国際連盟の事務次長を務め、『武士道』を著した新渡戸稲造。北海道大学の前身である札幌農学校の出身です。新渡戸が国際舞台で活躍した頃から100年近くが経つ現代でも、たくさんの北大生が世界に羽ばたいています。
今回は、北海道大学国際連携機構が中心となって実施している「短期留学スペシャルプログラム」の後編です(前編はこちら)。短期留学プログラムに同行取材を行い、学生たちの授業の風景や、台北での生活の様子をご紹介します。学生たちはどのようなことを感じ取り、学んできたのでしょうか。
【金澤 幸生・CoSTEP本科生/社会人】
(台北市立萬芳病院 外観)
現地の病院で学ぶ、台湾の医療
いいね!Hokudai取材班は、短期留学プログラム2日目の様子を取材しました。初日に台北医学大学での講義やウェルカムパーティで交流を深めた一行は2日目、台北市立萬芳病院(Wang Fang Hospital)へと向かいました。
萬芳病院は、台北市政府が台北医学大学に経営を委託している病院で、内科や外科のみならず、中医学も組織されている総合病院です。今回、「台湾の医療を知りたい」という学生の声に応える形で、この病院見学が実現しました。
(過去の貴重な写真資料も交えながら、学生に講義をされる陳先生)
院内見学に際して、まず台北医学大学の衛生政策・ヘルスケア研究センター陳再晉(Chen Tzay-Jinn)教授から講義をいただきました。台湾の医療や公衆衛生の歴史、そして台湾における医療制度について、英語でお話いただきました。地方の医療の歴史にも触れつつ、スマートフォンのアプリを用いた先進的な公衆衛生施策まで話が広がりました。そして、公衆衛生は法律や行政機構、医療経営とも関わる分野であることが紹介され、学生の視野を拡げるきっかけとなった講義でした。また、台湾でも日本と同様、少子高齢化の問題や財政における医療費の圧迫といった問題に直面していることも、学生の皆さんの印象に残ったようです。
先生は最後に、どのような仕事に携わろうと、医療の現場では様々な困難があるとした上で、「挑戦は、解決への機会でもある(A challenge is an opportunity for breakthrough.)。私の世代よりも、あなたの世代が公衆衛生を、医療を進歩させてほしい」とメッセージを残し、講義を締めくくりました。
次に、病院内を見学し、各科についての説明を受けました。中でも日本の病院ではあまり馴染みがない中医学は、学生たちに新鮮に映ったようです。また、薬剤部の見学では、実際に院内の製薬の在庫管理の状況や、診断から処方までの流れなどを見学することができました。日本でも薬剤部の様子を見たことがなかった学生も多く、台湾の薬剤師たちが仕事をする光景は、非常に印象深い経験となったようです。
台北での生活
さて、そんな学生たちの台北での生活を、少し覗いてみたいと思います。病院見学を終え、宿泊場所におじゃましました。入ってみると、そこは若者の旅の象徴、ドミトリー(相部屋)式の宿舎でした。個人のスペースは、ベッド1つ分しかありません。
しかし、学生の皆さんはそんな環境での生活をたくましく楽しんでいたようです。今回の短期留学プログラムの1人、佐治銀河さん(医学部医学科2年)は「海外で、病院に実際に行けたり、医療の講義を受けられたりしたのは貴重」とプログラムで得た機会を語ってくれました。
また、学生たちは大学や病院での学習に限らず、お休みの日を利用して、台湾の様々な観光地に赴いたり、学習の延長で漢方薬局めぐりを自主的に計画したりするなど、積極的に活動していました。特に、漢方薬局めぐりを通じて、慢性疾患に対する中医学の効用など、自らが体感しながら、日本では学びづらい視点を得ていました。
北大生の大志はこれからがスタートだ
海外の大学で学ぶことを初めて経験した北大生も多かった今回のプログラム。自らの英語力の不足や、伝えたいことを伝えられないもどかしさ、文化の違いに戸惑った学生もいたかもしれません。帰国後に実施された報告会では、先生方から、「留学に対して様々な目的があり、行くだけでも得られるものは多いと思うが、より多くのことを吸収したければ、行く前にしっかり準備をして臨むことが大切」という激励もありました。
しかし、世界へ羽ばたく機会はこれで終わりではありません。この留学をきっかけとして、より長期の留学の挑戦する北大生や、今回行った台湾とは別の地域に行く北大生、そして、留学に限らず、様々な形で世界に羽ばたく北大生が出てくることを願ってやみません。そう、この短期留学プログラムは、帰国してからが本当にスタートなのです。北大生よ、大志を抱け!
(台北での集合写真)