北海道にしかいない固有種・オオルリオサムシは、本州のオサムシとは違い、なぜか緑や青、赤の金属光沢を持っています。見る角度によって光を乱反射して色合いが複雑に変化し、その美しさが多くの昆虫好きを魅了してきました。オオルリオサムシは後翅が退化しているため、大きな川を飛んで渡ることができず、狭いエリアで様々な亜種に分かれて進化してきたことで知られています。
学生サークル・北海道大学昆虫研究会(通称:虫研)は、去年と今年でオオルリオサムシの全8亜種(分類方法によって諸説有)の採集に成功したそうです。道南や日高、ニセコなど地域によってその色彩は全く違っていて、まるで宝石のようです。そもそも非常に近いエリアでも、赤、緑、青の光沢やその組み合わせが違っていることもあり、なぜ北海道のオサムシだけがこんなに美しいのかはよく分かっていません。
虫研に所属する農学部3年の小島裕成(こじま ゆうせい)さんに詳しくお話を伺いました。
部員20名程度の中でも、オオルリオサムシの採集に取り組んだのは4人ほどのメンバー。今年は4月下旬から約2ヶ月かけて20回ほどの遠征を行い、昨年と合わせて全8亜種を集めました。小島さんはニセコの山に生息するブルーの体色をもつ亜種に魅せられ、一人で7回も登ったこともあったそうです。
採集方法は透明のプラスチックコップを土の中に埋める「ピットフォールトラップ」という方法です。100個から200個を埋めて翌週回収に行き、やっと10匹とれるくらい。道南地域ではなかなか思うように捕まらず、300個埋めて1週間で1匹とれるかどうかということもあったとか。シーズンのはじめには4000個ものコップを買うそうですが、それでも途中で足りなくなるほどといいます。
小島さんはオオルリオサムシに取り組んで3年目。北海道のオサムシだけがなぜか美しく、色とりどりの光を放つことを図鑑で知って、北大に入学したという筋金入りの昆虫少年です。
飼育に挑戦したこともあったそうですが、主食であるカタツムリを捕まえるのが大変で育てるのは非常に難しいそうです。地上を徘徊して、カタツムリを中心にミミズや蝶の幼虫を捕食するというオオルリオサムシ。夜行性であるにも関わらず、なぜこのような美しい色をしているのか、そして地域によってなぜ色合いが違うのか、謎は尽きないと小島さんは話します。
今後は北大農学部で進化生物学の研究室に所属し、昆虫の研究をさらに深めていくという小島さん。アマミノコギリクワガタのような迫力のある昆虫も大好きなので、何を研究しようか今からわくわくしているとのことです。北大虫研も冬に入るとしばらく「冬眠」ですが、虫への好奇心に満ち溢れたお話を聞いて、春が待ち遠しくなりました。