北大おかき「海洋深層水使用 あおさ味」が3月5日より販売されています。この海洋深層水はおしょろ丸Ⅴ世が汲み上げたものを使用しており、「おしょろ丸カレー」に続くふたつ目の商品です。研究を伝える媒体としての商品化、おしょろ丸Ⅴ世が汲み上げた貴重な海洋深層水使用を実現した水産学部ならではの技術について、都木靖彰さん(水産学部長)にお話を伺いました。
おかきが生まれた経緯について教えてください
実は、最初からおかきとして商品化が決まっていたわけではありません。海洋深層水を使った商品化を進める上で当初、塩を作ろうとしていました。しかし、塩を作るためには多くの費用がかかるので断念したという経緯があります。海洋深層水は細菌がいない非常にきれいな海水です。そこで、そのまま塩味として使うことになりました。そのひとつ目の商品が2019年に発売したおしょろ丸カレーで、この北大おかきはふたつ目です。既に北大おかき(醤油バター味、焼きとうきび味)が発売されていたので、それに続く味として海洋深層水を使用した北大おかきを企画することになりました。
しかし、試作段階で「塩味だと他の既存のおかきとあまり変わらないのでは」という意見もあり、水産学部らしさが出てくる「あおさ」を商品化することとなりました。結果として、あおさが味としてのインパクトになったと思います。
カレーやおかきといった商品をつくるのはなぜでしょう?
商品化を行う理由は、北大を多くの人に知ってもらうためです。研究者だけでなく、一般の方々にも研究を知ってもらう活動でもあり、大きな意味での広報活動と言っても良いでしょう。研究やその成果を商品化に結びつけることで、研究の説明をするきっかけにもなります。商品が美味しいだけでなく、研究そのものを知ってもらう入り口になることを期待しています。
商品の特徴である海洋深層水について教えてください。
この商品には、水産学部附属練習船「おしょろ丸Ⅴ世」が採水した海洋深層水が使用されています。実はこの海洋深層水は、とても貴重なものなのです。定義では海洋深層水は「水深200メートルより深いところの海水」を意味しますが、おしょろ丸Ⅴ世が採水しているのはそれよりもずっと深い2,000から3,000メートルであり、とても珍しい海洋深層水を使っているということが言えます。
採水方法も独特です。一般的に海洋深層水は陸上の施設から取水管を海底に敷設して採水しますが、私たちは船舶から採水しています。このLASBOS(Learning and Study by Balance de Ocean Systemの略で、海と生物を学ぶオンライン教材がカード化したもの)カードをみてください。CTD(Conductivity-Temperature-Depth profiler)採水システムという、海洋観測でよく使われる機械です。CTDでは、船からケーブルを伸ばし、測器を海中に降下させることで、水温、塩分、水深の3つのデータを観測しながら、任意の場所の海水を採水することができます。
おしょろ丸Ⅴ世のCTD採水システムは、最深6,000メートルまで降下できるケーブルを持ち、一度に144リットルを採水することが可能です。
2,000-3,000メートルまでケーブルを下ろすのも、船まで巻き上げるのにも時間がかかります。航海中は乗務員が24時間勤務となるため練習船で活動する時間は貴重なものです。そのため限られた時間内に海洋観測などのプログラムがぎっしり詰め込まれます。その中で時間と手間をかけ採水するという意味でも大変貴重なものなのです。
そういった点で、非常に深い水深から船舶で海洋深層水を採水して商品化できるのは、設備と技術力に加えて乗務員と乗船研究者の皆様のご協力があってこそであり、北大だけとも言えます。
商品を通じたメッセージを教えてください。
これまで附属練習船での教育研究をお伝えするチャンスがなかなかありませんでした。また、水産学は、海洋環境・物理・化学・生物・生命・工学・経済・食品といった様々な分野が、海というキーワードでつながる学問分野です。この「海洋深層水使用 あおさ味」のストーリーを通じて、多くの人にとって研究や附属練習船のこと、水産学について興味を持つきっかけになればいいなと思っています。
貴重な海洋深層水が使われている北大おかき あおさ味。このストーリーを知るとより大事に食べたくなりますね。
北大おかき「海洋深層水使用 あおさ味」は以下の場所で購入することができます。
北大札幌キャンパス
・北海道大学インフォメーションセンター「エルムの森」内オリジナルショップ
・北海道大学生活協同組合 生協会館店1階
北大函館キャンパス
・北海道大学生活協同組合 水産店
オンライン販売
・北海道大学オリジナルショップWebサイト
おしょろ丸Ⅴ世での実習、LASBOSについて紹介しているこちらの記事もご覧ください