今回は、北キャンパスにある北海道大学URAステーションで、URA(University Research Administrator)として働く江端新吾さんを訪ねました。
最近大学関係者の間でURAという言葉をよく耳にするようになってきましたが、そもそもURAとはどのような職業なのでしょうか。一口にURAといっても各大学、各組織によって役割はずいぶん異なるとのことですが、北海道大学のURAはどのような特徴を持っているのでしょうか。
(江端さん。昨年事務局長をされたURAシンポジウムの、北大URA専用のTシャツを手に)
URAとはどのような職業なのでしょうか?
各大学、各組織によってその役割はずいぶん異なるのですが、それらを全部合わせると、研究戦略を立てるための情報収集、省庁やファンディングエージェンシーとのパイプづくり、研究者同士のコーディネーション、申請書の設計、そして研究遂行中の直接的な研究支援、マネジメントや広報、産学連携支援、大学のグローバル化に関わる支援にまで渡る大変広い範囲の仕事です。
その中でも北大のURAは、非常に特徴的な役割を与えられています。つまり、競争的資金を獲得するまでのプロセス(=プレアワード)に特化しているのです。
実際はどのように業務を行っているのでしょうか?
「これまでに外部資金を獲得している」「分野横断型の研究プロジェクトを立ち上げている」「部局からの推薦がある」といった先生方を中心にメンバー構成を検討し、その中でその都度の競争的資金の趣旨に合致した研究チームを提案します。「北大の強みを活かしたものである」という点も重要です。
北大のURAステーションでは、ステーション長のもとに12名のスタッフが働いています。 スタッフはそれぞれ文系から理系に渡る多種多様な研究分野をバックグラウンドに持っているので、それに関連する先生方との繋がりからメンバー候補になる先生を探すこともあれば、研究者データベースからこれは、と思う先生を見つけてインタビューに行ったりすることもあります。そういった先生方に私たちの考えをご提案してもし幸いにも興味を持っていただければ、引き続き次の段階をご一緒しましょう、ということになります。
(URAステーションで働くスタッフのみなさん)
もちろん将来を睨んで、それ以外の多様な分野の研究者の方々との関係を時間をかけて新しく構築していく、ということも大変重要です。
一方、研究者の方々の側から、URAが担当している大型プロジェクトに関心があるので話を聞きたい、といったご希望がある場合は、まずはご連絡いただいてその旨お伝えいただければと思います。そうすればURAのスタッフがお話を伺いに参ります。
ちょっと時計の針をもどしてお話を伺いましょう。元々研究者だった江端さんは、どうしてURAに転身されたのでしょうか?
以前は、宇宙科学の分野で隕石の研究をしていました。太陽系を作る基になった粒子を分析して、太陽系がどのような星を起源として、どのように進化してきたかを検証するためです。こういった粒子から我々の銀河系の履歴を知ることができます。
非常に小さな粒子なので最先端の装置でも分析が困難なのですが、ビッグバンの「なごり」に関する情報ももしかしたら得ることができるかなと信じて研究を進めていました。最終的には、物質科学を切り口に、太陽系、そして宇宙がどのように形成されたかを解明したいと考えていました。
こういった研究をするために、共同で当時世界最高性能の分析機器の開発に成功しました。
(研究者時代に使った様々な分野の専門書を、愛着たっぷりに説明していただきました)
URAへの転職は、確かに大きなキャリアチェンジでした。実は研究者時代から、研究を行う上で常に関心があったのはマネジメントの部分でした。当時我々の研究グループが獲得していた外部資金が毎年1億円程度。私は研究をしながら、こういった予算の執行などのコーディネート業務を行っていました。
また、私はコミュニケーションが好きだったので、私のやりたいことは、もっと広い世界に出て様々な研究者とコミュニケーションしながら、私が開発に携わった分析機器などを使ってもらう研究活動を広げていくということだ、と感じるようになってきたのです。
一方、宇宙の起源を探究することは学術的には大変価値がありますし、個人的にも非常に興味を惹かれるものですが、この社会にとってはこれから1年後、10年後のことの方が重要ではないか、私はもっと直接世の中のため、北大のために目に見える形で具体的に役に立つことをしたい、と思うようになりました。
(これまでのキャリアを振り返っていただきました)