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#92 心臓手術後の合併症「心房細動」をカルニチンで予防 北海道大学病院の医師・新宮康栄さんのチャレンジ!

研究者の間で徐々に広まりつつある、研究資金の獲得手段「クラウドファンディング」。その代表格ともいえる、学術系クラウドファンディングサイト「アカデミスト」にて、北海道大学病院の医師・新宮康栄さん(北海道大学 大学院医学研究院 循環器・呼吸器外科 講師)が、心臓手術後の合併症のひとつである「心房細動」をカルニチンによって抑える手法の研究で、新しいチャレンジをはじめました。

心房細動が起きると、脳梗塞のリスクが高まります。日本人の死亡原因の第4位は脳の血管に関係するもので、その多くが脳梗塞といわれています。新宮さんの研究が進むことで、心房細動やその合併症である脳梗塞などを予防できる可能性があります。心房細動の原因究明につながる研究は世界的にも珍しく、本研究の成果は将来心臓の手術を受ける方々のリスクを低減することにつながります。

今回、いいね!Hokudaiでは新宮さんの挑戦を応援すべく、研究内容とその意義についてお話を伺ってきました。お読みいただいた上で、新宮さんの研究にご賛同いただけるようでしたら、ぜひ御寄付をお願いします。現在、当初の目標金額80万円を突破し、セカンドゴールとして100万円を設定しています。100万円を突破すると、サードゴールもありえるかもしれませんね。

寄付ページ:https://academist-cf.com/projects/65


 

- 本研究をはじめようと思い立った経緯を教えてください。

医師一年目から、心臓血管外科の手術にずっとたずさわってきました。最初は自分で手術をするわけではないので、手術後の管理が中心になります。術後の患者さんを診ていると、合併症に出くわすことが多く、中でも高い頻度で見られたのが心房細動でした。心房細動が起きると脈が早くなって血圧が下がるので、必ずなんらかの対処をしなくてはいけません。どのタイミングで起きるのか予測できませんし、患者さんのデメリットもあるため、非常に厄介な合併症といえます。若い頃からずっと対応している内に、いつかなんとかしたいと考えるようになりました。

心房細動に関する先行研究は少なからずありますが、対処療法の研究ばかりで、根本的な原因究明につながる研究はほとんどない状況です。市中の病院で医師としての研修を経て、北海道大学に戻ってきたところ、さまざまな研究機器を使える環境だったため、自分自身で心房細動の原因究明をしてみようと思うようになりました。それが研究のきっかけです。

- 心房細動は具体的にどのような症状を引き起こすのでしょうか。

脈拍が一定しない状態になります。脈が早くなると、動悸が起こります。一般的に人間の脈拍は1分間に60~70回といわれていますが、心房細動によって脈拍が130~140回/分になってくると、動悸を訴える方が多くなってきます。その他の症状として、心房が規則正しく収縮しなくなって、血流が淀み、その結果、血栓と呼ばれる血の塊が心臓の中にできやすくなります。それが脳に飛ぶと、脳梗塞を引き起こします。脳梗塞は脳の病気でなる以外に、心臓が原因のものも多いのです。心房細動が起きると、対処療法として、早くなった脈を穏やかにする効果のある薬を使うことが一般的です。戻らない場合は、麻酔をかけて眠っている状態で心臓に電気ショックをかけて、心房細動を抑えます。

- 本研究の目標はカルニチンで心房細動を抑える手法の確立です。具体的にカルニチンはどのような効果をもたらすのでしょうか。

心房細動の原因究明をしている段階で、脂肪酸代謝を改善する薬剤はないかと調べていたところ、カルニチンにいきつきました。なぜ脂肪酸代謝に目をつけたかというと、心房細動を起こした方と起こさなかった方の心筋の遺伝子発現を比べると、起こした方は脂肪酸代謝に関係する遺伝子発現が落ちていることがこれまでの研究で分かっていたからです。これらを踏まえると、カルニチンを摂取して脂肪酸代謝を促すことで、心房細動の予防ができる可能性が見えてくるのです。

カルニチンは私たち人間の身体の中で非常に大事な働きをしています。細胞の中でエネルギーを生み出すミトコンドリアに脂肪酸を届ける役割をするのがカルニチンです。心臓のエネルギーは脂肪酸で7割まかなわれていて、3割はブドウ糖になります。心臓はほとんど脂肪酸でエンジンを回しているといっても過言ではありません。

脂肪酸代謝のどこかに異常が起きると、心臓に脂肪が蓄積していきます。脂肪酸代謝がうまくいかないと、心臓はうまく動きませんし、不要なものが溜まり続けると、心臓を障害してきます。脂肪酸代謝をうまく回すことが正常な心臓にとっては重要なのです。それを助けているのがカルニチンです。

カルニチンは人間の身体の中で作ることができますが、わずかな量なので、外から摂取する必要があります。赤身のお肉などに多く含まれていますが、特に食事摂取の減少する高齢者や臓器の機能が衰えている方はカルニチン欠乏状態になることがあります。心臓手術を受けたばかりの弱った心臓にカルニチンが必要なのは、ごく自然なことだと思います。

- 寄付を考えている方々に向けた言葉をいただけますか。

心臓手術は全国で年間6万件も行われています。それに対する医療費は高額になります。少しでも合併症を減らすことができれば、医療費を減らすことにつながっていきます。今、心臓の病気にかかっていない人でもこれからなる可能性もあります。また、心臓手術をしなくても70歳以上になると、急激に心房細動の危険が高まるといわれています。将来を見据えて、心房細動の新しい予防法の研究をぜひ応援していただければ幸いです。

みなさま、どうぞ宜しくお願いします。

寄付ページ:https://academist-cf.com/projects/65

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2018.07.13

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