およそ一年前に耐震用の改修工事が終わった札幌農学校第2農場の施設、通称「モデルバーン」は、工事後初めての冬を無事に乗り越え、まもなく春を迎えようとしています。
1876年に完成した当施設は北海道の厳しい冬を凌ぐための工夫がなされています。その一つが切妻式の屋根です。切妻式は急な傾斜がついた山形の屋根で、シンプルな2面構成となっています。写真を見ると、地面の雪の量に比べ、屋根の積雪量が少ないのが分かりますが、これは雪がある程度積もると、その重みによって自然と滑り落ちていくからです。実際、雪の多い日に、第2農場を散策していると、時折さらさらと屋根から雪が滑っていく様子を目撃することができます。
第2農場の建築物はクラーク博士がマサチューセッツ農科大学の第3代学長を務めていた際に、建設したバーン(家畜房)を参考に造られています。北海道大学大学文書館年報に掲載された「マサチューセッツ農科大学のモデルバーン(1869年建築)について」の写真1~3を見ると、角度のある2面構成の屋根になっているのが分かります。
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/59209
札幌市は北緯43度、マサチューセッツ農科大学(現在のマサチューセッツ大学アマースト校)があったアマーストは北緯42度に位置し、それぞれ冬季期間中は厳しい寒さとなります。札幌農学校の教頭に迎えられたクラーク博士は、冬のシーズンを通して、多くの積雪に耐える構造になっているマサチューセッツ農科大学のバーンをベースにし、同じく積雪量の多い札幌の地にて家畜房等の施設を建設し、北海道の農業教育の礎を築くことに成功しました。
春が近づくに連れ、徐々に気温が緩み、降雪が少なくなりつつあります。もしこの先、雪が降り積もる機会を見つけたら、ぜひモデルバーンへ足を運んでみてください。建物の屋根から雪がさらさらと滑り落ちる光景を目にすることができるかもしれません。