全国的に記録的な猛暑が続くこのごろ。北海道大学函館キャンパスより、暑中お見舞い申し上げます。
夏の函館名物といえば、なんといっても「イカ」。イカは水産資源としても観光資源としても、函館にとって重要な存在です。食べておいしく、見て涼しく、そして知って驚きのイカの研究が、北海道大学水産科学院海洋生物科学科資源生物学講座で行われています。
遊泳するヤリイカ(函館市国際水産・海洋総合センター大水槽で撮影)
写真提供:水産学部海洋生物科学科資源生物学講座 時岡駿さん(以下同)
函館の海水を使った大水槽でイカの産卵実験に成功
2014年に設立された函館市国際水産・海洋総合センターでは、30万リットル入る大水槽を使い、北海道大学大学院水産科学院特任教授・桜井泰憲さんの研究室によるイカの飼育・産卵実験が大きな成果を上げています。
この大水槽は、厚さ22cmもあるアクリル板でできていて、函館港口から海水を直接取水することができ、函館の海を再現した環境の下、期間を区切ってさまざまな研究が行われています。
産卵実験に成功したのは、ヤリイカ、スルメイカ、ジンドウイカ。ジンドウイカはこの春、国内ではじめて成功し、孵化までのようすを市民とともに観察できるよう、エントランスホールの水槽に卵塊が展示されていました。
ヤリイカの神秘の生態に迫る
イカの産卵、孵化のようすを見てみたい!と、北海道大学函館キャンパスに桜井研究室を訪ねてみました。
案内してくださったのは、水産学部海洋生物科学科4年の時岡駿さん。時岡さんは、大学院生の松井萌さんとともに、ジンドウイカの産卵実験に成功したことで新聞にも取り上げられました。
北海道大学水産学部海洋生物科学科の時岡駿さん。「撮影させてください」とお願いしたら、
さっと手元にイカのフィギュアを取り出すあたり、相当なイカ愛を感じました。研究を進める大きな力ですね!
ヤリイカの卵塊
孵化直前のヤリイカの卵。黒い点が眼。
訪問当日は、水槽内での実験は行われていなかったのですが、ヤリイカの交尾、産み付けらた卵、そして孵化直後のかわいいヤリイカの「赤ちゃん」の写真を見せていただきました。
交接するヤリイカを水槽内で撮影した貴重な写真です。
孵化したばかりのヤリイカの赤ちゃん! あし(腕?)はまだ2本しかありません。
学術的にも産業的にも大きな期待
ジンドウイカの水槽内での孵化に成功するかどうかを待つ一方、桜井さんとインドからの留学生パンディー・プニータさんはスルメイカの「赤ちゃん=幼生」を人工ふ化後10日間生存させることに成功し、これも新聞各紙に取り上げられました。
こうした研究は、イカの生活史や資源としてのイカの個体数変動の解明につながるものとして、学術的にも産業的にも大きな期待をもたれています。
桜井さんのイカに関する近著が間もなく発刊されます(2015年8月下旬刊行予定)。
イカの研究にこれからも注目していきましょう!
関連リンク
北海道大学水産学部海洋生物科学科資源生物学講座
:http://www2.fish.hokudai.ac.jp/modules/article/content0163.html
函館市国際水産・海洋総合センター
:http://center.marine-hakodate.jp/
(函館市国際水産・海洋総合センターは、産学官が連携してマリンサイエンス分野で世界をリードする研究成果や革新技術を生み出す狙いから設立されました。入居型貸研究施設として、学術研究機関や民間企業が入居するほか、隣接する岸壁には調査研究船が接岸でき、函館港から取水した海水を使った実験水槽や、市民が気軽に見学できるホールや展望室も備えています。)