札幌から60km。ふらっと訪れても深い森に出会える、苫小牧研究林。1904年、苫小牧演習林としてスタートし、さまざまな研究のフィールドとして活用されてきました。
2回の火山噴火によって火山礫が多い地質は、水はけが良い一方で木がよく倒れる特徴があります。科学的データが100年以上蓄積されている苫小牧研究林は、市民の憩いの場としても愛されている存在です。その森を、より深く楽しめる空間である、森林資料館と森林記念館を、「札幌の木、北海道の椅子展」を北大とコラボして進めた札幌の木工家さんたちと苫小牧研究林の研究者が一緒に訪ねました。
森の生態を身近に感じる、森林資料館
資料館に入ると、1階には木の標本や動物・鳥類・昆虫の剥製が並びます。研究林のジオラマが広がる後ろには、樹齢が300年を超える樹種がずらりと並びます。その厚みと綺麗な樹皮に、圧倒されます。クリエイターのみなさんからは、ここまで大きな丸太をみるのは珍しく、普段扱っている樹種の異なる姿を体験できて楽しいという声が上がりました。
また、動物の剥製も、外来種の分類や、同じ種のさまざまな剥製がリアルに展示されています。実際毛皮などに触れるコーナーもあり、クマの毛皮が意外とふわふわで気持ちいいことが分かりました。時が止まっているように見える動物の姿を見ながら、この動物たちに見える森の姿を想像するようになりました。
2階に上ると、木材の標本が並びます。普段木材を扱っている木工家/クリエイターのみなさんの目が光っていました。ただ、広い空間の壁が全て異なる樹種の標本が並ぶことをみて、道内でもここまでの標本を目にすることはないと、驚きました。
木工家のみなさんで盛り上がったのは、「ローソンヒノキ」。ベイヒ(米檜、米桧)とも呼ばれるこの樹種の、コンビニでお馴染みの名前で聞いた時、誰も聞いたことのない名前ということで話題になりました。柱も全て異なる樹種でできた2階の展示室では、樹種の模様や色味、手触りまで、存分に楽しむことができました。
苫小牧市内唯一の国登録有形文化財、森林記念館
資料館から歩いて1分ほどの、森林記念館。資料館とはまた雰囲気の異なる佇まいのある、吹き抜けが気持ち良い空間が広がります。
かつで演習林だったころに使われていた森を管理するための道具や、古い実験道具や顕微鏡、写真資料まで、森と人々の関わりが見える資料が展示されています。時間が重なった一つ一つの品を見ていると、森の長い時間軸と、人間の時間軸について考えさせられます。
より深く楽しむために
苫小牧研究林に初めて訪れた木工家のみなさんは、口を揃えて森の深さと、資料の大切さについて語っていました。ものづくりのためにも、遊びのためにも、学びのためにも、研究林の存在やその中の資料館/記念館の役割は大きいことも、実感したようです。現在は資料館と記念館ともに、月1回しか公開できていません。みなさんに研究林のことや、森の生態についてより深く楽しんでいただくため、現在クラウドファンディングが行われています。『ゴールデンカムイ』の野田サトルさんも、イラストで応援メッセージを寄せてくれました。休日にこの資料館と記念館に訪ねられるよう、みなさんこちらのリンクもぜひ覗いてみてください。これから、新たな森の使い方が始まるかもしれません。