6月25日の土曜日、クラーク会館3階大集会室にて、北海道大学と総合地球環境学研究所による「環境月間・北大地球研合同セミナー」が開催されました。今回のテーマは「地域システムの中のバリューチェーン:その創発と駆動」です。
これまで衛生環境や生態環境の保全に関わる取り組みは、税金を投入して取り組むものでした。そのため、経済的余裕のない途上国や国内の地方において、主体的な取り組みが妨げられる要因となっていました。そこで、保全活動をバリューチェーン(価値連鎖)の仕組みの中に組み込むことで、新たな価値(収益)を生み出しながら保全が行われる、持続可能な地域システム創出のプロジェクトが、世界各国で取り組まれはじめています。
本セミナーでは、価値連鎖による環境保全の意義と効果について、国内外での研究・実践の事例紹介と参加者からの質疑応答を通じて、意見交換が行われました。
セミナーの冒頭では、船水尚行さん(工学研究院教授)が基調講演をしました。船水さんは、主にアフリカのブルキナファソをフィールドとして、上下水道の整備が難しい国や地域でも、現地の住民が暮らしの中で水環境を整え収入も得られる、「暮らしも回るトイレの仕組み」の研究に取り組まれています。
(船水尚行さんによる基調講演。テーマは、「衛生環境の向上とバリューチェーンへの注目」)
続いて、総合地球環境学研究所の4名が発表しました。発表では、世界の現状や課題の分析をもとに、あるべき姿を提案する理念的なお話、途上国や日本の地方の現場での具体的なプロジェクトのお話、多様な専門の研究者による新しい学祭統合ツールの開発のお話など、多様なアプローチによる取り組みが紹介されました。
(発表の1人目は、マックグリービー スティーブンさん(総合地球環境学研究所、准教授)。テーマは「何のため、誰のためのバリュー?:非成長時代におけるフードチェーンの価値の再定義に向けて」)
(2人目は、田中樹さん(総合地球環境学研究所、教授)。テーマは「暮らしと生態環境保全を両立させるバリューの発想-ベトナム中部の事例から-」)
(3人目は、遠藤愛子さん(総合地球環境学研究所、准教授)。テーマは「水・エネルギー・食料ネクサスとバリューチェーン:大分県別府の事例」)
(4人目は、石川智士さん(総合地球環境学研究所、教授)。テーマは「バリューチェーンを駆動させる地域力(エリアケイパビリティ)」)
発表について議論の口火を切る二人のコメンテーターのうちの一人は、山内太郎さん(保健科学院教授)。山内さんは、途上国の農漁村、都市、伝統社会でフィールドワークを通じた調査研究に取り組まれています。もう一人のコメンテーターは、農学部出身、河合塾教育イノベーション本部の山本尚毅さん。山本さんは、前職で世界の貧困や社会課題へアプローチするソーシャルデザインの活動に携わっておられました。
(コメンテーターのお二人。左から山内太郎さん、山本尚毅さん。)
質疑の時間には、「独自の資源は、全ての地域に存在しているのか?」「政治的に難しい課題はあるのか?どのように関わっていくつもりか?」など、活発に質問が投げかけられました。
この北大地球研合同セミナー、次回は10月28日(金)に、「人」をテーマにしての開催が予定されています。
—-船水さんを紹介しているこちらの記事もご覧ください—-
【チェックイン】#81 水がまわれば暮らしもまわる~開発途上国の貧困をトイレから解決~(2015年2月23日)
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