FSC臼尻水産実験所と聞いて場所がすぐに分かる人はそう多くは居ないかもしれない。ここは函館駅から北東方面の山を越えて1時間、噴火湾に面した小さな漁港の先の弁天岬にある。周辺海域は千島寒流と津軽暖流が季節的に入れ替わり、そこにすむ生物種も変わる。そのため、シュノーケリングやスキューバダイビングなどで豊富な種数の生物を観察できる。
ある日の実験所で磯の撮影をしていると、何やら金属音やガスの漏れる音。近づけば数人の男たちがアクアラングの準備をしている。互いにドライスーツのファスナーを閉めたり、ネックアジャスターの装着を手伝ったり。海中調査に向かう場に遭遇したようだ。
その様子を見て思い出したのは、50年ほど前、子ども時代に遊んだ『宇宙かるた』。「着るのも脱ぐのもたいへんな宇宙服」という札だ。空気のない世界での活動は、宇宙も水中も大変さは変わらない。やはりこうした空間での活動はそれなりのセンスが必要だろう。知らんけど。
ちなみにFSCと聞いてピンと来たセンスのよいあなた。そう、FSCとはField Science Center for Northern Biosphere, Hokkaido University、北方生物圏フィールド科学センターの略称である。
【林忠⼀・北⽅⽣物圏フィールド科学センター/いいね!Hokudai特派員】