しょっぱいものを食べたときに、あわてて水をがぶ飲みしたことはありますか?過剰な塩分が害になるのは動物も植物も同じです。私たち動物はしょっぱいと思ったらすぐ水を飲むことができますが、植物にそれはできません。では、植物は塩に対して成すすべなくやられてしまうのでしょうか?そうではありません。植物は何もしていないように見えて、実は一つ一つの細胞が水分やミネラルの出入りを調節することで過剰な塩分による害から身を守っています。
私は、そのような調節のために植物細胞の中で何が行われているのか、細胞内の伝令役である酵素のユビキチンリガーゼと、細胞内の荷札であるSNAREタンパク質の相互作用に着目して解き明かそうとしています。
農業による土壌の劣化の一つに塩分の蓄積があります。土に塩分がたまると植物が育ちにくくなります。国連大学によれば、塩分の蓄積によって小麦、米、サトウキビ、綿などの重要な農産物の収穫量が40~60%も落ちるそうです。これから地球の人口はますます増える見通しで、必要な食糧を生産するには土地を最大限に活用しなければなりません。塩の蓄積した土地でも、沢山の作物を生産するには、塩害に強い作物や、植物の塩害に対抗する力を引き出す薬などを作ることが必要です。
将来、これらの開発において、植物がどうやって塩に耐えているのかという知識が必要になります。塩に耐える植物のシステムは、食糧危機を防ぐためのカギになるかもしれないのです。
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この動画は新井麻由(生命科学院 生命科学専攻生命システム科学コース 修士1年)さんが、大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーション2」の履修を通して制作したものです。
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形態機能学Ⅱa研究室