テレビをみていると「本日は〇〇大学の〇〇教授にお越しいただきました」ってよく聞きますよね。ここで登場するような先生の普段のお仕事ってなんなのだろう・・・気になります。私たちは今回、地震の専門家としてテレビ出演を多数されている高橋浩晃さん(北海道大学大学院 理学研究院 附属地震火山研究観測センター 教授)にお話を伺いました。前編では高橋さんの研究の原点となる学生時代から、大学だけでなくメディアや講演会などで活躍する現在に迫ります。
研究者としてテレビに出てみたいと思っている方はもちろん、現時点では進路に悩んでいる高校生・大学生の皆さんにも、将来の選択肢を広げるヒントになるかもしれません。
【赤谷咲良・総合理系1年/ 小島健剛・総合文系1年/佐藤桃佳・経済学部1年/
背戸田壮悟・法学部1年/西川陽斗・理学部1年/福田萌瑛・医学部1年】
地震の専門家として多数テレビに出演する高橋さん。メディア出演とはどのように行われるのでしょうか。
地震発生時、高橋さんはどのように対応されますか。
メディア側から電話が来て、体と時間が空いていれば出ます。北海道周辺で起こる地震については基礎的な知識があるので、それに基づいて話しています。発生したひとつひとつの地震がどういうものだったかは、即時的に出るさまざまなデータを基にコメントしていきます。

写真は以下から引用 引用元 北海道放送株式会社 HBC, 公開日 2025年3月24日, 【ひとホリ】日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に備え…被災する前に復興のコンセプトを明確化「事前復興計画」むかわ町が策定、専門家「速やかに復興に移れる可能性」(3月24日放送), https://www.hbc.co.jp/tv/doki/article.html?id=13749, 最終閲覧日2026年10月11日
テレビ出演の際、分かりやすく伝えるために意識されていることはありますか。
やはり、端的に話すことが大事だと思います。あとは専門用語を極力使わないようにします。メディア向けの場合には、厳密性にこだわりすぎると、言いたいことが伝わらない場合が非常に多いんです。だから、ある程度、厳密性を犠牲にしても、防災上重要なことを伝えられるようにお話していますね。
第一線で活躍する高橋さん。いつから地震研究の道に進むことを考えていたのでしょうか。そのキャリアの出発点について、学生時代のお話を伺いました。
地震研究に興味を持ったきっかけはありますか?
1983年に伊豆諸島の三宅島、1986年に伊豆大島が噴火して、 当時テレビではずっと噴火のニュースが流れていました。僕は茨城県出身なので身近に火山はなかったのですが、その2つの噴火を見て、「なかなか火山面白いな」と思ったのがきっかけですね。当時高校生で、1988年の北海道十勝岳の噴火もあり、火山の噴火や地震予知に興味を持ちました。
地震研究をやりたくて北海道大学を選んだということですか。
そうですね。
当時、地震・火山の観測系を研究している大学は数があまりなくて、北大はその中の貴重な1つでした。
入学した当初は研究者になりたい、といった明確なキャリアパスはありませんでした。
当時も、現在の総合入試と同じように、入学後に成績順で移行する学部・学科を振り分ける方式があって、私もそれで入学したんです。だから一年生の間に、ある程度勉強しておかないと、自分の好きな学科に行けなくなるので、それは気にしていましたね。
学生に向けてメッセージをお願いします。
勉強と娯楽のバランスをうまく保って安全に過ごしてほしいです。私のように研究者になる人もいますが、皆さんいろんな職業に就かれると思うので、大学生のうちはとにかく大学生活を存分に楽しんでもらえればいいと思います。どんな職業でも社会的な役割や責任はあり、そのベースとなる基礎的な知識が極めて重要になってきます。基礎的な知識を大学で学び、将来、社会に出た時に、その知識を応用していってほしいです。

地震等の研究のお仕事は趣味に近いですか?それとも趣味と仕事は全く別ですか?
趣味に近い感じですね。
趣味というか、むしろ今はもう生活の大部分が研究になっています。今は大学にいなくても、比較的どんな場所でも仕事できるので、フレキシブルにやっています。
では何か研究とは全く関係ない趣味みたいなものは。
ほとんどないです。すいません(笑)。
先生の研究の中では、フィールドワークが多い印象がありました。フィールドワークは、ものすごく体力を使うのではないかと思うのですが。
実は皆さんぐらいの年齢なら大丈夫です。学生の皆さんは北海道の火山ぐらいならヒョイヒョイって登りますから。体力的な部分はそんなに心配いらないと思います。私もそんなに鍛えているわけではないし、うちの観測センターにいる学生さんもそんなに強者が揃っているというわけではないです。
一方で、体力を活かせる分野も・・・
我々は地球物理という物理的な手法に基づいて研究をするのですが、実はもう一つ、地質的・地学的な部分に基づいて研究をする分野もあります。この分野は本当にフィールドワークが多く、沢をずっと詰めていくとか、いわゆる登山道もないところに分け入っていくとか。そうした研究に携わる人はやっぱり強者が多かったですね。北大の山岳部やワンダーフォーゲル部、山スキー部の山好きな人たちが、能力を生かして山奥まで分け入って、さまざまな調査をしてきたことで、北海道の火山の噴火の歴史などが明らかになったという側面はありますね。そういった地質的な調査をやりたいなら、体力も技術も必要です。
一方、我々のように観測機材を持って行って設置する、といった研究をする上では、特に体力面はあまり気にしなくても大丈夫かなと思います。ただ、知識の面では、大学の時にしていた山登りの経験が結構役に立ちました。

高橋さんの詳しい研究内容については後編に記載しているのでぜひご覧ください。
ここまで高橋さんの研究者としての姿を見てきました。やはり私たちにとって、地震は怖いものです。ここで、専門家である先生に防災についても伺いました。
地震を専門とする研究者として、すごく地震を怖がっている小さな子どもに、どう声をかけますか?
地震は怖いものなので、ちゃんと防災対策をすることが大事だと伝えます。小学生ぐらいのうちに、きちんと防災対策を教えておくのが非常に重要です。 特に義務教育で、風水害を含めて、きちんと体系的に、自分の身は自分で守れるように教えておいた方がいいと思います。
地震は研究で突き詰めていっても怖いものだから、やはり対策をするのが大切だということですね。
そうです。特に日本は、どこに住んでいても地震で被災する可能性は必ずあるので、きちんとリスクに備えた上で、安心して生活ができたらいいと私は思っています。 災害で、人生がおかしくなるというのが一番嫌ですから。
日本に住むうえで地震からは避けられない。自己を守るための最低限の防災を学ぶ必要がありますね。高橋さんは講演会など多数の社会貢献活動を通して、たくさんの人に防災を広めています。今後の展望について伺いました。
社会貢献活動を通してどんなことを伝えていきたいですか。
リスクコミュニケーション*が非常に重要だと考えています。防災情報は、基本的に気象庁が情報を出して、メディアが伝え、それを住民が受け取って行動するという流れで届けられることが多いです。今は SNS がありますが、地震や津波が起こった場合には、テレビ系のメディアを見る人がかなり多いです。そのため、特に防災分野では、既存のオールドメディアの役割がまだそれなりにあり、テレビ系メディアとの連携を強めていくことは非常に重要だろうと思っています。限られた時間の中でメディアが効率的に情報を伝えていくことが非常に重要です。大人は基本的に、日頃から十分に防災に取り組んでいないので、災害後に情報が出たときが勝負です。そのときにどのように防災情報を届けられるかがカギになります。
*リスクコミュニケーション:地域の行政、住民や事業者が情報を共有し、リスクに関するコミュニケーションを行うこと
(経済産業省, 「リスクコミュニケーション」, https://www.google.com/url?q=https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/risk-com/r_what.html&sa=D&source=docs&ust=1784161924501148&usg=AOvVaw23e5C58BH2Da29IQfB5yMA, 最終閲覧日2026年7月16日)
編集後記
今回の記事では北海道の地震研究を代表する高橋さんにお話を伺ってきました。「研究が防災という社会貢献に直結する」というのは、より研究の意義ややりがいを実感することができそうです。
実は私、著者の赤谷も高校時代は山岳部だったのですが、体力があっても研究や調査のたびに山登りって大変なんじゃないか、、と思いました。(笑) 熱意があるからこそできる研究だということを改めて感じます。研究というと、研究室で実験したり、椅子に座ってパソコンで作業したり、ということばかりを想像していましたが、高橋さんのようにさまざまな場所でアクティブに活動する先生もいるという気づきもありました。
今でいう総合理系から、現在はさまざまな災害の現場へ赴き、テレビや講演会で活躍する研究者・教育者になった高橋さん。私もいつか、テレビで、全国で、もしかすると世界を飛び回って働いている可能性を想像してしまいました!私たちと同じく、この記事を読んでくださった学生の皆さんも少しだけ将来が広がったような気がしませんか?
次の記事では高橋さんの研究内容について詳しく伺っています。地震研究、火山研究とは具体的にどんな研究をしているのか?ぜひご覧ください。