イチョウ並木のフシギ
北大祭で北キャンパスへ赴き、低温科学研究所(低温研)での魅力的な展示の数々を楽しんでいた取材班。氷の結晶の不思議を体験した後に訪れたのは、なにやらカラフルなブースでした。
ここでは、「葉っぱの緑色」のもとになっている物質、「クロロフィル」にまつわる展示や実験を楽しむことができました。

比べてみると、シアノバクテリア・紅藻・緑藻・珪藻・陸上植物それぞれが個性的な色をしていることがわかります。進化の過程で、クロロフィルの色もさまざまに変化してきたとのこと。
クロロフィルの種類や進化の説明を聞いた後、実験コーナーでは「秋のイチョウ並木のカラーチェンジを再現できる実験」を楽しませていただきました!

まず、実際に葉っぱをカットしてチューブに入れ、そこに破砕用のビーズとエタノールを入れます。

そして、装置で高速シェイクをして葉っぱを粉々にして、内部の色素成分を抽出します。

緑色の液体に塩酸を加えると…色が黄色に変化しました!

(写真だとやや見分けにくいですが……処理前(右)の黄緑色に対して、処理後(左)はやや暗めの黄色に変化しました!)
この色の変化の原理は、以下の化学式で表せるそうです。

酸性の溶液を加えることで、緑の色素からマグネシウムイオンが追い出され、黄色に変色するそうです。
まさか北大祭で、秋のイチョウ並木の化学反応を再現できるとは!興味深い体験でした。
すると今度は、試験管を持ったまま暗室に案内され……

「光を当てて、蛍光を観察してみてください」と言われ、試験管をよく見てみると……
ぼんやりと赤く光っていました!

少し難しい話ですが、この現象を理解するためには以下のポイントが重要です。
①私たちが見ている色は、目に入ってくる光の波長成分で決まる
②目に入る光は、物質が反射した光である
③クロロフィルは、私たちには緑に見えている
ということを踏まえると、クロロフィルは実は緑以外の波長の光を吸収しているため他の緑以外の色には見えないということになります。
実は今回の実験では、緑色の物質であるクロロフィルが青い光を吸収して、吸収したエネルギーの一部が赤い蛍光に利用される、という現象を観察していたそうです。緑以外の光をたくさん吸収できることが、植物が太陽光のエネルギーを有効利用できる秘密なのだそうです。
この一連の実験では、イチョウ並木や色素の種類という身近な話題をテーマに、色にまつわる化学反応を学ぶことができました。
「低温科学研究所」では、低温にまつわる幻想的な風景やダイヤモンドダストを楽しみ、宇宙で氷を育てる話にワクワクしました。
また、体験実験を通じて身近な現象を自分で再現し、「色」にまつわる化学についても学ぶことができ、充実した時間を過ごすことができました。
来年の北大祭では、ぜひみなさん足を運んでみてください。
注・参考文献
1.北海道大学低温科学研究所 相転移ダイナミクス分野. https://www2.lowtem.hokudai.ac.jp/ptdice/index.html (最終閲覧日:2025年6月29日)
2.今井泉. “科学教育における教材としての 「光と色と色覚」.” 化学と教育 70.4 (2022): 196-199.