2020年7月中旬、北大北部食堂では向かい合っての食事が難しくなりました。感染症対策でテーブル席は仕切板によってカウンター席のようになっています。また、利用も短時間で済ませるよう求められます。1学期は授業が主にオンラインで行われていたこともあり食堂内は閑散としていました。そして現在、一部の科目での対面授業が始まりました。その影響もあってか食堂に賑わいが戻りつつあります。そんな食堂で、とある素敵な4人の水産学部生に出会いました。
【杉浦みのり・CoSTEP本科生 環境科学院修士2年/寺本えりか・CoSTEP本科生 文学部3年】
今年、北大生協食堂では時間を短縮しながらも営業を継続していました。食に関する需要に応え続けるためです。利用者は入るときの消毒に始まり、間隔をあけて並ぶこと、お箸やスプーンは一つ一つ受け渡し制で、支払いがスムーズに済むようキャッシュレスに協力するといったことが感染症対策としてお願いされています。
(座席は間隔を空け、パーテーションが置かれている北部食堂)
10月12日(月)に札幌キャンパスの北部食堂を訪ねると、つい先週の金曜に来たときよりも活気づいているように思えました。2学期が始まり、感染防止対策を講じた対面授業も増えてきたことで、キャンパスに人が戻ってきたのでしょうか。そんな中、混み合うには少し早い12時前に、食事をすでに終えた学生4人組が居ました。
(栗原慧太さん(左手前)、中村脩さん(左奥)、多形恵美さん(右奥)、北村もあなさん(右手前))
水産学部2年生の彼女たちは、今年度初の対面授業の説明会でついさっき出会ったみたいです。同じ科目の履修生同士で集まることも今までは無かったそう。彼女たちに1学期を終えたこと対する思いを聞いてみました。
北村さんは実家へ帰省していた最中に緊急事態宣言が発令されたことで、しばらく札幌に帰って来ることを控えていたとのことです。
北村さん:1学期は実家で授業を受けて、札幌には夏休みに実習のために帰ってきて、いまやっと直接会えたって感じです。帰るにも帰れずにどうしようって言ってたらもう6ヶ月くらい経ってました。
それでも帰省の期間をポジティブに捉えていた様子です。
北村さん:一人暮らしになってこれから就職したりと、家族と過ごす時間がほんとは無かったはずなのに、こんな長い間家族と一緒にいられたから。それは今後も無いことだと思うから貴重な体験だったのかなって思います。
1学期の完全オンライン授業を振り返ってそれぞれ大変だったことを尋ねました。
中村さん:集中はあまりできなかったけど、逆に僕的にはオンラインですごい良かったかなって思っています。家がちょっと遠方にあるので毎回毎回学校に来るのがちょっと面倒くさかったので。
多形さん:私は友達ができないのがつらいです。
北村さん:課題をやるときに人と会話をすることによって新しい発見とかあると思うので、そういうのが無いことはちょっとしんどいなと思います。たとえばZOOMでしゃべる機会があったとしても、今後その人と会ったときにまた会話ができるかというと、一からはじめないといけないのかなってちょっとさみしいと思います。
栗原さん:特に学科とかで全然知り合いがいなかったりして、まあちょっとやりにくいところはありますね。集中しにくいってのもありますけど、学校に居てもそれはそれで疲れるので、疲れが無いという部分ではやりやすかったかな。授業資料を手元にずっと持っておけるのはすごく良い点だと思います。
去年の学校生活を知っているからこそ、オンライン授業の良い点と学生間の交流の難しさを気にしているようでした。また、今年の1年生たちについて尋ねたところ、多形さんをはじめとして自分たちと同じく友達ができないこと、さらに勉強が難しくても誰にも聞けないことを心配していました。
北村さん:学生会館で1年生が入ってきたので、履修の相談とか受けたり。やっぱり、会って話すと全然違うと思うのでそこの関係を大切にしています。絶対さみしいと思うので。
中村さん:同じ高校だった人たちが1年生で入ってきているんですけど、みんな授業課題の提出方法がまず分からないし、ほんとに僕たちだったら全然何気なくできたことがなにも分からなくて、しかもそれを聞ける人も居ないし、周りもみんな分からない。やっぱり対面でしか分からないこともあるんだな、と話を聞いててかわいそうだと思いました。
水産学部の3年目には札幌キャンパスから函館キャンパスに移行し、より専門的な科目を学びます。彼女たちも、来年の春には新天地で一からスタートすることを意識していました。
今回お話をしていて他の人のことを思い、どんな状況でも前向きに捉えている様子がとても素敵なことだと思いました。今年は未曾有の事態によって簡単にできていたことができなくなる状況です。その中で困っているとふと彼女たちのような思いやりのある行動に助けられます。
(初めての利用する人の為に職員たちが入り口に待機しています)
みんなが模索しながらの生活を余儀なくされました。だからこそ、今までできていたことを一度見つめなおす機会にもなっているのかもしれません。大学からの学生への支援、先輩後輩や友人間、さらには知らない誰かの為を思うような細やかな気遣いが多くあることに気が付きます。そしてそういう積み重ねによって「対面でしか分からないこと」も少しずつ分かりやすくなっていければ良いと思いました。
この度、快くインタビューに応じて下さいました北村さん、栗原さん、多形さん、中村さんありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。