みなさんは、牛肉をどれくらいの頻度で食べていますか?牛肉を買う時に、何を考慮しますか?
食卓を飾る牛肉をめぐっては、和牛に対する研究をはじめ、アニマルウェルフェアを考慮した畜産、土壌循環など、様々な研究が行われています。ただその前に、現在牛肉がどれくらい食べられているのかを把握することが、今後畜産業界にどのような変化を設計できるかにつながります。清水池義治さん(北海道大学大学院 農学研究院 准教授)は、そんな肉牛をとりまく研究を北海道大学で実施しています。今回の記事では、牛肉で有名な白老町の役場で6月2日に開催された「ビジョンワークショップ白老町」で清水池さんが話題提供した、アンケート調査に基づく研究をご紹介します。
日本における食料自給率の低下を説明する清水池さん
清水池さんが紹介されるアンケート調査は、2025年3月に首都圏の500名に(男女250名ずつ)行った調査です。年齢も18歳から69歳まで、世代収入分布も200万円未満から1400万円以上までを対象に、牛肉の消費に関するアンケートに答えてもらったといいます。
以外と、牛肉はあまり買われていない
牛肉の購入頻度をみると、月に1回以上買う人数は、どの年代や性別でも半数を越えないことが分かりました。その中でも、女性より男性の方が買う頻度は少し高い傾向が見えました。
年代別の特徴も目立ちます。30歳未満の世代は約30%が「買わない」と答えました。若い世代の環境や消費に対する意識を反映したものかと予想されます。また、30~39歳の層でも牛肉の購入率が低いこともわかりました。清水池さんは育児中の家庭では、高級食材の牛肉を購入する頻度が下がると解釈していました。
牛肉を買う時には、とにかく価格が大事
購入時に重視することについては、「価格」をあげる人が圧倒的に多くいました。脂肪や赤みなどを重視する人の比率が高い一方で、「動物福祉」や「放牧」、「生産者の特定」、「有機」などは考えていないと答える人が多いものの、やや重視する一定数の層がいることが分かりました。
牛肉とアニマルウェルフェア(動物福祉)の関係は?
牛肉を購入する際に動物福祉を重視する人は多いとは言えませんが、18~29歳のアンケート結果では有意義な傾向が見られました。この世代は牛肉の購入頻度はあまり高くないものの、購入時には動物福祉の観点を持つ消費パターンが見られ、他の世代と異なる特徴をもっていました。
今回の話題提供は「和牛を素材に農村社会をイノベートする」というタイトルでした。アンケートの紹介後、消費の傾向を踏まえ、グラスフェッド(放牧)和牛の販売や、地域(白老町)に根ざしたグラスフェッド和牛の生産システムの検討を通して、住民が能動的に地方自治に関わる新しいコミュニティを作ることが大事だと語りました。
農業経済学からみられる畜産。その深いお話しを、たまごを軸に話し合われるサイエンス・カフェ札幌があります。会場では清水池さんの話を通して、参加者同士で話し合えるパートも設ける予定です。今どのように思っているのか、今度どのように考えていけるか、みなさんと一緒に考えてみましょう。


「エッグい経済学〜食卓にかけるみんなの思い〜」
日時:2025年6月22日(日) 15:00~16:30(開場:14:30)
場所:紀伊國屋書店札幌本店 1F インナーガーデン(北海道札幌市中央区北5条西5-7 sapporo55 1F)
ゲスト:清水池 義治(北海道大学大学院 農学研究院 准教授)さん
聞き手:朴 炫貞(北海道大学 CoSTEP 特任講師)
参加:事前申し込み不要、参加無料
主催:北海道大学 CoSTEP
協力:北海道大学 COI-NEXT