出た土器片や石器などは、調査室に持ち帰ります。室内では10人前後のスタッフでクリーニング、計測、復元などをおこなっています。
(顕微鏡の並ぶ一角。3,4人で分担して仕事を進めます。)
こちらは拓本と呼ばれる作業。土器片の文様を紙に写し取って記録します。文様はその土器の作られた時期の文化を知る手掛かりとなります。この日拓本作業をしていた村上真由美さんは、この作業をはじめて3年目。「まったく経験がありませんでしたが、この3年で上達し、やり直し回数も、ずいぶんと減りました。見たことのない文様が見つかったときや、文様が少なく、特徴を写し取るのが難しい土器片をきれいに写せたときは、嬉しいですね。」
こちらは、ふるいにかけた土から魚の骨や穀物を探す作業です。これらミリ単位の小さな遺物が、当時の食生活や文化を知る貴重な手掛かりになります。顕微鏡をのぞきながら筆とピンセットで、入り込んだ枯れ草や砂粒を、丁寧により分けます。見つけた穀物は1つずつ分けて、次の作業へと渡していきます。残念ながらこの中からは遺物は見つかりませんでした。
休み時間にはみなさんで語らったり、おやつを食べたり、次の作業のためしっかりエネルギーチャージをしていました。
誰でも利用できるよう、記録も資料も公開
他にも、破片を接合して土器の形を復元する、遺物の大きさなどを一つ一つ計測する、スケッチするなど、様々な作業がおこなわれています。こうして作られた報告書には紙媒体で刊行するほか、web上でも公開しています。
(伊藤麻由さんは実測のプロ。遺物の大きさを測り、実物大で手書きします)
(アクセサリーのビーズ一つ一つまで、番号をふって記録します)
室内での修理や整理の作業は、雪で発掘ができなくなる冬、さらに集中しておこなっています。膨大なデータや資料が溜まらずに済むので、北海道の冬に、むしろ助けられているのだとか。
北大の穴場、埋蔵文化財調査室は事前に連絡することで展示室を見学できます。北大の地下から掘り出された遺物を見てロマンを感じてみてはいかがでしょうか。
(にぎやかな女性スタッフに支えられている調査室でした)
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北大埋蔵文化財調査室
場所:北11条西7丁目(北海道大学札幌キャンパス内)中央食堂向い
見学可能日時:平日9:00-17:00(祝日や年末・年始を除く)
見学希望連絡先:hokudaimaibun(a)gmail.com (※(a)をアットマークにしてください)
ホームページ:http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~q16697/maibun/
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イベントのお知らせ
調査室主催のイベント、第12回「人類遺跡トレイルウォーク」が開催されます。
秋の北大を、遺跡を巡って歩いてみませんか。
日時:9月28日(日)13:00~15:00
集合場所:中央食堂前
参加費:無料
9月24日(水)までに、メール、電話又はFAXにてお申し込みください。
詳細は上記ホームページからご覧いただけます。