函館の名産といえば「イカ」。しかし、近年、イカの漁獲量は減少しています。このように、水産業は環境の変化に影響を受けやすい産業です。変わりゆく水産業、それに対応できるしなやかな水産学の在り方とは。今、水産学部で始まった挑戦について、都木靖彰さん(水産科学研究院 教授)に伺いました。
身に着ける知識から活かす知識へ
今、知識を植え付けるだけではなく、その使い方を教えてくださいという時代になっています。使い方を学ぶって、授業で教えられることではないんですよね。使う現場に入って、実際に物事を見るということが重要なんです。これこそが北大が掲げる「実学 practical learning」だと思います。
現在、そのような地域での学びの事例として、北海道の美深町でサマーコースをやっています。美深町は元々、チョウザメの陸上養殖で水産学部と連携研究を行ってきた地域です。その美深町の出資で、北大生の水産学部の学生を中心に1週間のサマーコースが開催されています。そこでは地域の方が地域の歴史、成り立ち、そして産業について紹介してくれます。そして、学生はそこで様々な経験をします。そして、このサマーコースの最終ゴールは、地域の方向けに学生から提案書を作成することです。例えばチョウザメの普及のためのイベントを提案したり、チョウザメの活用に関する住民アンケートを実施した結果など、様々な提案を学生たちは作成します。
その様子を見ていると、北大生、捨てたもんじゃないなって思います。教えないと、彼らきちんと学ぶんです!北大生にチャンスを与えると、現場から知識を自律的に学ぶことができると実感しています。
世界と学ぶ経験
学生を現場で育てるという考えは、北海道大学のLearning satelliteの仕組みを使い、海外の学生と共に学ぶというプログラムを実施したこともきっかけの一つとなりました。シンガポール国立大学(NUS)と連携したプログラムを実施しています。NUSの学生が函館キャンパスで水産学部の学生と共に1週間日本の食糧生産のバリューチェーンを学び、同じ学生が今度はシンガポールに行き、そこでシンガポールの事情を学び、2国間の違いを比較するという事業を実施しています。
これは非常に人気があるコースで、なおかつ学生同士が大学や文化の垣根を超えて、とても仲良くなります。こういう成功事例を経て、もっといろんな場面で育てていこうという発想になったのです。
地域から先端的な研究を
もちろん、現場との連携は教育だけではなく、今後の研究にとっても重要な観点になると思います。
(美深町での研究の一端を教えてくれました)
かつては、閉じた世界だけで研究することが許されていた大学ですが、現在は地域との連携は大学のミッションの一つです。しかし地域への貢献を単に貢献という枠組みだけで考えるのはもったいないと思います。地域との連携から新しいシーズが生まれて、さらにアカデミアで人材や研究が育っていくというルートを作っていく、そのような能力が大学の研究者には求められているんじゃないかと思っています。
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都木さんもお話するシンポジウムが開催されます。
ぜひ、お越しください。
地域が耕すサイエンス ~北のまちから始まる持続可能な未来への挑戦~
ゲスト:都木靖彰さん(水産科学研究院 教授)
宮久史さん(厚真町役場職員)
奈須憲一郎さん(下川町議員)
日時: 2019年3月9日(土)13:30~16:00(開場は13:00から)
場所: 北海道大学 工学部 フロンティア応用科学研究棟 鈴木章ホール
詳細は【こちら】