北大札幌キャンパスを彩る植物のイメージは、ハルニレの巨木と芝生、ポプラ並木と農場の作物でしょうか。イチョウ並木の黄葉も、知名度はまだ全国区とまでは言えませんが、すっかり定着したようです。しかしもうひとつ、おすすめしたいのが秋になると壁や木の幹を真っ赤に染める「ツタ」です。まだ盛夏も迎える前からずいぶん気が早いのですが、そんなツタについてお伝えします。
【林忠⼀・北⽅⽣物圏フィールド科学センター/いいね!Hokudai特派員】
(北方生物圏フィールド科学センター研究棟は農学部の裏側に位置していて、あまり知られてはいません)
札幌キャンパス内にあるツタParthenocissus tricuspidataは、いままでも何度か「いいね!hokudai」で取り上げていますが、これらは学生や職員でも普段行かない場所だったりします。しかし、ここ北方生物圏フィールド科学センターの研究棟はポプラ並木に近く、メインストリートの喧噪から離れた所にあり、開けた場所のため鑑賞しやすいロケーションです。
(2006年秋頃は、ツタはまだ壁面の3分の1にも達していませんでした)
ツタはブドウ科の植物で、今時期つぼみを着け、花期を迎えます。その後秋に濃紫色の可愛い実をつけますが、この実を狙って鳥たちが集まってきます。またスズメなどの小型の鳥はツタに葉が着いているときはをねぐらとして利用しています。
(葉の陰には蕾がいっぱい、これから花を咲かせます)
(秋になり地面に落ちた実)
(壁面につかまって一生懸命ツタの実を食べているカラス)
(葉を揺らしているのは風だけではありません、実をついばむスズメたちがわかりますか?)
鳥に食べられた実は、鳥のふんに混じって運ばれ、あちこちで発芽します。そして樹木や建物によじ登り、じわじわとその勢力を伸ばしていきます。建物を管理する者からすると湿気を呼び、虫を呼び寄せるので駆除したいところではないでしょうか。
(ほぼふさがれた換気口と侵略されつつある窓。放っておくと窓が開かなくなることも)
研究棟では2年に一度業者に窓拭きをお願いしています。その時にハサミで窓辺のツタをトリミングしてもらっていますが、こうしたツタとの攻防はこれからも続きます。いずれ管理が追いつかなければ「切ってしまえ」となるかもしれません。
(窓を開けると、忍び寄るツタの脅威がすぐそこに)
人工物との間で織りなす自然の景観は、それなりにお金や人の手間をかけないと維持できません。今はこの景観を守り育てるために、少々の不便と付き合いながらツタと共存しています。秋になったら燃えるような研究棟を是非ご覧ください。
—-ツタを紹介しているこちらの記事もご覧ください—-
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