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#120 アイヌを識る(1)~赤屋根の洋館、旧マンロー邸の昔と今~

「アイヌ文化の歴史と今を知りたい。アイヌと研究者の関係を学びたい。」

取材に向かったのは、アイヌ文化発信の中心地の一つで、日高地方にある平取町二風谷。その中心部から少し離れ、小さな林の中へ続く道を進むと、赤い屋根の洋館が現れました。表札には「北海道大学文学部 二風谷研究室」と書かれています。なぜ二風谷に研究室があるのか。ここで何が行われているのか。取材を進める中で、アイヌ文化と研究者の接点の一面が見えてきました。

【神田いずみ・CoSTEP本科生/文学研究科修士2年】 

(木立に囲まれた中に建つ洋館。国の登録有形文化財でもある)
(入口の表札。落ち着いた色合いが建物の雰囲気とマッチしている)

新しさと古さの共存

その洋館は白い板張りの主屋と、コンクリート造りの小屋の二つの建物からなり、その間は廊下で繋がっています。一般的な一軒家ほどの大きさでありながら、その色合いと佇まいからは、歴史のある落ち着いた風格が感じられました。

中に入ってみると、そこには新しさと古さの入り混じった独特な空間が広がっていました。各部屋には新しい家具や備品が揃えられており、壁や床は近年の改修できれいになっています。一方、一部の手すりや階段はすり減り、建物の経てきた長い年月をうかがうことができます。一体、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか。 

(床は新しいが、階段部分は古く、すり減っている)
外国人研究者の住まいから北大の研究施設へ

「ここは、もともとアイヌ文化の研究者であるニール・ゴードン・マンロー氏の家でした。」
そう教えてくださったのは、二風谷アイヌ文化博物館職員の廣岡絵美さんです。1932年、それまで本州で医師として活動していたマンローは、アイヌ文化研究を志して二風谷へと移住しました。彼が二風谷を移住先として選んだ背景には、二風谷に多くのアイヌの人々が住んでいたこと、また風土が故郷スコットランドに似ていたことがあったといいます。移住から1年後の1933年には、彼の住居兼診療所が完成しました。それこそが現在「旧マンロー邸」と呼ばれるこの洋館です。彼はここで地元の人々に診察を行う傍ら、アイヌ文化の研究に携わりました。二風谷の人々との信頼関係を築きながら集められた民具や写真や映像、文書記録は、とても貴重なものとして現在もアイヌ文化の研究者に注目されています。

(マンローの肖像。彼は二風谷移住前から、日本の考古学やアイヌ文化に深い関心を寄せていた)〈写真提供:平取町立二風谷アイヌ文化博物館〉

マンローが二風谷で亡くなった後の1966年、建物は北大に寄贈されました。その後研究施設として活用するために改修が行われ、現在の姿になりました。旧マンロー邸の新しさと古さの入り混じった様子は、このような歴史を背景としていたのです。

地域と研究者をつなぐ洋館

こうした経緯から、旧マンロー邸は現在、二風谷の人々と関わりながら調査研究を進める北大の研究者の滞在先になっています。北大生が訪れることは多くありませんが、調査のために研究者がグループで利用することがあるそうです。

その一方で廣岡さんは、「今でも、旧マンロー邸は町の人にとって大切な場所です。」と説明してくださいました。そのことは、マンローを直接知る人々の手で始まった「マンロー先生を偲ぶ会」からもうかがうことができます。毎年6月に開かれるこの会には50名ほどが参加し、マンローの思い出を語り合い、彼を顕彰する石碑の前に赤い花を供えています。

(木の緑鮮やかな6月の二風谷で開かれる、マンロー先生を偲ぶ会)〈写真提供:平取町立二風谷アイヌ文化博物館〉

二風谷には、現在もアイヌの人々が多く暮らしています。その片隅に建てられた旧マンロー邸は、昔も今も、二風谷と研究者をつなぐ接点そのものだったのです。二風谷の人々とマンロー、そして彼の意思を継ぐように、地域の人々との信頼関係を大切にしてアイヌ文化の研究を続ける現代の研究者たち。そのすべてを見守ってきた洋館は、今日も静かに、林の中に佇んでいます。

今回から6回にわたって「アイヌを識る」をタイトルとした記事を連載します。アイヌと北大の関係には、様々な側面があります。私たち取材班はアイヌではなく、アイヌ文化の専門家でもありません。そのため取材は、手探りを繰り返しながら、アイヌの歴史や関係者の活動を見聞きし学んでいく形となりました。二風谷から始まる「アイヌを識る」旅に、どうぞお付き合いください。

《第2回に続く》

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2019.02.15

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