「中小家畜生産研究施設」があるのは、札幌キャンパス内「第一農場」の北端、陸上競技場の南側です。「関係者以外、立ち入り禁止」の所に特別に入れていただき、技術専門職員の假屋洋人(かりや ひろと)さんに話をうかがいます。
どんな豚を、何頭くらい飼っているのですか
繁殖用の雄1頭と、繁殖用の雌3頭を基本にして、繁殖や飼育をしています。
これ(上の写真)は雌で、大ヨークシャー種とランドレース種を掛け合わせた一代雑種です。繁殖力に優れています。
宮崎駿のアニメ「千と千尋の神隠し」で、お父さんとお母さんがブタになりますね。あのブタはランドレース種で、耳がたれ、鼻がとんがっています。でもこの豚は、大ヨークシャー種の特徴がでて、耳がピンと立っています。
これ(上の写真)は、先の一代雑種にデュロック種という3つ目の種を掛け合わせた「三元豚」(さんげんとん)です。デュロック種の特徴がでて、耳がたれています。
豚は、生まれるとすぐ、犬歯と第3前歯、計8本を切ってしまいます。母親の乳首をかみ切ることがないようにするためです。
教育に、どう役立っているのですか
たとえば「家畜生産実習」という授業では、学生は子豚を与えられ、大きくなるまで飼育して、最後はハムやソーセージに加工するところまで体験します。
豚は、生まれたときの体重は1~2キロですが、半年後には110キロぐらいになり、食べられるようになります。成長が早いのです。
(エサを調合するときに使う攪拌機)
豚を育てるときのエサも、北大ならではのものです。農家はふつう、既成の配合飼料を使いますが、実習授業では、発育段階にあったエサを自分たちで調合して与えるのです。北大農場で生産したトウモロコシ、小麦、エン麦などの穀物に、大豆糟、ふすま、米ぬか、魚粉、ビタミン、ミネラル、塩などを、栄養を考えて加えます。
家畜には「日本飼養標準」というのがあって、ブタの標準は、北大の畜牧系の先生が作ったものが使われています。
(エサの調合割合を示した表)
思ったより、臭いがしないですね
昔は、臭くて口を開けて息をしていましたが、今は鼻で息ができるレベルになっています。床がすのこ状になっていて、糞尿は溝を通って、バイオガス・プラントへ行きます。その溝が空気の排気ダクトにもなっているのです。
豚が汚いというのは、昔の話で、ほんとうはきれい好きです。残飯を与えるだけで、ちゃんと世話をしないから汚かったのです。
分娩室や離乳室もありますね
予定日の2週間ほど前になると、母豚を分娩室に入れます。自然に分娩するのを待っているだけで、介助はしません。
初産の時は5~7頭しか産みませんが、二産以降は10~15頭、産むようになります。ちなみに、豚の乳首は14個あります。
分娩室などに限らず、どこも壁や床が真っ白でしょ。よく洗ったあと、消石灰を塗って消毒しているからです。消石灰が強いアルカリ性であることを利用して消毒するので、薬品で消毒するのとは違って、抵抗力を持った菌(耐性菌)が繁殖しません。かりに繁殖しても、少量の薬品ですぐに殺すことができます。