北大祭事務局による対談企画が、2024年北大祭最終日(6月9日)に北海道大学クラーク会館で開催されました。内容は、東京大学先端科学技術研究センター准教授で軍事専門家の小泉悠氏と北海道テレビ制作の人気バラエティ番組「水曜どうでしょう」チーフディレクター藤村忠寿氏の対談です。
対談は「メディアの役割とその影響について」というテーマにそって進行しました。軍事とバラエティという異色の組み合わせによってうまれる対談のなかには、価値観を転換するような、ハッとする内容もふくまれていました。本記事では、その対談の一部をお届けします。
バラエティと政治の関わり
藤村氏がバラエティ番組を制作する理由として、世界平和があるそうです。人が笑うことをなくしたら世の中が悪くなるとの考えだそうです。また、テレビ番組「水曜どうでしょう」のおもしろさの一つは、出演メンバーの間で小さなイザコザがおきることだそうです。小さな不満をメンバー同士でストレートに吐露していることが番組をおもしろくしており、その場の平和につながっているようです。不満をため込んでしまうと、争いの火種を外部にもっていってしまいます。
これに対して小泉氏は、それは国際紛争解決に通じるものがあるのではないか、と話を続けました。争いの決着をつけずにナーナーで過ごす紛争が、わりとあるそうです。グラデーションがかかった境界をつくることによって衝突を回避するのです。小泉氏は、かっこうが悪くみえるかもしれないけれども、ナーナーにする力は一種の突破力と同じなのではないか、と話しました。
筆者はこのお話を聞いて、ナーナー力をいまいちど見直してもよいのかもしれないと思いました。ただし、ナーナー力が効果を発揮するのは、ナーナーにできる範囲を誰かが超えたときの裁きであったり、調整作用のある環境に限られるようです。
中央と地方における違い
小泉氏は中央と地方という観点でみた、日本メディアの構図について、ロシアと比較して話しました。ロシアでは中央の情報をテレビやラジオで地方に送るといった、中央集権的な傾向があるそうです。たいして日本では、東北や北海道といった地方で、独自メディアがおもしろいコンテンツを制作しながら影響力をもっていることがあるようです。
これにたいして藤村氏は、昔から日本人の多くは東京を知りたいという願望をもっているのではないか、と話を続けました。たしかに魅力的なコンテンツは、作るのにお金がかかるため首都に集まりがちになります。しかしそのぶん、地方でおもしろいコンテンツを制作した方が目立つという実感が藤村氏には、あるそうです。
小泉氏によると他国と比べて日本は、情報やインフラが国内で非常に均質化している国だそうです。そのことを考えると、東京と地方の格差はそれほど存在せず、実は私たち自身が格差意識を作っているのではないでしょうか? 私たちはもっと地方から発信する意識をもってもよいのかもしれないと筆者は思いました。
以上、いかがだったでしょうか?
この対談は、Youtubeリンク(https://youtu.be/tzQfZTSslxo)からも見ることができます。
小泉氏、藤村氏、そして北大祭事務局の方々、企画を実現していただいたすべての皆様に感謝申しあげます。