
2026年3月5日、「アノベンチ」プロジェクトに参加する大学院生4名が、ベンチの制作を手掛ける河野銘木店さんの店舗見学と、ベンチに使用されている木材の加工体験に参加しました。
本記事では、写真を交えつつ、当日の模様をお伝えします。
(執筆:プロジェクト参加メンバー 相馬ゆめ)
アノベンチ・プロジェクトの概要
『アノベンチ』は、2025年11月に前CoSTEP教員・朴炫貞の主導のもと始まったアート・プロジェクトです。
歩行者の安全等のために切り倒された北大構内の木々を、これまでもコーヒー燻製用のチップやデザイナーズ・チェアなどの形で循環させてきた朴さん。北大150周年の節目に、北大構内では新施設の建設やリノベーションが進んでいますが、実はこれが多くの木を伐採し、木材を生み出している側面もあることに気づきました。そこで、新たな150年に向けてそれらの木材を活用し、循環させていこう!ということで始まったアート・プロジェクトが『アノベンチ』です。
そして、北大産の木材を利用した、北大内外の人たちのためのベンチ制作を引き受けてくれたデザイナーの一人が、今回伺った河野銘木店(こうのめいぼくてん)の宮島さんです。
間近で見る木材のおもしろさ
今回の見学では、河野銘木店を実際に訪問し、ベンチ制作に使用す
河野銘木店さんの店舗に到着すると、木の香りが広がっており、多数の木材に出迎えられました。
ひときわ目を引くのが、会社名にもある「銘木」です。銘木とは、外的要因(台風、落雷などの気候現象や、動物・虫による食害)などによる傷や節などが一つもない木材のこと。一つの樹木から一枚取れるか取れないか、というくらい貴重なものだそうです。
伺った日には、屋久杉や春日杉(奈良県・春日大社周辺の杉)から取れた銘木があり、その大きさと希少性に圧倒されました。

次に宮島さんが紹介してくださったのは、北海道で育った木材です。ミズナラやカバ、カエデなど様々な種類の木材が並んでいて、自由に触ることができます。種類ごとに、木目や色味、匂いや手触りまで、それぞれの個性を実感することができました。

宮島さんは、「同じ木でも産地が違えば、生活環境も変わるので、表情が違う。お客さんにも木材を五感で感じて楽しんでもらいたいので、店内では自由に木材に触れることができるようにしている」とおっしゃっていました。
木材はどこから、どこへ?
森林に生えている木々は、どのようにして、誰の手を介して、木材になるのでしょうか。
森林を所有している山主さん、木々を伐採する林業の方、その木々を運ぶ運搬業の方、運ばれてきた丸太を木材として加工する方。そこまで来て、ようやく河野銘木店さんなどが木材の買い付けができるようになると宮島さんから教えていただきました。
そして、テーブルなどの製品を購入するお客さんが、その木材に携わった「生産者」の方々の顔を分かるように、宮島さんは、木材の「サプライチェーン」の全てに携わるようにしているともお話くださいました。
ただ、木材になり、製品づくりに利用される木々は、伐採されたうちのほんの一部なのだそう。多くの木々は、節や傷があるなどの理由で木材としての利用価値が見出されず、細かく砕いてバイオマス発電などに利用されてしまうそうです。
ですが、宮島さんは「節や傷は外的要因などを受けても、木が頑張って成長しようとした証。そうしたものがあっても色んなデザインを考えて、工夫して、ものづくりをしたい」とおっしゃっていました。
いざ、ベンチの加工体験へ!
河野銘木店さんの店舗を一通り見学させていただいたあと、近くにある工房に移動し、製作中のベンチの座面への紙やすりがけ体験をさせていただきました。
ベンチには、北大の札幌研究林に100年以上前から生えていたユリノキが使われています。ユリノキの詳細や、ベンチの制作記はこちらの記事をご覧ください(【レポート】アノベンチ リフレクション・トーク)。
加工体験では、参加した大学院生それぞれが思い思いに、これから多くの人が座る姿を想像しながら、紙やすりでベンチの座面を磨いていきました。ベンチに自分たちの手を加えることで、100年以上も生きてきた木の雄大さを実感することができ、とても貴重な体験になりました。

おわりに
本記事では、「アノベンチ」プロジェクトに参加していただいた河野銘木店さんの店舗を訪れ、そこで伺った木材にまつわるお話や、ものづくりへのこだわり、そしてベンチ加工体験の様子をお伝えしました。
次回の記事では、河野銘木店さんが制作したベンチがどう仕上がったのか、どこに設置されたのかなどについて詳しく紹介します。次回も是非、お楽しみに!