11月8日から9日の日程で、北海道大学とソウル大学のジョイントシンポジウムが開催されました。ソウル大学と北海道大学で毎年交互に開催されてきて、今年で21回の開催となりました。全体会及び歓迎レセプションのテーマは「学術図書館の挑戦と大学博物館/美術館の役割」でした。4つの基調講演を通して大学における図書館や博物館・美術館でおきていることを共有し、今後の可能性を探る場になりました。
北海道大学からは名和豊春総長と小林快次さん(北海道大学総合博物館 准教授)、重田勝介さん(北海道大学情報基盤センター 准教授/高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター 副センター長)、ソウル大学からはパク・チャヌク学長代理、チョン・ヨンモクさん(ソウル大学美術館 教授)とソ・イジョンさん(ソウル大学校図書館長 教授)が登壇されました。
名和総長はクリエイティビティーに軸をおいてこのテーマに取り組みたいと、パク総長代理は、北大の札幌農学校から続いた開拓精神にふれ、伝統的な学問のフレームから新たな知識を創造する大学を目指し、その繋がりに注目したい述べられました。
(基調講演中の小林さん。最近取り上げられたお気に入りの写真で講演を始めました。)
小林さんは「博物館は私たちに必要か」という問いから話し始めました。その問いに答えるため、北大総合博物館を紹介しつつ、専門である恐竜研究と博物館との繋がりを述べました。小林さんは大学の研究を発信する場として、大学博物館は特別な存在だといいます。北大総合博物館は400万点以上にのぼる標本や資料を所蔵しており、2016年のリニューアルを経て、数ある大学博物館の中で全国第2位の来館者数を誇ります。
1936年恐竜の研究が始まった場所として、北海道は大事な研究フィールドですが、その研究を国際的な交流を通して深めていく活動も進めているそうです。その中で出会ったソウル大の研究者や中国の研究者で「アジアブラザーズ」と呼ばれることもあるほど、その交流は深いとのことです。
(シンポジウム参加者に配られた総合博物館のグッズ。バッジの種類や付け方によって自分のものでカスタマイズできます。)
チョンさんは、総合大学であり、芸術専門教育機関のあるソウル大学ならではの特徴として、ソウル大学美術館について説明しました。1995年にソウル大学の博物館から分離された美術館は653点の所蔵品をもち、年に2万人にのぼる来館者があり、年に5~6回のオリジナル企画展を開催しています。
大学の研究機関でもある特徴を活かし、大使館をはじめ商業目的ではない展示が盛んに行われているそうです。また、街に根ざした教育施設としても解放されており、大学美術館のクリエイティブな活動が大学と社会をつなぐ場になると、チョンさんは語りました。
重田さんは、北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンターの活動を説明し、MOOCをはじめとする教材開発などのデジタルアーカイブについて紹介しました。そして、ネットを通して知の交流が広がっている今日において、組織間の協力の必要性を語りました。
ソさん(ソウル大学校図書館長 教授)はソウル大の図書館が持つビジョンとして4つ、(1)グローバルな視点、(2)学生のサポート、(3)コミュニティーに馴染む施設、(4)環境に優しい図書館をあげました。
グローバルな視点として、約300万点の蔵書の中で韓国語の本は47%で、他は外国語のものになることを紹介しました。学生のサポートの例として、手厚い相談窓口を設置したことを挙げました。コミュニティーに馴染む施設として、市民に開かれたブックコンサートや映画祭、ギャラリー展示を通して、多くの人々が知識を楽しめるようにしたことを紹介しました。最後に、環境に優しい図書館を目指して、太陽光発電でソウル大学図書館本館が使用するエネルギーの20%をまかなっていることにふれました。
名和総長やパク総長代理、各基調講演者との話で共通しているところは、「つながり」です。学生と学問をつなぐだけでなく、大学と大学、大学と街、海外の大学同士をつなぐことが大事だということを述べていました。さらに、過去・現在・未来へと知をつなぐ活動の大切さにもふれていました。