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#145 展示を使って好奇心をオンラインにつなげ、深める試み

北海道大学附属図書館本館を一歩入ると、LASBOSと書かれたバナーと動画が目に入ります。近づいてみると、何やら写真入りの青いカードが置いてありました。LASBOSとは何か、そしてこのカードの正体は。その謎を解くべく山下俊介さん(水産科学研究院 バランスドオーシャン 特任助教)にお話をうかがいました。

(山下俊介さん)

 

LASBOSとはなんでしょうか

LASBOSは、Learning and Study by Balance de Ocean System の略称です。2020年10月に一般公開を始めた、海と生き物を学ぶオンライン教材のサイトです。北大で水産科学研究院や北方生物圏フィールド科学センターをはじめとした多くの教職員やスタッフの尽力により、今は200本ほどの動画と400以上のコースをインターネット上に公開しています。サイトの運営はバランスドオーシャン事業が担っています。バランスドオーシャン事業は2019年に始まった「海のトップサイエンティストの早期発掘と育成」を目指した教育プログラムです。

(附属図書館本館に入ると目の前に展示されています)

 

このカードはどういうものなのでしょうか

これはLASBOSカードです。LASBOSと動画について北大の学生さんをはじめ多くの方に興味をもってもらいたいと考えて制作しました。LASBOSカードには、北海道では身近なスルメイカやホッケ、マコンブなど海に住む動植物、そして、水産学部で行っている海洋調査の様子などが掲載されています。現在26種類あり、今後も増やしていく予定です。

(クリップフォルダの土台はウニガラ、水産学部のこだわりを感じます)

 

ちなみに、25番のカードはなんですか?

これはダイダイオヨギヒモムシです。深海に浮遊するヒモムシの一種です。ちょっと気になりましたか? では、カードの裏にあるQRコードにスマホをかざして読み込んでみてください。LASBOSの教材にリンクしています。北大の練習船うしお丸による採取の様子から、柁原宏さん(理学研究院 准教授)による、新和名の提唱までに行った形態観察の手順を、一連の動画で見ることができます。

(新作の3種類のLASBOSカード、24番は海洋調査に使用するセジメントトラップ、26番は函館キャンパスにある水産学部図書館、それぞれQRコードを読み込んで関連する動画を見ることができます)

 

うわ、ダイダイオヨギヒモムシがニモみたいにピラピラ泳いでいます。動画だとよくわかります。うしお丸による海洋調査の様子や、科学者による観察・分析の様子も具体的に知ることができて、改めて北大の研究活動ってすごいなと思いました。

インターネットは進化してきて、「おすすめ」のリコメンドなど、自分の興味があることに関する情報を集めるには便利です。しかし、自分の好奇心がどこにあるのかを知ることにはWEBは向いていません。LASBOSカードは、カードを手にすることが海や水圏に関する「最初の出会い」となり、ここからさらなる探究の世界に踏み入れられるようになっています。カードをきっかけに総合入試で入学した北大の学生さんや、留学生の方、そして高校生や市民の方にも北大で行われている海や水圏の研究に関心を持ってもらえたらうれしいです。

 

このLASBOSカード、どこで手に入れることができるのでしょうか?

札幌キャンパスのLASBOSカードは、1年生がよく使う高等教育推進機構棟、附属図書館本館、北図書館、そして、北海道大学総合博物館2Fの水産学部展示室、環境科学院棟のホール・図書室に設置しています。それぞれの場所で、内容の異なる5種類ほどのカードが置いてあります。札幌キャンパスを散策しながら、全種類のカードを集めてみてはいかがでしょうか。函館では、研究棟、水産科学館、水産学部図書館などの函館キャンパス内はもちろん、函館ドックの海洋センターにも置かれています。

(北大総合博物館の2階には水産学部の展示室があります)

 

図書館だけではなくて北大総合博物館にもおいてあるんですね。

博物館は自分の好奇心との出会いの場所、とくに北大総合博物館は無料でいつでも何度でも入ることができます。散歩するように展示空間を歩きながら、自分の好奇心を発見をすることができる場所だと思っています。この4月から博物館では、カードだけでなく、標本などの展示物や展示パネルの近くにバランスドオーシャンのコンテンツにリンクされたQRコード入りのキャプションを配置しています。物理空間とオンライン空間をつなげることで、さらなる学びや探求が深まることを期待しています。

(北大総合博物館に展示されている北大の練習船の模型、さらに知りたい方はQRコードをチェック)

展示には、もともと意図されたストーリーがあります。展示全体のストーリーを組み替えるのは大変です。しかし、キャプションQRを利用すれば、ストーリーを阻害せずに、好奇心のスイッチの入り掛けた来館者を後押することができます。実際にQRコードを読み込んでいる来館者の方もいらっしゃいます。今の時期は、北大の新入生とそのご家族が多いようです。

(新しい展示、これはいったいなんだろう? 気になった方は是非総合博物館へ)

 

図書館、博物館、そしてバランスドオーシャンがそれぞれ協力しあっているように思いました。

MLA連携という言葉があります。Museum(博物館)、Library(図書館)、Archives(文書館)の頭文字をとったもので、三つの施設がそれぞれ協力することを指します。これらの施設に共通するのは、文化的情報を収集・保存し、それらを多くの人に利用してもらう点です。函館キャンパスには、北大総合博物館の分館にあたる水産科学館、そして水産学部図書館があります。バランスドオーシャンがデジタルアーカイブの役割を担うことで、函館でMLA連携ができるのではないかと構想しているところです。

 

バランスドオーシャンがアーカイブを担うのですね。

アーカイブの意味は様々です。一般的には、過去の記録を保存して未来に残すことだと思われています。私もこれまで、博物館員として、主に過去の学術資料・記録情報のアーカイブに携わっていました。そうみると、バランスドオーシャンが学術資料や教育教材を制作していることは、アーカイブとは少し違うようにみえるかもしれません。しかし、これらの教材が集約されデジタル資料として蓄積されていけば、例えば100年後、それらが重要な北海道大学の情報資源や情報資産になるでしょう。バランスドオーシャンは、まさに今・ここで未来のアーカイブを生み出し続けているのです。つまり、現在生み出されつつある教育研究情報の集約もまたアーカイブになりうると私は考えています。

(北大総合博物館、附属図書館、函館キャンパスの詳細は『北大キャンパスガイド』をチェック!)

 

バランスドオーシャンが今制作している動画が、100年後の北大の情報資源につながっていくというお話には、未来を見据えた北大の研究の展望が示されていると思いました。これから展開されるLASBOSの新作オンライン教材からは目が離せません。

Information

Update

2021.04.20

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Related Links

  • バランスドオーシャンのオンライン教材はLASBOS moodleから視聴できます
  • バランスドオーシャンについての過去記事|クローズアップ #124 北海道大学バランスドオーシャン事業の教育コンテンツ一般公開
  • 記事中に登場した柁原宏さんの過去記事|クローズアップ #111 形に魅せられて(1)~生き物は皆美しい。特にヒモムシは~
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