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#229 第二外国語、本当にやる意味ある? (2)~生徒のやる気をあげるエクセレントな授業~

フランス語教育を専門とする堀晋也先生。前編では、第二外国語を学ぶモチベーションに関する疑問点を、堀先生の研究成果や考え方を通して答えて頂きました。

この後編では、堀先生ご自身に焦点を当てて、これまでのご経歴や未来への展望について掘り下げていこうと思います。

【山内尊人・経済学部一年/山田こころ・総合文系一年/小野木和志・法学部一年/
榊原竹寅・総合理系一年/松崎亮磨・総合理系一年/地曵光湖・医学部(保健)一年】

 

フランス語の先生なのにフランス語が好きではなかった?!

学生時代、堀先生ご自身は第二外国語に対するモチベーションはありましたか?

実をいうと、フランス語に対するモチべーションは学生時代には持っていなかったんです。というかそもそも、第二外国語に限らず、全体的にモチベーションが低かった(笑)。ただ、1年生のときと3年生のときに担当してもらっていた先生が面白かったんです。先にも名前が出てきた大木先生です。先生のおかげで第二外国語(フランス語)の授業を受けるのは楽しかったですね。

どう楽しかったのでしょう?

3年生の時に受けた授業の進め方は、映画を流してセリフを訳していくというものでした。訳すこと自体はめんどくさいなって感じだったんですけど、先生の話と映画が面白かったのです。

だから、少し話が逸れてしまうんですけど、学生時代の経験から、授業ノートを見るだけでその人のモチベーションがわかるんですよね。だからと言って、モチベーションが低い学生を責めたりはしませんよ。単位が取れればいいじゃないですか。ただ、モチベーションが低すぎて本当に勉強しなくなると、単位すらも取れなくなってしまうので、そういう人には働きかけはします。

結局、私の目指す授業は、モチベーションの低い学生が、フランス語の文法がわからなくても、授業の中で話した豆知識とか紹介したコンテンツが記憶に残って、いつか「まぁ、面白かったな」と思ってくれたらいいのかな、と考えています。

前編に引き続きお話を伺った堀晋也先生

 

ご縁があって北大に

今まで授業してきた大学で、最も印象的だった大学はありますか?

それぞれの大学での思い出はもちろんありますが、ダントツで北大です。

私の授業は、仏検やDELFなどのフランス語の検定・資格試験を受ける学生や、博士号取得後にフランスの大学に留学する予定の大学院生が履修していることもあって、自分の今まで培ってきたことが多分に活かせるんです。

普段の授業ノートの質問でも唸らされるものとかが多いですよ。質問も鋭くて、たまに答えに悩む時があって、ネイティブのラドレー先生のところに聞きに行ったりします。学生たちがいろんな化学反応を見せてくれるので、授業をしていて面白いですね。

堀先生のご略歴。様々な大学名が並んでいます。
たくさんの大学で授業をしてきた中で、助教になるにあたって北大を選んだ理由は何ですか?

選んだんじゃなくて、本当にこれはご縁なんですよ。大学教員はJREC-INという大学教員向けの求人サイトで就職先を探すことが多いと思うのですが、「フランス語」って求人を検索しても少ないんですね。ほら、今探しても16件です。「英語」で検索したら桁が違うくらい出るんですが、フランス語の専門はそもそも選択肢が少ない。選ぶとかそういう問題じゃないんですね。

だから、いっぱい応募しました。もう何十件も出しました。で、面接にかかったことも数回ありましたけど、全然ダメで。そんななか、北大が採用してくれたわけです。まさか自分が北海道で仕事をするなんて想像もしてなかったですが、でもいま北大でとても充実している、って感じです。

非常勤講師から助教になって変化したことはありますか?

ちょっと最初笑いを取るために言いますけど、お給料ですね(笑)。

私の履歴、北大に来る直近の2021年を見てみてください。5つの大学で働いているんです。っていうことはどういうことか。月火水木金、全部違う大学に行くんですよ。片道1時間半から2時間くらいかけて。1番多いときで週18コマ持ってたんですけど、18コマかき集めても今の給料より安いですし、 私と同年代のサラリーマンの人と同じか、良くてちょっと上ぐらい、それぐらいの給料しか稼げなかったんです。だから、非常勤でフランス語の授業をたくさん教えるって、もう本当に大変な仕事です。

で、ちょっと真面目な話になると、助教になると、研究をしなきゃいけませんし、大学院生の研究指導もあります。もちろん授業だってありますし、その他にも学内のいろんな委員会の仕事、あとは社会に向けての仕事として公開講座もあります。ということで、仕事の質と内容が変わりました。

堀先生の研究室にあった現在のスケジュール。他大学での講演や公開講座の予定もあってお忙しそうです。

 

鬼か仏か、ベストエクセレントティーチャー

2023年に北大の「ベストエクセレントティーチャー」(学生からのアンケートの評価に応じて選ばれる賞)に選ばれていますが、選ばれたときはどう思いましたか?

当然、素直に嬉しかったです。過去の受賞者を見てみると、外国語はネイティブの方が多く受賞されていたので、ノンネイティブは難しいのかなって思っていたんです。それを一年目から受賞させていただいて。でも、これはクラスに恵まれたっていうのも大きいです。当時の学生の皆さんのやる気がすごくて、それに助けられました。

それから、外国語教育を看板に掲げている身として、これまでの研究で得られた知見の実践を評価してもらえたように感じてホッとしました。研究成果という面でも良いアピールにつながっていたら嬉しいなと思います。

ベストエクセレントティーチャーの受賞者一覧を見て思ったのですが、学生側はこれを履修登録する際の参考として活かすこともできそうですね。

そうですね。でもやっぱり、履修登録といえばあれがあるじゃないですか。悪名高き(?)「鬼仏表」(講義の単位の取りやすさを勝手に学生が評価した一覧)。これに「堀」って入れると、私は北大に来てまだ二年ちょっとなのにたくさん出てくるんですよ。で、「ど仏」だけじゃなくて「ど鬼」もあります(笑)。

私は知識や文法をそこまで無理矢理に詰め込まないスタンスですし、課題も出さないので、なぜ鬼って言われることもあるか、なんですが、まぁ、授業によっては鬼にならざるを得ないときもあるんですね。それは、統一試験が絡むときです。

昔は統一試験って、フランス語の場合は救済措置みたいな感じにしていたらしいんです。要するに、平均点が7割後半とか8割とかそれぐらいになるような。でも「それはまずい」と思っていて。だけど、平均点を下げようとして難しい単語を増やすとか、教科書の重箱の隅をつつくような問題を出すとか、そんなテストはまずいですよね。一夜漬けでは対応できない、ちゃんとやってきた人がちゃんととれるような、そういうテストを作らなきゃいけないんです。だからそこはドライにならないといけない。そうなると「ど鬼」と呼ばれます(笑)。

ベストエクセレントティーチャーの表彰楯

 

教室絶滅の危機?! 堀先生が実践する新時代の授業

今後の外国語学習はどのようになっていくと考えていますか?

「教室の意味」が、ますます問われてくると思います。というのも、勉強するだけなら、もう教室に来なくてもいい時代です。例えば、Glexa(前編でも触れた北大で利用しているeラーニングツール)に教材をあげておいて「これやっといてね」と伝えれば、知識を身に付けるだけならできてしまう。それこそ、今ならChatGPT にお伺いをたてればいいのかもしれません。

そんななかでも教室に来させたかったら、「3回休んだらもうアウト」とか条件を設ければいいんですが、私は「欠席については◯回休んだら不可」といった制約は設けていません。教室に来た人にはプラスアルファを提供しようと努めていますが、来なくても知識の習得はできるようにしています。そういったなかで、教室の意味をどう作るかをいつも考えています。

今の授業では、教室の意味を具体的にどう設計していらっしゃるのでしょうか?

教室は「きっかけづくりの場」ですね。私の話でも、実際に発音することでも、コンテンツを見ることでも、なんでも良いのですが、「家でもちょっとフランス語やってみようかな」って思ってもらえるようにする。だから、教室に来てもらってこちらから一方的に何かを教えるというスタンスではないです。授業できっかけを作り、教室外で勉強できるようにコンテンツは揃えておく。質問があったらちゃんと答える。そういう時代なんじゃないかと思いながら、授業を作っています。

堀先生とお話を聞く私たち

取材を終えて

第二外国語の学習の意義を、第二外国語を教える立場の人に聞いてみるという、今回のインタビュー。堀先生の興味深いお話から、合理性や実用性から少し離れたところにあるその答えを、初めて感じることができました。

取材を快諾してくださった堀先生、ご協力ありがとうございました。私たちの慣れないインタビューも、先生の人柄のおかげで、楽しい雰囲気で行うことができました。この記事に書ききれないほどたくさんの学びになる話も聞けて、とても実りある時間でした。先生の「身の上話」も大変面白く、授業にかける情熱やユーモアをたっぷりと感じた楽しいインタビューでした!

《前編はこちら》

この記事は、山内尊人さん(経済学部一年)、山田こころさん(総合文系一年)/小野木和志さん(法学部一年)、榊原竹寅さん(総合理系一年)、松崎亮磨さん(総合理系一年)、地曵光湖さん(医学部(保健)一年)が、一般教育演習「北海道大学の“今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

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2024.09.27

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