関西空港から白浜までJR特急で2時間、レンタカーに乗り換え、周参見(すさみ)から山に入って、研究林の庁舎がある平井集落まで2時間弱です。3月も末でしたから、さすがに海辺の白浜では桜がほぼ満開、でも標高200メートルの平井にくると、まだ咲き始めたばかりです。
(研究林近くの桜の名所、七川ダム湖畔)
研究林長の揚妻直樹(あげつま なおき)さんに話をうかがいます。
なぜ和歌山に、北大の研究林があるのですか
東大や京大、九大の演習林が北海道にあるのと同じで、別に驚くようなことではないと思います。
北海道の林業はエゾマツ、トドマツ、カラマツなどが中心です。でも本州での林業は、スギやヒノキが中心ですし、北海道では見られない暖帯林も広がっています。そこで、多様な樹林をフィールドに持つことで教育や研究を充実させようと、本州に森林を求めたのです。
北大は ―― 1920年代のことですから、北海道帝国大学ですが ――、全国知事会に働きかけました。すると和歌山県が名乗りをあげ、いくつかの候補地を示してくれました。その中から、地元の意向や管理のし易さなどを勘案して今のところを選び、1925年にオープンしたのです。
地元にもメリットがあったのですか
地区の方から聞いたのですが、地元に雇用が生まれることへの期待があったようです。
森林を教育研究のフィールドとして維持していくには、森林やインフラを管理していかなければなりません。台風が来て、橋が流れたり林道が壊れたりすれば、それらを修復するという土木工事もあります。
(研究林にある重機は、林業作業のほか、土木工事にも使います。より大きな重機が必要なときはレンタルすることもあります。オペレーターは資格を持った職員が務めます。)
多いときは、20名以上の人を、地元で雇用したそうです。今も、9人の地元の方が非正規職員として働いています。
おかげで、工事に必要な材料さえ購入できれば、ある程度の修繕ならすぐにとりかかることができます。2年前に大きな台風が紀伊半島を襲ったとき、和歌山県内にある他の大学の研究林は、被害を受け、長いあいだ閉鎖したままになっていました。でも北大の研究林では、多くの被害を受けたものの早々に応急修理を行ない、数日後には実習の受け入れを開始できました。
(記念撮影に集まってくれた、職員の皆さん(全員ではありません))
広さはどのくらいですか
研究林の面積は4.3平方キロメートルです。北大札幌キャンパスの面積が1.8平方キロメートルほどですから、その約2.5倍ですね。
植林したスギ・ヒノキが全体の3/4 を占め、残りは照葉樹林です。
年間の平均気温は15度ほど。雪も少し降りますが、しっかり積もるということはないです。夏は蒸し暑く35度ほどにもなります。
庁舎から車で10分ほど登ったところに研究林の入口があり、最も高い所で840メートル、平均斜度が30度あまりと急峻な地形です。ですから、山の上のほうにアクセスしやすいよう、モノレールを4路線、設置しています。ミカン農家などが集荷作業に使う山林軌道の、乗用タイプのものです。
(揚妻さんも、モノレールメーカーの主催する講習を受け、「免許証」を持っています。)
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