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北大から日本企業へ つながる外国人博士のキャリア支援

北大には外国人博士が日本で活躍することを支援するプログラムがあります。

北海道大学 国際人材育成プログラム(I-HoP)が主催する「CAREER LINK MEETUP 2025」が2025年11月28日(金)に北海道大学で開催されました。
このイベントは、日本で研究を行う外国人博士と英語での国際人材の採用を検討している日本企業が出会う場として設計されています。今回で7回目の開催となりますが、コロナ禍の影響で、対面形式としては2019年以来の開催となりました。

今年は北海道大学のクラーク会館を会場に10社の日本企業と35名の外国人博士(北大外の参加者を含む)が参加しました。
ぜひ皆さんも北大の若手研究者を応援していただければ幸いです。

*本記事では、「CAREER LINK MEETUP 2025」の趣旨「外国人博士人材と企業との英語による交流の場」に合わせ、北大で研究を行う海外出身の博士後期課程の学生と博士研究員を、便宜的に「外国人博士」という用語で表記します。(博士研究員:博士号を取得後、主に大学や研究機関で研究に従事する任期付きの研究員)

 

イベントの冒頭では大学院教育推進機構 副機構長の藤田修さんから開会の挨拶がありました。

開会の挨拶をする藤田修さん

イベントの趣旨や外国人博士、ご参加の企業の皆さまへのメッセージに加え、「企業と外国人博士人材が直接対話するこの機会が、皆さまにとって価値ある出会いとなることを心より願っております。」と語られました。

 

「CAREER LINK MEETUP 2025」は大きく4部構成となっています。

1.企業からのプレゼンテーション発表
2.外国人博士によるポスター発表
3.企業別ブースでの意見交換
4.懇親会

特に、「外国人博士によるポスター発表」では企業の方々を前に、外国人博士がポスターを使って研究と自分自身のスキルや日本の産業界で働く意欲をアピールし、直接意見を交換する時間となっています。

ポスター発表中の参加者に短くお話を伺いました。
(英語での回答を取材班が要約し、日本語に翻訳しています。)

「外国人博士によるポスター発表」の展示会場の様子
作成したポスターの前で企業の方々に説明をする外国人博士の様子

 

どうしてこのイベントに参加したの?

留学生にとって日本の企業に就職したり、日本の就職採用のプロセスに慣れる良い機会だと思って参加しました。(北大総合化学院・大学院生)

イベントを通して、どんなことを感じた?

まだ博士研究員として研究を続けるのか、企業に就職しようか、将来について考えているところです。たくさんの興味深い企業を見て、そのうえで自分の進路を決めていきたいと思っています。(北大理学院・大学院生)

企業の方と直接話せる今回の機会について、どう思う?

素晴らしい機会だと思います。留学生と日本企業が直接コミュニケーションをとれる今回の場は、将来に向けて互いの共通の興味・関心を確かめられる、とても良い機会になりました。(北大工学院・博士研究員)

 

進路をこれから本格的に考える方から、すでに興味のある研究分野・企業を見つけている方まで、それぞれの立場で新しい発見やつながりを見つけているようでした。
皆さん緊張していたのか、インタビュアーの私が企業の参加者ではなく、北大の教員だとわかると、笑顔で研究のことやイベントの感想を語ってくれました。インタビュー終わりには「次はこの企業の方と話したいです」と次の企業へのアピールに燃える参加者もたくさんいました。

 

取材中、真摯に研究を説明してくれた留学生がいました。植物のコミュニケーションに関する研究をしている北大の博士課程3年生のバイさん(インド出身)です。

バイさんによると植物は揮発性有機化合物(VOCs)と総称される物質を放出したり、周囲の植物が放出したVOCsを受け取って、高温・低温や紫外線などの刺激(ストレス)に強くなることがあるそうです。さらにVOCsによって植物を強くし、月の土を再現した土で育てる研究にも取り組んでいると語ってくれました。植物と宇宙の研究に興味があって、将来はそれらを組み合わせた研究にしたい、北海道の農業や宇宙や月の研究分野の方でも貢献していけたらうれしい、と語ってくれました。

インタビューに来た私にもとても熱心に研究の話をしてくれました。「すごく説明が上手だから企業にもアプローチできますね」と話すと「全然、謙遜します」と日本語で返してくれました。

Poster Presentation Awardを受賞した3名です。おめでとうございます。インタビューしたバイさんがBest Poster Presentation Awardを受賞しました

ポスター発表が終わると、次は「企業別ブースでの意見交換」にうつります。今度は外国人博士の皆さんが興味のある企業のもとに話を聞きに行きます。

各企業ブースで活発な意見交換がされています

そんな中、参加企業の方々の中でもとりわけ笑顔が素敵なデイビッドさんに話を聞きました。
(英語での回答を取材班が要約し、日本語に翻訳しています。)

イベントに参加した外国人博士と意見交換をするデイビッドさん
今日、北大の学生に会って、どんなことを思いましたか?

私はこのイベントの初回2019年の参加者でした。当時、日本語はまったく話せず、また専門としていた生物学の分野で企業と出会える機会は限られていたので、このイベントには本当に感謝しています。このイベントがあったおかげで、今の企業を知り、気づけば6年間働いています。

不可能ではないんです。研究分野にかかわらず、今は日本語が話せなくても、日本語を学ぶ意欲や企業の環境に慣れていこうとする姿勢があれば、日本で就職することはできます。私は今日の参加者全員にこのことを伝えたいです。なにしろ私自身がまさにその実例なんですから。

かつては北大生としてこのイベントに参加していたデイビッドさん。北大生への強い想いを語ってくださいました。外国人博士が日本でキャリアを考えるとき、就職活動に限らず、日本で暮らし続けることへの不安や葛藤もあるかもしれません。だからこそ、デイビッドさんのように北大を卒業して日本の企業で活躍する先輩の姿は大変心強いのではないでしょうか。

北大は全国の大学に先駆け、外国人博士と日本企業の交流の場を作ってきました。北大をはじめ日本で学ぶ外国人博士のキャリア形成を支援していくことは、大学の重要な使命の一つです。そして、次の世代へ学生の間でつなげていく支援のバトンもまた大切な北大の財産だと言えます。このイベントの初回参加者だったデイビッドさんからのバトン、今日の参加者の中からまた次世代につないでいってくれることを願います。

企業の方に説明するときの熱心なまなざし、インタビューで見せてくれた笑顔そのままに、参加した外国人博士の皆さんが日本の企業で活躍する日を、そして今度は日本企業で働く北大の出身者としてこの場に戻ってきてくれることを期待し、『いいね!Hokudai』取材班からもエールを送ります。

 

 

 

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2025.12.22

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