「LAST SNOW-はじまりの雪」をテーマに、1月20日から開催中の札幌国際芸術祭(以下SIAF) 2024、みなさん楽しんでいらっしゃいますか?現在を軸として、100年前をふりかえり、100年後の未来を想像する会場構成になっているSIAFは、札幌をフィールドにアートを通して未来を想像する場となっています。今回はコロナでオンライン開催のみとなった2020年を経て、6年ぶりの対面開催になり、さらに初の冬開催です。CoSTEPで鑑賞ツアーを開催した時の写真とともに、SIAFを紹介していきます。
「とある未来の雪のまち」での展示。エネスの《AIRSHIP ORCHESTRA》
未来を想像するツールとしてのアートをかかげ、未来劇場ではディレクターからの問いに作品で答えたり、未来のあるシーンを可視化したり、作品鑑賞や参加型作品を通して観客と積極的にコミュニケーションをとる仕掛けがなされています。特に、現代アートにおいてサイエンスは必須とも言えるほど、科学の研究は表現の題材になる他に、インスピレーションの根源となり、作品のメッセージを強くするものとして関わっています。
チェ・ウラムさんの《Red》を囲んで。未来劇場では、以前四季の劇場として使われていた場所を丸ごと使って展示されていて、観客が舞台にも客席にも立つことを通して、一人一人主人公として想像/鑑賞できるような仕掛けが印象に残りました。
今回のSIAFでは、そのアートとサイエンスのつながりに気付かされる作品が多くあります。未来劇場では、来場者の情報に反応し、来場者の情報を可視化・蓄積するエイミ・カールさんの《存在の谷からのエコー》、現在の地球をAIで予測した様子を可視化するテガ・ブレイン+ジュリアン・オリヴァー+ベングト・ショーレンの《Asunder》、イタリアの氷河を守るために覆った大型の布でその氷河を再現したジョヴァンニ・ベッティ+カタリーナ・フレックの《Invisible Mountain》、花や花びらにはパンデミックの際に医療従事者がまとっていた素材を用いて生と死を表現したチェ・ウラムさんの《素敵に枯れていきたい、君と。》や《Red》まで、今の社会問題を軸に未来の暮らしを想像する様々な作品が並びました。
ジョヴァンニ・ベッティ+カタリーナ・フレックの《Invisible Mountain》を鑑賞中の様子。
自然に観客が氷河の作品を見るようになる空間構成に気づき、考え深くなりました。
また、中谷宇吉郎の研究や言葉が展示され、北海道大学低温科学研究所の先端研究をアーティストのワビサビが紹介するセクションもありました。
ビジターセンターの機能も担っている札幌文化芸術交流センター SCARTSの2階では、「都市と自然をめぐるラボラトリー」というタイトルでSIAFラボとパノラマティクスのコラボ展示があります。札幌の冬に必ず現れる雪山を一つのデータログとしてみたて、夏に雪の彫刻を同じ場所に再現した実践や、札幌の除雪車にGPSをつけその移動を可視化した作品など、雪国の都市と自然の関わりについて考えられる空間となっています。
「都市と自然をめぐるラボラトリー」会場。排雪や除雪にまつわるリサーチが、札幌の情報と地球上の他の雪深い都市とのつながりをもとに繰り広げられています。
今回のSIAFは、開催期間中様々な場所でイベントが開催されています。今週末の2月17〜18日には、北海道大学 工学部のVRシアターにて、2日限定の「SIAFラボのIEIE Reflected: Phase 4」が開催されます。《Island Eye Island Ear》(IEIE)は、50年前、孤島を丸ごと楽器化するという壮大なスケールのコンサート計画を今に合わせて再現するプロジェクトです。今回のVRシアターでは、2023年11月に江差町・鴎島で実施したテストランでの映像を体験できる場を設けます。また、2月17日には、同じ取り組みの副産物として、IEIE実現のために奔走した北海道の先々で出会った人々が登場するグランドホテル形式の特別シンポジウム「Virtual Grand Hotel」を開催します。
そのほか、芸術の森美術館、モエレ沼公園、北海道立近代美術館など、他の会場での展示もその場所ならではの表現が楽しめます。雪景色の広がる札幌。ぜひSIAFに足を運び、アートを通して、このまちにおける未来と雪について、考えてみませんか。
VR exhibition:Virtual IEIE(去年鴎島で)
会期:2024年2月17日 (土)、18日(日) 各日 10:00〜17:00
会場:北海道大学 工学研究院 VRシアター (札幌市北区北13条西8丁目 google map)
料金:入場無料
Symposium:Virtual Grand Hotel
日時:2024年2月17日 (土) 15:00~18:00
※運営上の都合により時間が変更になりました。ご了承ください。
会場:北海道大学オープンイノベーションハブ エンレイソウ
(札幌市北区北13条西8丁目 google map)
料金:参加無料