暖かい講義室や研究室ではときどき、越冬中のカメムシに遭遇しますよね。筆者の居室でもなんとなく共同生活をしているのですが、そういえば君の名は・・・と昆虫図鑑を開くと、「スコットカメムシ」という名前がついていました。不快害虫として界隈では名の通ったカメムシのようで、札幌市webサイトの「住まいの衛生」のページにも「不快な虫」として紹介されています。
むかーしむかし、筆者が大学に入って一番最初の授業で「昆虫は世間では大きくみっつに分けられる。益虫・害虫・ただのムシ だ。実に世知辛い!」と教えてくれた環境昆虫学者がいました。近頃はさらに世知辛く、外来生物というくくりもあるんだよなぁと思って調べてみると、幸い(?)国立環境研究所の侵入生物データベースには載っていませんでした。それっぽいネーミングなのは、イギリスのカメムシ研究者 John Scott氏にちなんで1886年に「Menida scotti」という学名がつけられ、それが標準和名にも反映されたためです。
くさい分泌物は水溶性と不溶性の液体の混合物なので、手や布にニオイがついてしまった場合はアルコールやクレンジングオイルなどで油分を落としてから石鹸(界面活性剤)で2度洗いすると落ちるそうです。皮膚に触れたまま放置すると炎症を起こすこともあるようなので、早めに落とした方が良いですね。
ちなみにこのスコットカメムシ、後の分類学的検討により学名が「Menida disjecta」に変わりました。Scottの名は消え去ってしまったわけですが、それでも標準和名はスコットカメムシのままです。このへんの動物命名のルールは結構おもしろいのですが、それはまた、別のおはなし。